当初、万里の長城でバイクチェイスをする予定だったボンド
四代目ジェームズ・ボンド=ティモシー・ダルトンの最後の作品となる本作の問題点は、ボンド自身には全くなく以下の6点にあったと言えます。
- 舞台は、仮想の国=ボンドの世界大紀行の楽しみの喪失。
- 諜報活動ではなく、復讐劇。
- 敵がただの麻薬ディーラーというスケールの小ささ。
- ボンドカー及び冴える秘密兵器はなし(Qが秘密兵器?)。
- ボンドスーツのダサさ。
- 気の利いた台詞がほとんど存在せず、ストーリーも雑すぎる脚本。
一番の致命傷は、『007 死ぬのは奴らだ』と同じく敵の存在がただの麻薬組織だったところにあります。これだと青少年はまったくときめきません。ボンドムービーは、(大人だけでなく)青少年が見て、憧れる設定じゃないといけないのです。
リアルにボロボロになるよりも、アクションの後に、さっとネクタイを直すくらいの方が良いのです。そして、何よりも、ボンドの敵は、世界を恐怖に陥れるトンデモナイ犯罪者じゃないとダメなのです(出来れば靴の先にナイフなんかを仕込んだ殺し屋のNo.2なんかも欲しい)。
そんなスケールの大きな敵と、実在する世界各地の名所で戦ったり、カジノをしたりするからこそ、大人になった時の夢が増えるのです(金髪美女にモテたいやら、ボンドムービーで登場した場所に行き、そこで登場したホテルには必ず泊まりたいとか・・・)。そのカタルシスがこの作品にはないのです。
ちなみにこの作品で、ボンド達が宿泊しているホテルはメキシコシティのグラン ホテル シウダッド デ メヒコで撮影されました。このホテルは『007 スペクター』でも登場しているホテルです。
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カジノシーンにタキシードはボンドムービーの鉄板。
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グラン ホテル シウダッド デ メヒコの有名なエレベーター。
ジェームズ・ボンド・スタイル5
タキシード
- テーラー:ステファノ・ リッチ
- パワーショルダーのブラックジャケット、幅広のノッチラペル、2つボタン、シングル、ノーベント
- ホワイトストライプドレスシャツ、4つのオニキスボタン、ダブルカフス
- シルクの蝶ネクタイ
- アルバートサーストンのモアレシルクのホワイトサスペンダー
- 同色のトラウザー、シルクの側章
- ブラック・パテントレザー・スリッポン
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タキシード姿になると、ボンドムードが全開になります。
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オニキスボタンのドレスシャツ。
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この作品の本当の主役は〝Q〟でした。
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そして、二人は一緒に寝ることになるのです(ここ最高)。
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オールバックにだぼついたパンツのジェームズ・ボンド。
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ちなみにサンチェスの豪邸シーンで着ているシャツがこのドレスシャツです。
ラークの日本限定CMに出演する。
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サンチェスの防弾ガラスを吹き飛ばすシーンでラークが登場します。
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プラスチック爆弾の時限装置です。
実はこのシーンは、ラークとのタイアップシーンなのです。ラークはこのシーンのために、35万ドルを支払いました。そして、ラーク・スーパーライトのための日本限定CMが、ティモシー・ダルトンを主役に撮影されたのでした。
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当時の広告。
ジェームズ・ボンド・スタイル6
カジュアルルック
- カーキのリネン生地のスポーツシャツ、胸には2つのパッチポケット、茶色のボタン
- カーキのチノパンツ
- ダークブラウンレザーベルト
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銀行から預金を全額おろすシーンでほんの一瞬だけ登場します。
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どこかサファリルックを連想させます。
ジェームズ・ボンド・スタイル7
ノータイ×スーツ
- テーラー:ステファノ・ リッチ
- ネイビーのシャークスキンスーツ、ノッチラペル、低い位置に2つボタン、ノーベント
- 胸ポケットつきのホワイトシャツ
- ブラックベルト
- ブラック・スリッポン
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ベニチオ・デル・トロとボンド。
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このスーツこそが、ボンドムービー史上初めてボロボロになるスーツなのです。
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ボンドがスーツに胸ポケットありのシャツを合わせちゃいけません。
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タンクローリー・アクションは圧巻でした。
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こんなボロボロになったボンドの姿は後にも先にもこの作品だけです。
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最後の最後に登場するダンヒルのユニークシルバーライター。
そして、6年間の空白が生まれた
この作品が作られた1989年(撮影自体が行われたのは、1988年7月19日~11月18日)は、ベルリンの壁が崩壊し、冷戦時代が終結し、第三次世界大戦の脅威は完全に消え去り、CIA、KGB、MI6といったスパイの存在が完全に不要だという空気に世界は包まれていました。
だからこそ、この作品の中のジェームズ・ボンドは、それまでのように暢気に女性の尻を追っかけて、スリーピースのスーツを着て、秘密兵器を駆使して、世界に脅威を与える悪党と戦う状況にはなかったのでした。
更に、時代は、あきらかに『リーサル・ウェポン』(1987)『ダイ・ハード』(1988)といったリアルな世界の中のハード・アクションを求めていたのでした。
かくして、生まれたリアルな復讐劇であるこの作品は、3200万ドルの予算で作られ、世界中で1億5600万ドル以上の興行収入を得たのですが、最も重要視していたアメリカでの興行収入は高くありませんでした。
しかし、1990年5月から次回作の撮影準備がはじまり、ダルトンも更に3作品の続投を決定するのですが、版権の訴訟問題がこじれ6年の空白の期間が生まれることになるのでした。
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しかし、ティモシー・ダルトンが降板になった本当の理由は、バーバラ・ブロッコリ(右端)と恋愛関係になってしまったからという噂は本当でしょうか?
作品データ
作品名:007 消されたライセンス Licence to Kill(1989)
監督:ジョン・グレン
衣装:ジョディ・リン・ティレン
出演者:ティモシー・ダルトン/キャリー・ローウェル/タリサ・ソト/ベニチオ・デル・トロ/ロバート・デヴィ
- 【007 消されたライセンス】復讐のために戦うジェームズ・ボンド
- 『007 消されたライセンス』Vol.1|ティモシー・ダルトンの冴えないボンドスーツ
- 『007 消されたライセンス』Vol.2|ネクタイを締めないボンド=ティモシー・ダルトン
- 『007 消されたライセンス』Vol.3|傷だらけのティモシー・ダルトン
- 『007 消されたライセンス』Vol.4|ディオールオムの象徴=ベニチオ・デル・トロ
- 『007 消されたライセンス』Vol.5|キャリー・ローウェルと80年代スカートスーツ
- 『007 消されたライセンス』Vol.6|ヴェリーショートが美しいキャリー・ローウェル
- 『007 消されたライセンス』Vol.7|キャリー・ローウェルとジョディ・リン・ティレン
- 『007 消されたライセンス』Vol.8|タリサ・ソトとオスカー・デ・ラ・レンタ
- 『007 消されたライセンス』Vol.9|タリサ・ソト、ボンドムービー史上初のラテン系ボンドガール