クライド・バロウの1930年代ファッションにも注目!
ベレー帽とタイトニットとミディスカートで話題になったフェイ・ダナウェイによるボニー・ルックだけでなく、ウォーレン・ベイティ(1937-)のクライド・ルックも忘れてはなりません。この作品により、1930年代のギャングスター・スタイルがリバイバルしたのでした。
1960年代に、男性のファッションが急激に女性化(ピーコック・レボリューション)しました。そんな時代の空気を反映して、この作品には、3人の男性が配されています。
一人目は30年代のギャングモードを体現するオシャレなクライド・バロウ。二人目は60年代的ユニセックスを体現するモス(マイケル・J・ポラード)。そして、3人目は保守的なアメリカン・スタイルを体現するバック・バロウ(ジーン・ハックマン)。まさにこの作品はタイムレスな〝男性の三変化〟を示すカタログなのです。
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ポラード(右端)のニュースボーイ・キャップとジャケットとジーンズの組み合わせがかなりオシャレです。
ヘアスタイルを30年代風にすることを拒絶したウォーレン・ベイティ
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田舎娘なら騙せる、洗練されていないギャングスタイルで登場するウォーレン・ベイティ。
ウォーレン・ベイティは、目や口の表現や帽子の扱いも優れているのだが、全身で表現する能力が著しく乏しい。でもウォーレンの訓練された俳優ではない、間の悪いところが、クライド・バロウの中にある何かを解き放ったようだ。それほど彼の間の悪さは、ある種、天才的なのだ。
ポーリン・ケイル(ザ・ニューヨーカー 1967/10/13)
衣装デザインを担当したセオドア・ヴァン・ランクルは、ウォーレン・ベイティのヘアスタイルを30年代風のオールバックのスタイルにしたかったのですが、ウォーレンが「そんな時代遅れなヘアスタイルしたくもない!」と拒絶したのでした。
後にセオドアは、折角の30年代のギャングモードのスタイルが、髪型のおかげで台無しにされたと述懐しています。
クライド・バロウのファッション1
オープニング・スーツ
- 農家出身を示すようなパンツとミスマッチなチョコレート・ブラウンのダブルのウール・ジャケット、1930年代的なワイド・ピーク・ラペル。サイズが合っておらず丈も短め
- ギャングスターに憧れるかのようなピンストライプのパンツ
- ピンストライプの入ったブラウンのフランネルベスト
- ブラック・レザーベルト
- オフホワイトのストロー・パナマハット、ブラックバンド付き
- 白黒の抽象柄の幅広ネクタイ(キッパータイ)
- 白×ブラウン・レザーのウイングチップシューズ
- プレーン・ホワイトシャツ
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キザだが、野暮ったいミスマッチなスーツ・スタイルで登場するクライド。
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つまりは有り合わせのスーツ・スタイル。
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そして、まだまだ覚醒されていないボニーのスタイル。
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ギャング映画のスターのようにマッチ棒をくわえるクライド。
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ほとんどの撮影は、1967年、テキサスで行われた。
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ネクタイの幅も時代を反映しています。
完全なギャングスター・スタイル
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どうしてもボニーに目がいきます。それほどこのボニー・ルックはカッコいい。
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ピンストライプのダブルのスーツを着た、完全なギャングとなったクライド。
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クライド・ルックの参考にした本物のギャング、プリティ・ボーイ・フロイド。
衣裳デザイナーのテオドア・ヴァン・ランクルは、後に、クライド・スタイルの延長線上にあるともいえる『ブリット』(1968)と『ゴッドファーザーPART2』の衣装も担当しました。
特にクライド・バロウがボニーと意気投合し、完全なギャングになってから着るピンストライプのスーツスタイルは、今でもタイムレスなセンスに満ち溢れています。彼女は、1930年代のギャングであるプリティ・ボーイ・フロイド(1904-1934、最後はFBIに射殺された)のファッション・スタイルを参考にしてこの衣装を作りました。
フロイドのアイコニックなスタイルである、フェドーラとチョークストライプのダブルのスーツ・スタイルをそのまま取り入れました。
クライド・バロウのファッション2
ピンストライプ・スーツ
- 白いピンストライプの入った3ピースのダークブルースーツ。スリムなダブル、スリム・ピークラペル、6ボタンのベスト
- ブラック・レザーベルト
