アラン・ドロン

アラン・ドロン1 『サムライ』(4ページ)

    作品名:サムライ Le Samouraï (1967)
    監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
    衣装:クレジットなし
    出演者:アラン・ドロン/ナタリー・ドロン/カティ・ロシェ



    鏡を見て、身だしなみを整えるサムライの美学。

    フェドーラ帽にトレンチコートを着たサムライ。

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    毎日が死装束。つまりいつ死んでもいいように身だしなみを整える。いいや、死地に向かうときに気持ちを引き締めるためにスタイルを確認する。鏡の前で帽子のつばをまっすぐに直すとき、この男=サムライのスイッチが入るのだ。男の美学。サムライの美学。身だしなみの美学。

    スーツ+コート+フェドーラ帽。勿論ジャージにスニーカーの方が、殺し屋稼業は楽だろう。しかし、男が楽なスタイルに落ち着いた先に残るものは何だろうか?そんなことを考えさせてくれる作品です。アラン・ドロン(1935-)の魅力と同じくらいに魅力的なのは、この主人公の様式美です。それは失われるものに、芸術性を投影する料理文化を持つフランスと日本に相通ずるものがあります。

    私たちは常に快適さを求めて生きているわけではない。儀式の堅さの中に、快適さからは得られない「何か」がある。無心で踊ることだけが生命の躍動ではない。スタイルに忠実に男としての自分の静の動作を磨き上げることもまた生命の躍動なのである。それは女性にとっても同じであるはず。この映画の女性の登場人物も皆そうなのだが、静の所作の持つ美学に包まれています。サムライという言葉ももはやジェンダーレスの時代なのです。



    10分間全く会話なしに進行する〝静〟の物語。

    世界一グレーのスーツが似合う男性=アラン・ドロン。

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    そして、世界一トレンチコートが似合う男。

    伝説のシーン。高架上での殺し屋との決闘シーン。

    私の夢は、カラー作品で白黒映画を撮ることなんだ。

    ジャン=ピエール・メルヴィル

    ノージェンダーという言葉や、草食男子、爽やかな美形青年とは真逆のサムライ。物語が進行して10分間全く会話がない空間でも存在感を示せる男性。こういう男性は『レオン』のような男性誌は読まないでしょう。トレンドに左右されるのではなく、伝統的なものから自分のスタイルを作り上げていく人なのでしょう。

    西洋人が日本人に対して、憧れる最大の要素は、無表情です。媚びない東洋人のスタイルです。しかし、現実はそうではありません。西洋人を前にするとなぜか多くお辞儀してしまう日本人が多いです。もしくは西洋かぶれを前面に出し、大げさなジェスチャーで会話するといった人がほとんどです。こういった時にこそ、サムライの静の美学を出せる男性は本当にカッコよく、これからの媚びない国際派の日本人の在り方なのではないでしょうか?この作品は、本来の、日本人の男性の美学が代弁されている作品です。

    ジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』(1959)に出演したメルヴィル監督は、劇中で「人生最大の野心は?」と聞かれ、「不老不死になって死ぬこと」と答えました。サムライの最後の2日間の物語。メルヴィル・ブルーの世界観。それは不老不死になって死ぬ世界観なのです。




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