フェイ・ダナウェイ

フェイ・ダナウェイ1 『俺たちに明日はない』1(3ページ)

    作品名:俺たちに明日はない Bonnie and Clyde(1967)
    監督:アーサー・ペン
    衣装:セオドア・ヴァン・ランクル
    出演者:フェイ・ダナウェイ/ウォーレン・ベイティ/マイケル・J・ポラード/ジーン・ハックマン



    1967年。新しい映画が血しぶきと共に生まれた!

    映画の中のボニーとクライド。

    こちらが、本物のボニーとクライドの写真。

    映画が、本格的にファッション業界全体に影響を与えるようになった年を考える時、絶対に忘れてはならない作品があります。それは『俺たちに明日はない』です。この映画が製作され、公開された1967年以降、映画がファッション業界に与える影響は、破格のものとなりました。

    では、1967年とはどういう年だったのでしょうか?この年、アメリカ全土において、ベトナム戦争に対する反戦運動が本格化しつつありました(同年10月21日ワシントンで最大規模の反戦集会が開催される)。そんな中、ヒッピーと呼ばれる自然と愛と平和を訴える人々のライフスタイルが、LSDやマリファナと共に、地球上を覆いつくそうとしていたのでした。そんな中、生み出されたのが、『俺たちに明日はない』(原題はただの『ボニーとクライド』)でした。

    映画の中で、暴力を描いちゃだめだって?今では、テレビでも映画館でもニュース映像で、嫌というほどオレたちは、ベトナムでの殺戮を見せ付けられてるじゃないか?

    アーサー・ペン

    1967年から68年にかけて当時の若者は、反戦運動と学生運動により闘争の日々を過ごす者達と、ヒッピー・ムーブメントという「既成事実に囚われない、今を自由に生きる」姿勢で、享楽的な日々を送る者達に二分されることになりました。「両極端な時代」の始まりです。そんな時代の流れにぴったりと本作が合致した理由は、「もうハッピーエンドなんか信じない!」という時代の空気と、「滅びの美学」がそこには詰まっていたからでした。

    この作品の衝撃的なラストシーンである、ボニーとクライドに情け容赦なく87発の弾丸が撃ち込まれる「死のダンス」シーン。そして、余韻もなく現れる、THE ENDの文字。この瞬間、アメリカン・ニューシネマは誕生したのでした。ボニーとクライドが1934年に流した血が、33年後、アメリカの映画史のみならず世界の映画史に新しい力を与えたのでした。その力とは、「暴力とセックス」を芸術の領域にまで高める力としての新しい映画の持つ力でした。そして、それは、ファッション業界にも、強烈な影響を与えることになったのでした。



    ブリジット・バルドーのように登場するボニー。

    バルドーのようなボニー。それは後のブロンディのデボラ・ハリーのようでもある。

    この作品は、ヌーヴェルヴァーグの影響下で作られた作品です。

    フェイ・ダナウェイは170cm。ウォーレン・ベイティは188cm。

    実物のボニーは150cm。小柄なイメージを崩さない為に、フェイ・ダナウェイは、ほぼ全編にわたってフラットシューズを履いています。

    ボニーがはじめて拳銃を撃つアイコニック・シーン。

    ボニー・ルック1 覚醒前
    • ベージュのデイワンピース。Vネックライン。フロントボタン。バックも深いVネック、膝下丈、七分袖のジグザグスリーブ
    • ブラウンの小さなパテントハンドバッグ
    • クリーム色のバレエシューズ(実にブリジット・バルドー的)

    くるりとしたヴィダル・サスーン的な60年代風もみあげ。

    この作品の舞台は、1930年代の大恐慌の中西部なのですが、ボニー・パーカーに扮するフェイ・ダナウェイ(1941-)のメイクアップが半端なく本格的です。そして、そのファッションもまた本格的です。この作品の面白い所、それは、アメリカン・ニューシネマでありながら、主人公の女性は、現実味のない豪華な衣装替えを頻繁に行う所にあります。

    まさにバルドーそのものの淫靡な唇のアップから始まるのですが、そのピーチ色のリップの光沢一つとってみても、パリコレ級の出来栄えであり、この「ボニーとクライド」という実在の人物を題材にした映画が、「モード感溢れるカップルを包み込む大恐慌時代」という実に不思議なバランスの上で成り立っていることを感じさせてくれるのです。そんなメイクアップ自体は、基本的にフェイ・ダナウェイ自身が行い、メイクアップ・アーティストのロバート・ジラスが補足しました。



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