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『裏窓』Vol.3|不滅のクール・ビューティー、グレース・ケリー

グレース・ケリー
グレース・ケリー
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グレース・ケリーの初恋の人

グレース・ケリー(1929-1982)は、今でこそモナコ公国の公妃としてノーブルなイメージが強いのですが、実際のグレースは、『裏窓』で共演したジェームズ・スチュアートが回想しているように、

私が共演した多くの女優の中でも、とても演技がしやすい相手役の一人でした。彼女は他の役者の台詞の意味を考えもしない類の女優ではありませんでした。

スター気取りになることもなく、気まぐれでもなく、自分の役についてどうすればうまく演じられるのか、真面目に考えていました。

何よりも、おてんば娘なところもあり、そっけなくも、冷たくもなく、一緒に仕事をする人たちに対して非常に温かく、とても思いやりがありました。

他のあらゆる人の回想においても共通しているのは、人の悪口を決して言わず、いつも笑顔で、気まぐれなところが全くない、相手から気持ちよい反応を引き出す天才であるという点でした。

フィラデルフィアの良家の子女として生まれた(父はボート競技でオリンピック金メダリストであり、煉瓦製造会社で億万長者に。母はドイツ系の元ファッション・モデル)彼女の性格を決定付けたのは、14歳からはじまる初恋でした。それは2歳年上のハーパー・デービスという青年が相手でした。

しかし、グレースが17歳のとき、ハーパーは多発性硬化症にかかってしまい、それ以降、彼女は頻繁に彼を見舞い、献身的に看病をしました。そして、1953年に7年の闘病生活の末、ハーパーが死去した時には、ハリウッドでの撮影が忙しい中、葬式に出席したのでした。

この悲恋によって、グレース・ケリーという女性の中に、人に対する思いやり、温かい笑顔を絶やさないように心がける、という人間的な魅力が育まれたのでした。

彼女が〝不滅のクール・ビューティー〟と呼ばれるのは、ただただ冷たいほど美しいのではなく、そのクールな美しさの底にながれる温かさを、私たちは知らず知らずのうちに、写真を通して感じとれるからなのです。

いつの間にか、お向かいのアパートの観察に夢中になる三人。

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天女の羽衣のようなグレースガウン

とんでもなくエレガントなナイトガウン。

空を飛べそうなナイトガウンです。のちに『奥様は魔女』の魔女ガウンにインスパイアを与えました。

官能的な純潔性、秘められた官能性。安物の首飾りのようにセックスをひけらかす女性には、私は全く魅力を感じない。

アルフレッド・ヒッチコック

『裏窓』は、サスペンス映画としても娯楽作品としても、映像芸術的にも文句のつけようがない超一級品なのですが、それと同じくらい、ファッション・ムービーとしても素晴らしい作品です。

50年代の「ハーパーズ・バザー」から抜け出てきたかのようなエレガンスを三つの衣装で見せてくれた後、偶像のようなナイトガウン姿を見せてくれるのです。それはまるで30年代のハリウッド・バビロンへの回帰のようです。

このシーンを見た瞬間、この作品の中で、ヒッチコックがたくさんやり遂げようとした事のひとつに、〝究極のハリウッド・ビューティー〟を永遠のものにするという課題も含まれていることを私たちは確信するのです。

さらに、ヒッチコックの映画の中では、女性はスニーカーを履かず、ファスト・ファッションも存在せず、どこか窮屈に見えるほどに女性たちはエレガンスを体現している。そんな自由な精神を微塵も感じさせない〝研ぎ澄まされたエレガンスへの探究心〟を見ていると、今は失われし美的感覚に対し、畏怖の念すら抱かずにはいられないものです。

『裏窓』の世界の中のグレース・ケリーは、〝クール・ビューティー〟である以上に、バレエのプリマドンナの如く、人間以上の美しさを体現しようとしてるのです。

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リサのファッション4

ナイトガウン
シルクのナイトガウンにシフォンを纏う

グレースは、淡く透き通ったネグリジェを試着して、鏡の前で、その姿を見て大笑いして言ったの「これじゃまるでピーチパフェのようじゃない?」と。

イーディス・ヘッド

グレースガウンのドレープの美しさにうっとりしてしまいます。

生活感ゼロのナイトウエアに見えますが、シルクほど快眠をもたらす夜着はありません。

赤の背景に白のランジェリーの対比。

グレースガウンの全容。

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全ての衣装は、リサの心情に合わせた色になっている

どこかチャイナドレスのようなデイドレス。


すべての衣装は、リサの心情に合わせた色になっています(上から登場順)。

  1. モノトーンドレス → 曖昧さのない、自信の表れ
  2. ブラックドレス → 彼の心をハッキリさせようという強い意志
  3. グリーンスカートスーツ → クール・ビューティーの演出
  4. オフホワイトのナイトガウン → そして、氷は溶けてゆく…
  5. ゴールデンフローラル・デイドレス → 行動あるのみ
  6. レッドシャツとジーンズ → 情熱と意志の勝利
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リサのファッション5

ゴールデンフローラル・デイドレス
  • 金色の花柄の刺繍が施されたデイドレス。フリルスカート。1930年代チャイナドレス風
  • 白の細ベルト
  • 茶色のパンプス
  • 一連のパールネックレス

ジェフ(ジェームズ・スチュアート)と住んでいる世界が全く違うと感じさせていたリサが、このデイドレスによって、家庭的な50年代のアメリカの中流階級の若奥様のような愛らしさを漂わせてくれます。

そして、健気に頑張る彼女の姿を見て、ジェフは心を揺り動かされ、彼女をどれだけ愛しているかということに気づくのです。

被害者の女性のエキゾチックレザーのバッグを手に取るリサ。

これからの時代に再び流行しそうなウエストライン。

ワンピースにおける上下のバランスが絶妙です。上はぴたっと、下はふんわりと。

お人形さんのようなグレース・ケリー。

実に美しいデイドレスのシルエットです。

デイドレスに、白い手袋が効いています。

この帽子は、映画の中には登場しませんでした。

改めてみても素晴らしいシルエットです。

イーディス・ヘッドによるデザイン画。

作品データ

作品名:裏窓 Rear Window (1954)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
衣装:イーディス・ヘッド
出演者:ジェームズ・スチュアート/グレース・ケリー/セルマ・リッター