久しぶりに登場したアストンマーティン
本作で『女王陛下の007』以来、約20年ぶりにアストンマーティンが登場します。このボンドカーの名は「アストンマーティンV8 ヴァンテージ・ヴォランテ」です。そして、この車にはボンド曰く「ちょっとしたオプション」が搭載されています。
タキシードとスーツで決めたボンドには、ワルサーPPKとウォッカ、秘密兵器、ボンドガール、そして、ボンドカーが必要不可欠です。この作品が、ボンドムービーの中でも極めて高評価な理由は、『007 私を愛したスパイ』以来のボンドカー・アクションがあったからと言って過言ではありません。
そして、目を剥いて驚くボンドガールが助手席に座ればこそ、その効果は何倍にも発揮されたのでした。その隣で優雅に対応するボンドの姿を見ていると、美女に対する男性のしたい対応の全てが詰めこまれているのです(そして、激しいアクションの後は、うっとりするようなホテルに滞在するという王道パターン)。
ダニエル・クレイグのボンドに唯一足りないのはこの要素なのかもしれません。

レーザービームカッターで相手の車をカット

助手席で驚く美女こそボンドムービーで最も重要な要素。

そして、ミサイル。

さらにスキーとロケットジェットエンジン

氷上を滑るように走るアストンマーティン。
四代目ボンド・スタイル8
ベージュスーツ
- ベンジャミン・サイモン、ベージュのウールギャバジンスーツ、ノッチラペル、2つボタン、ダブルベンツ
- クリーム色のコットンシャツ
- ブラウン・レザー・ベルト
- ブラウン・レザー・スリッポン

モロッコという風土にマッチしたベージュ・スーツ。それにしてもこのシーンのボンドは惚れ惚れするほど精悍です。

このアンサンブルは『007 スペクター』でも登場します。
四代目ボンド・スタイル9
ベージュ・ボンバージャケット
- ベージュのボンバージャケット、セットインスリーブ
- ダークネイビーの9つボタンのポロシャツ
- ベージュのコットンチノパン
- ダークブラウンのデッキシューズ

ニュー・ボンドと謎のボンドガール達

80年代にウインドブレーカーは大流行しました。

ベージュのアンサンブルにはスタイルの良さが求められる。

下にはダークネイビーのポロ。

ボタンの数が9つもあるポロシャツ。

使用されなかった魔法のカーペットショット。
四代目ボンド・スタイル10
暗殺者ルック
- ダークネイビーの9つボタンのポロシャツ
- ブラックコットンチノパン
- 編みこみの黒ベルト

美女に囲まれるとぎこちなくなるダルトン(またそれが良い)。

隠密ルック=暗殺者ルック。
80年代はブロンドオールバックの時代でした

バブル時代を象徴するゆったりとしたスーツのシルエット。
ギリシア語で「死」を意味するネクロスは、この作品で登場する二人の冴えない悪役を押しのけ、圧倒的な存在感を放っています。演じるのは、アンドレアス・ウィズニュースキー(1959-)です。
彼はドイツ人で、元々バイエルン国立歌劇場のバレエダンサーでした。エルトン・ジョンの「ニキータ」(全英3位、全米7位)のMTV(ケン・ラッセルが監督した!)の中で、東ドイツの国境警備隊長を演じ、注目を浴びるきっかけになりました。本作の後、『ダイ・ハード』(1988)にも出演しています。
80年代はブロンドヘアの復興と呼ばれるほどに、女優も男優もポルノ女優の間においてまで、第三帝国時代のブロンド崇拝を連想させるほどに、ブロンドヘアが持て囃されました。
このネクロスのブロンド・オールバック・スタイルが、ブロスを生み、マコーレ・カルキンへと昇華していくのでした。
ネクロスの水色のウインドブレーカー

ボンドもCIAもネクロスも皆ウインドブレーカーを着ています。

なかでもネクロスの水色のウインドブレーカーがとてもカッコいいです。

エポレット付きのウインドブレーカーです。
ネクロスのウインドブレーカーにブルージーンズ、ライトブラウンのブーツのシルエットがとても80年代的で素敵です。この作品は、こういう風にしてみてみるとウインドブレーカーの映画だったとも言えます。
作品データ
作品名:007 リビング・デイライツ The Living Daylights (1987)
監督:ジョン・グレン
衣装:エマ・ ポーテウス
出演者:ティモシー・ダルトン/マリアム・ダボ/アンドレアス・ウィズニュースキー/ジェローン・クラッベ/ジョー・ドン・ベイカー