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【ディオール】ファーレンハイト(ミシェル・アルメラック/ジャン・ルイ・シュザック)

クリスチャン・ディオール
©DIORBEAUTY
クリスチャン・ディオール
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ファーレンハイト

原名:Fahrenheit
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:ミシェル・アルメラック、ジャン・ルイ・シュザック
発表年:1988年
対象性別:男性
価格:50ml/11,550円、100ml/16,500円
公式ホームページ:ディオール

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ロボットに振りかけると人間の心が生まれるような香り…

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パルファン・クリスチャン・ディオールの社長モーリス・ロジェは、1988年に、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」を聴いた後に考えました。ロボットに振りかけると人間の心が生まれるような香りを創造したいと…。そして、この香りは誕生したのでした(この逸話は果たして本当の話なのでしょうか?)。

1988年に発売された「ファーレンハイト」という名の意味は、温度を示す〝華氏〟のことです。温度の変化により生み出される男性の魅力を演出するアロマティック・フゼアの香りとして、ミシェル・アルメラックとジャン・ルイ・シュザックにより調香されました(当初、ディオールはシュザックの作品と発表していたのですが、実際は若き日のアルメラックが単独で生み出した香りです)。

この時、「ファーレンハイト」の選考から漏れ、後に歴史的な名香となったのが、ジャン=クロード・エレナによるブルガリの「オ パフメ オーテヴェール」でした。ちなみに2010年くらい以降の「ファーレンハイト」は、ディオールの初代属調香師フランソワ・ドゥマシーにより再調香されたものです。

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合成香料〝イソEスーパー〟をスターにした香り。

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父(ミシェル)が1972年か73年に調香師見習いとしてトレーニングを受けていた時のことです。先生が、「良い香りの生み出し方のレッスンその一として、まずはジェフリー・ビーンの「グレイフランネル」のコピーを作って下さい」という課題を出したのでした。

まさにその子供が「ファーレンハイト」なのです。そして、ピエール・ブルドンが生み出したダビドフの「クールウォーター」は兄弟と言えます。さらにこの香りは彼自身がクリードで生み出した「グリーン アイリッシュ ツイード」(1985)のクローンなのです。

ベンジャミン・アルメラック

「ファーレンハイト」の香りの変化は、一人の男性が磨き上げられてゆく年代記のようです。それは初々しい青さからはじまり、甘さを経て、官能的な成熟した香りへの変化してゆきます。その香り立ちのドラマティックな変化ゆえ、大人の男性の魅力を知る真の女性の心も捕らえて離さない〝至宝のメンズ・フレグランス〟の地位を獲得しています。

そして、この香り立ちの変化を生み出す〝秘薬〟の役割を果たしたのが、イソEスーパーという現在ではほとんどの香りに入るようになった合成香料の存在です。この香料が当時としては破格の25%の濃度のものが使用されたのでした。

イソEスーパーとは、1973年にIFFが、ヴァイオレットの香りを表現する化合物を探していたときに、偶然発見した合成香料です。透明感のある軽やかなウッディを演出してくれる香料です。

「ファーレンハイト」の商業的成功により、イソEスーパーは一気に人気の香料となりました。セルジュ・ルタンスの「フェミニテデュボワ」(1992)や、エルメスの「テール ドゥ エルメス」(2006)でも重要な役割を果たしています。

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男の『プワゾン』とも言える〝灼熱の香り〟

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ここ数年、メンズフレグランス市場は、サイプレスやシダのエキス(ラベンダー、ローズマリー、セージなどのアロマティックノートのカクテルで強化された)で溢れかえっています。

「ファーレンハイト」はどちらかというとフローラルですが、ジャスミンのような伝統的な女性用フローラルではなく、ワイルドでナチュラルなフローラルであるハニーサックルが主役です。

私が市場調査したところ、地中海の雰囲気を出す似たような香りがたくさん存在することがわかりました。だから、全く違う香りを作ってみようと考えたのでした。

モーリス・ロジェ

ディオールが男性のために生み出した「プワゾン」とも言えるこの香りは、フレッシュなシチリア産マンダリンの果肉を苛むように、マスキュリンなウッドとレザーの影が忍び寄り、更にその背後にかつてないヴァイオレットリーフの襲来の気配を感じるようにしてはじまります。

そんな荒波の中で揉まれていくマンダリンが、最後に何者に変わっていくのかということを、肌の上で鳥肌を立てながら楽しむことが出来る〝男の魂を燃え上がらせてくれる香り〟のはじまりです。

