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ジェームズ・ボンド

『007 美しき獲物たち』Vol.1|ロジャー・ムーアとデュラン・デュラン

ジェームズ・ボンド
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ロジャー・ムーアという喜劇王

イギリスでは、ある人が本当に007が好きかどうかを測るバロメーターとして「ロジャー・ムーアは好きか?」という質問を投げかけるらしい。そして、その答えが「もちろん!」であるならば、その人は、本当に007が好きだということを認められるわけだ。

ロジャーは、今のダニエル・クレイグにただひとつ足りないものを持っていました。それは、敵と目が会うと笑顔で会釈するという(下の動画を参照せよ。『007 私を愛したスパイ』より)、チャップリン・スマイルでした。彼は類まれなる喜劇的な才能と、とんでもない色男ぶりをミックスすることが出来た稀有な喜劇王なのでした。

あえてここで言うならば、チャップリンやバスター・キートン、ピーター・セラーズに並ぶ喜劇王がロジャー・ムーアだったのです。

彼は、その物腰の優雅さで、どこまでもスパイを喜劇的な存在として、オースティン・パワーズよりも遥かなるスケールをもって演じあげたのでした。さぁ、私たちは、ロジャー・ムーアについて勘違いしていたことを認めようではないか。ロジャー・ムーアこそ、冷戦時代にスパイという存在に喜劇を絡め合わせた20世紀に誇る喜劇王の一人であったということを。

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ジェームズ・ボンド スタイル1

オールホワイト・スキーウェア
  • ブランド:ボグナー
  • 7003 エッシェンバッハ スキーサングラス、プラスチックフレーム、テンプル・アジャスター
  • ファーフード付きホワイト・スキージャケット、裏地は何気にタータンチェック
  • ホワイト・スキーグローブ
  • ホワイト・サーマルシャツ
  • セイコー7A28-7020クロノグラフ・クォーツ
  • オーリンのスキー板

オープニング・タイトルがはじまる前のボンド・ムービー定番のアクション・シークエンスは、シベリアからはじまります(アイスランド・ロケ)。ここでボンドが着用しているスキーウェアは、絶対に市販されないカラーリングです。つまり、オールホワイト・ルックです。

スパイにとって雪原とカモフラージュするためであり、通常このスタイルでスキーを滑ってしまうと他のスキーヤーにとって危険極まりなく、遭難すればまず見つかりません。ボンド・ファッションの面白さは、こういったリスク・テイカーぶりにもあるのです。

57歳のスパイの物語はシベリアの流氷からはじまる。

ファスナーはボンド仕様の「B」である。というのは冗談で。スキーウェア・メーカーのボグナーの「B」である。

オールホワイトのスキーウェアは通常販売されない。

サーマルシャツにも「B」ジップが付いている。

セイコー7A28-7020クロノグラフ・クォーツ

ボグナー 7003 エッシェンバッハ

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スノーボードが世界中に紹介された瞬間

コレ、ロジャー・ムーアがスタントなしでやったみたいです(嘘)。

世界ではじめてメジャー映画の中でスノーボードというものが紹介されたのは、この作品からでした。公開当時、人々は度肝を抜かれたことでしょう。

白銀の中をオールホワイトルックで滑りまくるロジャー・ムーアのスタントをつとめたのは、スノーボードの神トム・シムス(1950-2012)でした。雪の上から最後には水の上まで滑るシーンは、今見てもクールです。

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デュラン・デュランの主題歌

1981年8月1日午前12時1分に放送開始されたMTVに、007も乗り遅れてはいけないとプロデューサーのアルバート・R・ブロッコリは考えていました。

そんな彼に対してとあるパーティで、話しかけてきた酔っ払いの若者がいました。ブロッコリは、この若者が何者か分かりませんでした。

ただこの若者は「私は子供の頃から熱狂的なボンドムービーのファンです。次の作品の主題歌は決まってるのですか?」と尋ねてきたのでした。そして、自分のバンド名を告げました。この時は、そのバンド名に全くピンとこなかったブロッコリなのですが、翌日娘のバーバラ(後のボンドシリーズのプロデューサー)に「デュラン・デュランって知ってるか?」と尋ねると、彼女はこう答えたのでした「世界中で最も影響力を持つロックバンドよ」と。

この時の若者こそ、デュラン・デュランのベーシストのジョン・テイラーでした。画して、ブロッコリは、007に新しい風をもたらすためにデュラン・デュランの起用を決定したのでした。

元10ccのゴドレイ&クレームが監督した、エッフェル塔で撮影したPVと共にMTVでヘビロテされた、このテーマ曲は、全米No.1になった唯一のボンドムービーの主題歌(全英No.2)となりました。そして、この曲によって、当時、ボンドムービーは古臭い映画だという風潮が、払拭されるきっかけになったのでした。

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ジェームズ・ボンド スタイル2

チャコールグレー・スーツ
  • テーラー:ダグラス・ヘイワード
  • チャコール・グレーのウールのフランネル・スーツ、3ピース、ノッチラペル、2つボタン、センターベント
  • フランク・フォスターのクレリックシャツ、ピンクと白のベンガルストライプ
  • 赤のレップタイ
  • ブラックレザー・ローファー

本作においても前作の『007 オクトパシー』に引き続き、ダグラス・ヘイワードによりテーラリングされたボンドスーツを着ています。そして、彼の生み出すシルエットが、ボンドに若干の若々しさを与えていたのでした。

ボンドがクレリック・シャツを着ているのは非常に珍しい。

暖かいウールのフランネル生地のスーツです。

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最後のマネーペニー


この作品は、イギリス王室が所有するアスコット競馬場ではじめてロケ撮影された映画でした。そして、ロジャー・ムーアの最後のボンド・ムービーだったのですが、ボンド三代に渡り全14作品でマネーペニーを演じてきたロイス・マクスウェル(1927-2007)にとっても最後の作品となりました。

そんなマネーペニーのためにこのシーンは追加されたのでした。ピンクの派手な衣装を着たマネーペニーのはしゃぐ姿がとても愛らしいです。

彼女自身がボンドムービーで出演したシーンを合計すると1時間足らずなのですが、彼女とQ、そして、Mといった固定キャストがこのシリーズの安定感に多大なる貢献を果たしたことは明らかです(ちなみにロイスは、最後のマネーペニーを任務中の殉死で終わらせて欲しいと懇願したが、ブロッコリに却下されました)。

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ジェームズ・ボンド スタイル3

アスコット・スタイル
  • テーラー:ダグラス・ヘイワード
  • グレーのヘリンボーンのモーニングスーツ、3ピース、ピークドカラー
  • フランク・フォスターのホワイトシャツ、カッタウェイカラー
  • ライトグレーのマックルズフィールド・タイ
  • ライトグレーのシルクハット
  • ダークグレーのスエードグローブ

MI6の面々が勢揃いしています。ちなみに真ん中は、ティベット卿を演じたパトリック・マクニー。

Qがいてマネーペニーがいる安定感。

作品データ

作品名:007 美しき獲物たち A View to a Kill (1985)
監督:ジョン・グレン
衣装:エマ・ ポーテウス
出演者:ロジャー・ムーア/クリストファー・ウォーケン/グレイス・ジョーンズ/タニア・ロバーツ/アリソン・ドゥーディ