デス・バレエ。死ぬまで踊れ!

1967年公開当時、世界中の人々が衝撃を受けたラストシーン。

文字通り蜂の巣になるボニーとクライド。
ボニー・ルック12 ラスト・ルック
- クリーム色の半そでワンピース。スクエアネック
- 白のフラットシューズ
デス・バレエと共にアメリカン・ニューシネマは始まりました。そして、この映画を見た後、サム・ペキンパーは地団太を踏んで悔しがったのでした。このデス・バレエのシーンこそが、彼が敬愛する黒澤明の『七人の侍』のスローモーション・シーンを引用し、新たな映像美学を生み出したものだったからです(1969年『ワイルドバンチ』にて、ペキンパーはさらに壮絶な殺戮シーンを撮り、効果的なスローモーションの美学を披露した)。
死に向かって走り抜けたボニーとクライド。最後に羽ばたく鳥の群れと、地面に伏せる老人。そして、ゴールキーパーのような姿勢を取り、ボニーを見つめるクライドと、クライドに一瞬笑顔を送るボニー。二人の視線が合った瞬間に、滅びの美学の幕が切って落とされたのでした。
踊り狂っているかのように、いつ終わるとも知れぬほどに容赦なく87発の銃弾を浴びるボニーとクライド(4台の撮影スピードの異なるカメラを使用、フェイ・ダナウェイは、座席からずり落ちないように足首をギア・シフトに固定していた)。やがて、唐突に銃弾が止み、THE ENDが画面を支配し、ノスタルジックな音楽が流れ、美学は完結します。
この87発の銃弾は、ファッション・シーンに過去のファッションを現代風に蘇らせて着こなすというレトロ・モードの概念を生み出しました。今までは過去のファッションには明日はありませんでした。しかし、この作品以降、過去のファッションにも明日があるようになったのです。
彗星のように現れたフェイ・ダナウェイというファッション・アイコン

作中に登場しなかったミニスカートにベレー帽を合わせる60年代的ボニールック。

フェイ・ダナウェイは、1968年のアカデミー主演女優賞にノミネートされた。
ボニー・ルックの中心には、ベレー帽が存在します。これらのベレー帽は、ジョルジオ・アルマーニを発掘したニノ・セルッティにより、提供されたものでした。
60年代を代表するファッション・アイコンの地位に彗星のように現れたフェイ・ダナウェイ。彼女は、1968年のアカデミー賞授賞式においても、セオドア・ヴァン・ランクルの衣装を着て話題になりました。ロング・スリーブのブラック・シフォン・ガウンとオーストリッチ・フェザー・コートという華やかなファッションにオールバックに纏めたヘアスタイルがセクシーです。
そして、その後も、セオドアとタッグを組み、『華麗なる賭け』(1968)、『恋人たちの場所』(1969)『アレンジメント/愛の旋律』(1969)においても、時代をリードするファッション・センスを見せることになります(この時期、フェイ自身、プライベートにおいても、セオドアのデザインするファッションだけを着ていた。)。