すぐに、ほとんどの男性のハートに火をつけてしまう燃焼するガソリン(ヴァイオレットリーフとスパイシーなナツメグ)の臭いに包まれていきます。使い込んだレザーグローブをはめてレ-シングカーに乗り、ル・マンを走るスティーブ・マックイーンのような、野生の馬も、トライアンフも、レーシングカーも乗りこなすそんな男性の凛々しい横顔を覗かせてくれます。

明らかに美容と踊りに興味のある男性とは真逆の昭和の男たちの香りのようです。もうひとりこの香りに相応しい男性の名を上げるなら、『ウエスタン』『さらば友よ』の頃のチャールズ・ブロンソンでしょうか。

レザーとガソリンの奥から漂う、優しくも青々しい香りが、強面の男性の心がじつは慈愛に満ちていることをそれとなく教えてくれるようです。それはフレッシュなシダー(イソEスーパー)に、みずみずしくもグリーンなヴァイオレットリーフが絡み合う、キューカンバーのようなフレッシュフゼアです。

このガソリンとレザーの奥に香るフレッシュフゼアこそが「ファーレンハイト」の魅力なのです。だんだんと、鼻が慣れ、どうやらラベンダー畑のど真ん中に立っていることを知るのです。

やがて、シダーにガソリンが浸透し、燃え上がり、キューカンバーは減退し、スモーキーなレザーに包み込まれてゆく中で、ハニーサックルとジャスミンを中心として、スズラン、サンザシ、カーネーションといった花々が開花してゆくのです。男性の華が開いてゆく瞬間です。花ではなく華です。

それはまるで灼熱と氷点下の間を彷徨う中で、力強さだけでなく柔軟性も兼ね備えるようになった、磨きこまれた男性の魅力を感じさせる、五感を研ぎ澄ますようにしてはじまり、最後には五感に安らぎを与えるように落ち着いていく香りです。

そして、大鷲のように翼を広げるレザーに見守られながら、クリーミーなサンダルウッド、バルサミックなトンカビーンとアンバーが溶け込み、アーシィーなパチョリ/ベチバーとムスクに掻き混ぜられながら、孤高のシダーの仄かに甘い余韻に包まれていくのです。

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「ファーレンハイト」は、〝香りのポップアート〟です。

『ファーレンハイト』ジェームス・ローゼンクイスト、1982年。

『Brighter than the Sun』ジェームス・ローゼンクイスト、1961年。

あまり知られていないことですが、この香りの名は、ポップ・アーティストのジェームス・ローゼンクイストが1982年に描いたポップアートから採られています。その絵と「Brighter than the Sun」の絵をコンセプトに、モーリス・ロジェのこの香り探しがはじまり、各香料会社の調香師たちの間でコンペティションが行われ、シュザックとアルメラックが作った作品が選ばれたのでした。

情熱的なグラデーションがとても美しいボトルデザインは、コンスタンティン・ブランクーシの作品からインスパイアされたものであり、ローゼンクイストがボトルのグラデーションの色合いを決めました。

1988年のコマーシャル・フィルムはリドリー・スコットが作り、2004年のものはデヴィッド・リンチによるものでした。

ヴァイオレットとウッドの組み合わせという〝スミレと木の共犯関係〟を生み出した革命的なこの香りは、1988年10月から12月の僅か3ヶ月間でヨーロッパで140万ボトル売れました(ちなみに「プワゾン」は最初の3ヶ月間で120万ボトル売れました)。世界で最も偽造された香りのひとつとも言われています。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「かつては「ベラミ」風のすばらしいシトラスレザーに、あらゆる香料の中で最もガスを含んで発砲し、広がりやすいバイオレットリーフの香調が重ねられていた。」

「今ではアセチレンエステルが厳しく制限されているため(三重結合はみごとな香りだが、化学反応を起こすのだ)、残っているのはベラミのようなものだ。ただし、ベラミの香りは滅茶苦茶にされてしまっている。かつてのほうが現在のものよりましといえる。どちらにしろ、褒められたものではない。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ファーレンハイト
原名:Fahrenheit
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:ミシェル・アルメラック、ジャン・ルイ・シュザック
発表年:1988年
対象性別:男性
価格:50ml/11,550円、100ml/16,500円
公式ホームページ:ディオール


トップノート:ラベンダー、シシリアン・マンダリン、サンザシ、ナツメグフラワー、シダー、ベルガモット、カモミール、レモン
ミドルノート:ナツメグ、ハニーサックル、カーネーション、サンダルウッド、ヴァイオレット・リーフ、ジャスミン、スズラン、シダー
ラストノート:レザー、トンカビーン、アンバー、パチョリ、ムスク、ベチバー

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