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【ザ ディファレント カンパニー】ボア ディリス(ジャン=クロード・エレナ)

ザ・ディファレント・カンパニー
©The Different Company
ザ・ディファレント・カンパニージャン=クロード・エレナブランド調香師香りの美学
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ボア ディリス

原名:Bois d’Iris
種類:オード・トワレ
ブランド:ザ・ディファレント・カンパニー
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2000年
対象性別:ユニセックス
価格:90ml/17,000円(日本販売終了)

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8年かけて作るトスカーナ産イリスバター


世紀末を迎え一人の男が香水業界の救世主伝説を生み出そうとしていました。調香師という存在に光を当てた男、フレデリック・マルの登場です。そして、彼のアイデアを聞き、いの一番に理解を示したのがジャン=クロード・エレナでした。

かくして2000年に、エレナは、マルの最初の香りのうちのひとつ「アンジェリーク スーラ プリュイ」を創造したのでした。

このマルとの出会いが、エレナに与えた影響は絶大でした。それが従兄弟のティエリー・ドゥ・バシュマコフと共に、ハイ・コンテンポラリー・パフューマリー『ザ・ディファレント・カンパニー』を2000年に創立する原動力になりました。

ティエリーは、ブルガリの「オ パフメ オーテヴェール」のボトル・デザインも担当したプロダクト・デザイナーでした。「最高品質の天然香料を駆使して、他にはないユニークでエレガントな香水を創ること」を目的に生み出されたこのニッチ・ブランドの誕生によって、エレナははじめて、自分が本当に生み出したい香りを創造することが出来るようになるのでした。

『ザ・ディファレント・カンパニー』とは、エレナの今までの香りの創造とはまったく違う(ディファレント)環境で生み出される〝芸術として身にまとう香り=21世紀の新しい香水のカタチ〟を世に示した集大成の場でもありました。そして、ブランド誕生と同時に、最初の三作品が発表されました。

そのうちのひとつが「ボア ディリス」です。フランス語で〝アイリスの森〟を意味するこの香りのために、アイリスの中でも最高品種のものである、起伏の激しいトスカーナ地方の丘陵一帯に生えているアイリス・パリダが使用されています。

アイリスの香りが、高価な理由は、その香料が根のなかに隠されているからです。だから香料を抽出するために膨大な時間と労力がかかります。

まずは3年もの間、根茎を傷つけないようアイリスを栽培し、収穫した後に、根茎から状態の良いものを選び、その皮を剥き、太陽の下で1ヵ月間天日で乾かします。ここまででまだ全工程の半分にも達していません。そこからさらに5年かけて特製バッグの中で低温脱水させます。そうすることによりケトン類、α-イロンが放出されるのです。

そして、ようやく最後に冷水処理し粉末状にしたものを水蒸気蒸留し、イリスバターが出来上がるのです。

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すぐ消えゆくものを、全身で受け止める喜び

©The Different Company

最高級のアイリスの芳香を手にするために、8年の時を待たねばならない。そして、この香りの寿命は約2時間。すぐに消えていくものだからこそ、その中に、アイリスの生命が凝縮されているのです。

ただただアイリスの月琴の響きのような美しさに心添わす薫り〝アイリスの森〟は、イリスバターが、ほとばしるベルガモットに照らされ、静やかにその存在を現していくようにしてはじまります。すぐにスパイシーなクローブがトスカーナの風のように駆け抜けてゆきます。

そして、ほんのり甘いα-イソメチルイオノン(ヴァイオレット)がイリスバターに溶け込んでゆきます。(茹でたニンジンのような)雅やかな白粉のような薫りが、ささやくようにしんみりと薄靄のように広がってゆきます。スパイスが落ち着くに従いアイリスはさらに美しく広がります。

やがて、シダーウッドが静謐な森を運んでくれます。薄靄の中を彷徨ううちに、涼しげな湖畔にたどり着かないのがこのアイリスの薫りの特徴です。スパイシーでアロマティックローズなゼラニウムとアーシィーな水仙が優しく失われつつあるアイリスの美の極みを支えてゆきます。

静かな森の気配を感じながら、ベチバーに導かれ、どんよりと湿った森(樹木、草葉、土)の目覚めの中で、アイリスは消え行くのです。

力強い生命力よりも、日の光を浴びることが出来ない美しくも病弱な女性の横顔のようであり、意志の強さを示す冷たさよりも、優柔不断とも言える温かさを感じさせ、さらにエレガントというよりは、生まれながらの育ちのよさを感じさせます。

贅沢とは、儚さと同義語なのでしょう。ヴィヴィアン・リーが『欲望という名の電車』(1951)で言い放つ名台詞「安物の香水ほど遠くまで匂うものよ」を真に受けるならば、確かにこの香りは、儚く消えゆく高級な香水なのです。約70kgのアイリス・パリダの根茎で、一本分(90ml)の「ボア ディリス」しか製造できないのですから。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ボア ディリス」を「アイリス・ウイスキー」呼び、「初めの15分は並はずれてリッチな香りのアイリスで、根の部分のワインのような複雑な香り、それに胡椒っぽいゼラニウムからバイオレット、リコリス、干し草のまじった深みのある和音が、スコッチのような、豊かなキャラメルウッディの香りを放っている。それが落ち着いてくると、まず心地よい、強めの古びたウッドとベチバーの香りに変わり、その後はバラバラに。でもやっぱり、とてもいい男性用香水。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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作品データ

香水名:ボア ディリス
原名:Bois d’Iris
種類:オード・トワレ
ブランド:ザ・ディファレント・カンパニー
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2000年
対象性別:ユニセックス
価格:90ml/17,000円(日本販売終了)


トップノート:アイリス、ベルガモット
ミドルノート:ゼラニウム、水仙、コリアンダー
ラストノート:シダー、ホワイトムスク、ベチバー

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