- 白のドレスコットンシャツ。ポケットなし→途中で、ストライプ入りのダークグレイシャツにチェンジ
- ダークブルー×白のアールデコ模様のシルクタイ、1930~40年代風のショート・ワイドタイ→途中で、60年代風のナロータイにチェンジ
- ブラウン×白のバイカラー・キャップトウ・オックスフォードシューズ
- ブラウンウール・ニュースボーイキャップ(一回目の銀行強盗)→ブラウン・フェルト・フェドラ(2回目以降)→最終的にはオフホワイト・ストロー・パナマハット、ブラックバンド付きに変わる
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ニュースボーイ・キャップをかぶる。
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スーツも新調して完全なギャングスタイルになる。
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ボニーのシルクのスカーフと、クライドのピンストライプのジレの素敵なマッチング。
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60年代的な細身のネクタイが唐突に現れたりもします。
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『俺たちに明日はない』と言えば、有名なギャング・スタイルのこの写真。
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ボニーのカッコよさに負けないクライドの〝青いダンディズム〟。
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健康的なランニング・スタイルにピンストライプのスラックス。
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隙のないトータル・コーデ。カメラテスト。
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ジャケットを脱いだスタイルのカメラテスト。
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美しいストライプシャツ。
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セオドア・ヴァン・ランクルのデザイン画。
ジージャンとポルカドット・シャツ
モスのファッション1
- インディゴのデニムジャケット。後ろにアジャスター付き
- ピンドットのブルーブラウス
- こげ茶のネッカチーフ
- ブルージーンズ
- 茶色のニュースボーイ・キャップ
- ダークグレーのジレ
当初ジャック・ニコルソンとデニス・ホッパーも候補に挙がっていたというモス役のマイケル・J・ポラード(1939-2019)のファッションも見逃せないポイントです。
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3人目の仲間になるモス。演じるはマイケル・J・ポラード。
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マイケル・J・フォックスが影響を受けた俳優。
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ジレをミックスしたタイムレスなスタイリングです。
A2フライト・ジャケット
バック・バローのファッション1
- ブラウンのホースハイドのA2フライトジャケット、エポレットなし、フロントジップ、パッチポケット。インナーはライトウェイトコットン
- アイボリードレスシャツ→ライトブルーのシャンブレーシャツ
- クリーム・シルクの幅広ネクタイ
- なめし皮のベルト
- チャコールグレーのフランネルのトラウザー
- ブラウンのカーフレザー・オックスフォード
- ベージュのウールのニュースボーイ・キャップ
1927年にアメリカ陸軍航空隊(アメリカ空軍は第二次世界大戦後に結成)に採用されたA1ジャケットと違い、1931年に採用されたA2ジャケットからフロントジップが使われました。両ジャケットの同じ点は、防水加工した茶色の馬のなめし皮で作られている点です。A2ジャケットとは通称でボンバー(ボマー)・ジャケットとも呼ばれています。
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クライドの兄バック(ジーン・ハックマン)が着ているA2フライト・ジャケット。この使用感がたまりません。
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よく見るとベルトがバックルから外れています。
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フライトジャケットの下はシャツとネクタイで合わせ、フェドーラを被るカッコ良さ。
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フライトジャケットにネクタイの組み合わせ。本作の隠し味ともいえるベスト・スタイリングです。
作品データ
作品名:俺たちに明日はない Bonnie and Clyde(1967)
監督:アーサー・ペン
衣装:セオドア・ヴァン・ランクル
出演者:フェイ・ダナウェイ/ウォーレン・ベイティ/マイケル・J・ポラード/ジーン・ハックマン