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【裏窓】ファッション・モデルを演じたグレース・ケリー

グレース・ケリー
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【裏窓】

Rear Window ダイヤルMを廻せ!』(1954)でグレース・ケリー(1929-1982)の魅力にすっかり惚れ込んだアルフレッド・ヒッチコック(1899-1980)との二度目の作品であり、グレースにとって五本目(全十一本中)の出演作である本作は、彼女にとって、その魅力を100%開花させた作品でした。

グレース・ケリー旋風はこの作品から巻き起こったのでした(翌年『喝采』でアカデミー主演女優賞を獲得します)。何よりもこの年アカデミー衣裳デザイン賞 (白黒部門)を『麗しのサブリナ』で獲得することになるイーディス・ヘッドの衣裳デザインがさえに冴え渡り、グレース・ケリーの最大の魅力である〝クール・ビューティー〟に不滅の煌きを与えたのでした。

サスペンス劇としても非常に優れているこの作品は、全体的に、人間の弱さのイメージを優しく眺める姿勢で作られており、ただグレース・ケリーの美しさを堪能するだけの作品で終わっていないところが、さすがヒッチコックです。

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あらすじ

アーティストが好んで住む街、ニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジの真夏の水曜日(一日目)の朝、L・B・ジェフリーズ(ジェームズ・スチュアート)はアパートの窓際の車椅子で汗をかいて寝ていました。フォトグラファーのジェフは、カーレースに巻き込まれ左足を骨折していました。

暇を持て余していたジェフは、裏窓から見える向かいのアパートの人間模様の観察に夢中でした。出張ナースのステラ(セルマ・リッター)に注意されるのですが、向かいのアパートが気になってしょうがないジェフ。

夜になり車椅子で寝ていたジェフのもとにリサ・フレモント(グレース・ケリー)が近づき、目覚めのキスをしてくれます。ハーパーズ・バザーの仕事を終えたばかりだというリサは、上流階級のファッション・モデル兼エディターの仕事をしています。

リサが手配した高級レストランのディナーのデリバリーに抵抗を感じるジェフは、ワインを飲みながら、二人の将来について、結婚を望むリサに対して、生まれも育ちも価値観も違いすぎるという本音を言ってしまいます。リサが怒って出て行った後、ジェフが考え込んでいると、向かいのアパートから女性の叫び声が聞こえてきます。

木曜日(二日目)の深夜、土砂降りの中、病気の妻と口論になっていた男が、大きなスーツケースを持ち出て行く姿を目撃します。翌朝、何か疑念を感じたジェフは、カメラの望遠レンズを駆使し、向かいの男の部屋を徹底的に監視しています。

夜、リサと仲直りし抱き合ってキスをした後、ジェフは、向かいの男が妻を殺害しバラバラにしたのではという疑念を話すが、一笑に付されます。と同時に、リサの目の前で、男は大きなトランクをロープで縛りはじめたので、彼女もすっかり向かいの男の監視に夢中になります。

金曜日(三日目)の昼、ジェフは第二次世界大戦の戦友の現職刑事ドイルに捜査を依頼します。そして、ステラもその話を聞き、向かいの男の監視に加わるようになります。その夜、リサがやって来て、ジェフと、間違いなく向かいの男は、妻を殺害したはずだという結論に至る。

その夜、裏庭に響き渡る中年女性の悲鳴。なんと彼女の最愛のペットの犬が殺害されたのだった。しかし、その叫び声に一人だけ反応しないのが向かいの男でした。ジェフは、妻殺害に関する何らかの証拠を花壇に埋め、それを掘り起こしかねないこの犬を彼が殺したのだと推理しました。

リサがお泊りした翌日土曜日(四日目)の昼、ジェフ、リサ、ステラは向かいの男を監視するのに夢中です。そして、いよいよ動けないジェフに代わり、リサが、男の部屋に侵入することになったのでした。

しかし、帰宅した男と鉢合わせたリサ。男に捕まえられ危機一髪の状況の中、ただ見ていることしか出来ないジェフはリサを救うことが出来るのか!?

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ファッション・シーンに与えた影響


『裏窓』において、グレース・ケリーと彼女を引き立てるジェームズ・スチュアート(華麗なる中年男性は、美しい女性の最上級のアクセサリー)の相性は最高でした。そんな二人を演出するアルフレッド・ヒッチコックと衣裳デザイナーのイーディス・ヘッドが生み出した数々の〝不滅のクール・ビューティー・スタイル〟。

この作品がファッション業界に影響を与えた要素は以下の三点です。

  1. クリスチャン・ディオールニュールック(1947)を、グレース・ケリーを通してさらに素晴らしいものにした
  2. パール・ジュエリーのスタイリングの教科書
  3. イブニングドレスのようにカジュアルな装いを着こなす

グレース・ケリーの神話は、この作品からはじまります。そして、彼女が〝究極のエレガンス〟を体現しているのは、すべての所作が流れるように自然で美しいからであることがわかります。

『裏窓』のファッション・ムービーとしての最も重要な価値は、〝エレガンス=自然〟であることを教えてくれる〝エレガンスのバイブル〟であることに尽きます。

作品データ

作品名:裏窓 Rear Window (1954)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
衣装:イーディス・ヘッド
出演者:ジェームズ・スチュアート/グレース・ケリー/セルマ・リッター