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【エルメス】イリス ウキヨエ(ジャン=クロード・エレナ)

エルメス
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イリス ウキヨエ

原名:Iris Ukiyoe
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2010年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/39,820円
公式ホームページ:エルメス

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アイリスの根茎ではなく、アイリスの花の香り

©Hermès

『あやめにきりぎりす』葛飾北斎

私は葛飾北斎や歌川広重の浮世絵をコレクションしています。その中の一枚である葛飾北斎の「あやめにきりぎりす」にインスパイアされ、儚くも浮き立つような嬉遊曲(ディヴェルティスマン)として生み出したのが「イリス ウキヨエ」です。

それはクラシカルなアイリスを表現するのではなく、深刻なムードは一切ない明るくて軽妙なアイリスの香りを表現しました。アイリスが、ローズ、オレンジ・ブロッサム、マンダリンの間を揺らめきながら、「そしてアイリスはいなくなった」という〝儚さ〟を表現した香りなのです。

ジャン=クロード・エレナ

地中海の庭」の成功により、2004年にジャン=クロード・エレナエルメスの初代専属調香師に就任することになりました。そして、≪嗅覚の詩≫とも言える究極のフレグランス・コレクション『エルメッセンス』が誕生しました。

2010年に九作目として発表されたのが「イリス ウキヨエ」です。「あやめにきりぎりす」という浮世絵の中で咲くアイリス(花菖蒲)と、葉の間に隠れたきりぎりすの心を、人々の素肌と心に映し出そうとした香りです。

エレナはザ・ディファレント・カンパニーの「ボア ディリス」(2000年)とエルメスの「パプリカ ブラジル」(2006年)で、すでにイリスルート(根茎)に焦点を当てた香りを生み出していました。しかし、この香りにおいて、エレナはそういった従来のアイリスの香りではなく、〝アイリスの花〟に焦点を当てる香りを生み出そうと考えたのでした。

グラースの自宅の庭は、香りに合わせてではなく、色調の範囲を青と白に限定し作ってみました。明るいものから暗いものまで、何百もの花菖蒲があります。私はこの微妙なグラデーションを持つ洗練された花が好きなのです。稀に見るエレガントさを備えています。薔薇よりもずっと洗練されていて、儚げな感じがします。繰り返し咲くことはなく、一年に15日~3週間程度しか咲きません。

ジャン=クロード・エレナ

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浮世絵の世界と、花菖蒲の咲く庭の情景を重ね合わせる。

『燕子花図屏風』尾形光琳

『堀切の花菖蒲』歌川広重

私はコレクターと名乗れるくらい浮世絵が好きなのだが、なかでもアイリスを描いている作品の印象が強い。有名な尾形光琳の『燕子花図屏風』も心に強く残っている。その世界観に影響を受け、自分の庭にも5月初旬から6月初旬にかけてアイリスの花を咲かせている。

白い花青い花ー雪のような白さから羽毛のような白さ、濃い藍色からコバルトブルーまで、そして変化に富んだピンク色、そういった花々が競いあって咲く。

アイリスの花を眺め、匂いを嗅ぎ、花弁に触れて、五感を働かせるとき、浮世絵の世界と庭の情景が重なりあう。日本の画家のまなざしを通さずには、アイリスの花を感じることはない

『調香師日記』ジャン=クロード・エレナ

まるで素肌の上に、錦絵を生み出していくように、色彩豊かな香りが摺りこまれてゆきます。ひんやり冷たいクールウォーターが注ぎ込まれるようなグレープフルーツとマンダリンオレンジに、みずみずしいグリーンノートの苦味が重なり合うようにしてこの香りははじまります。

すぐに柔らかなオレンジ・フラワーと甘やかなヘディオンが注ぎ込まれ、甘さと酸っぱさと苦さが生き生きと水光のようにきらめきながら、ベジタブルと生き物(きりぎりす)の息吹を伝えてゆきます。

そして、アイリスが紫の花びらを広げて、柔らかな香りを解き放つのです。そのパウダリーな甘さにみずみずしさを与えるように、ローズ、スズランがクリーミーに、フレッシュグリーンの煌めきをそこはかとなく加えてゆくのです。

やがて、ハニーサックルのような花々の艶やかさをほのかに漂わせながら、儚くも浮き立つようなアイリスの花の余韻が夢幻のごとく消えゆくのです。

特筆すべきは、アイリスの花の香りが消えていく情景が、石鹸のような人工的な香りではなく、虹のかなたのみずいろの水辺に咲く、紫の花から遠ざかっていくような、自然のはかなさを見事に表現しているところにあります。

もしかしたら、この香りには、アイリスの根茎から抽出される香料(イリスバター、アイリスアブソリュート)は一切使用されていないのかもしれません。

ちなみにドイツアヤメの花の香りは、シトラスとフレッシュなローズが混じり合ったようなみずみずしい甘やかな香りです。

同じくアイリスの花を表現したアクア・ディ・パルマの「イリス ノビレ」(2004年、フランシス・クルジャン、フランソワーズ・キャロン)やブルガリの「オムニア アメジスト」(2006年、アルベルト・モリヤス)、プラダの「インフュージョン イリス」(2007年、ダニエラ・アンドリエ)と比べてみたくなる香りです。

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作品データ

香水名:イリス ウキヨエ
原名:Iris Ukiyoe
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2010年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/39,820円
公式ホームページ:エルメス


シングルノート:アイリス、アフリカ産オレンジ・フラワー、マンダリンオレンジ、ローズ

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