フェイ・ダナウェイ

フェイ・ダナウェイ3 『俺たちに明日はない』3(2ページ)

    作品名:俺たちに明日はない Bonnie and Clyde(1967)
    監督:アーサー・ペン
    衣装:セオドア・ヴァン・ランクル
    出演者:フェイ・ダナウェイ/ウォーレン・ベイティ/マイケル・J・ポラード/ジーン・ハックマン



    唐突に表れるキモノ・ガウン




    ボニー・ルック9  キモノ・ルック
    • ペールピンクのキモノ・ガウン




    なぜボニーはモード服で逃走したのか?

    本作は、ジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』から多大なる影響を受けています。

    遂に追い詰められていくボニーとクライド。

    スカートスーツの下には、ガーターストッキング。

    オールホワイトで統一したボニー・ルック。

    ボニー・ルック10  オールホワイト・ルック
    • 白のウールのスカートスーツ
    • 白の深いVラインの入ったカットソー
    • ベージュのガーターストッキング
    • 白のセパレート・パンプス

    止まると魅力的に見えるファッションと動いても魅力的なファッション。それは合皮を例にとるならば、新しすぎでもチープに見え、だからといって乱暴に扱うとすぐに破れます。それは、味を生むものではなく、腐食を生み、それを身に着けていると、「何のためにそれを着ているのか?」という問いかけを身に纏うことができ、果ては「みすぼらしい」の結論にまで達します。

    合皮のジャケットを肩がけするのは、ちょうど、ファスト・ファッションという名の流行に踊らされ、大量生産された布切れに包まれるミイラとでも呼ぶべき「流行に敏感な人」を気取ることと共通します。やがてシーズンも2つ(だいたい半年後)もすぎれば、それは「ファスト・ファッション」しか買えない「貧困」というレシートを貼り付けて歩いているようなスタイルになります。

    ボニーとクライドはなぜ、逃亡者でありながら、機能性の悪いモード服で逃亡したのでしょうか?

    それは1930年代のアウトローに共通しているのですが、いつ捕まっても、いつ死ぬとしても、アウトローの美学を貫いて死にたいという一念からなのです。この感覚こそが、ファッションの真髄とも言えるものなのです。「貧困」の中でもがき苦しんだからこそ、死ぬときに身に纏うものにはこだわっていたいという心持ち。つまるところ、ファッションとは、「安いアイテムを高く見えるように着こなす」にせよ「高いものを誇示するにせよ」つまりは、目指すところは全く同じなのです。



    そして、物語の中にはじめてピンクが投入される。

    警官隊の襲撃から逃れ、瀕死の重傷から復活し、安らぎの日々を過ごす二人。

    しかし、ボニーにもクライドにも、もはや終焉が近づきつつあることは容易に予感できた。

    ボニーとクライドが死に、アメリカン・ニューシネマは誕生した。

    ボニー・ルック11  ピンク・ワンピース・ルック
    • ピンクのビッグカラー・ワンピース、ヘリンボーン
    • 白のブラウス
    • フラットシューズ

    ボニーがピンクのワンピースに身を包んでいる、この瞬間だけ、二人は「ウッドストック」に向かうカップルかのようなフォーク調の雰囲気に包まれています。激しくも熱く燃える二人の焔は、もう消えようとしているのです。60年代後半から70年代前半のアメリカン・ニューシネマにある精神性。それは切腹にも似た、「いかに死ぬか?」の一念なのです。

    さて、アーサー・ペンという監督がどれだけ黒澤明に影響を受けていたかが分かる瞬間が始まろうとしています。映画史上初めて大量出血が発生した瞬間と呼ばれる『椿三十郎』(1962)のラストシーンと、殺戮シーンに使用されたスローモーションが効果的だった『七人の侍』(1954)。その両シーンが、生きたのは、激しい動の前に静が存在したからでした。



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