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【フレデリック マル】コロン ビガラード(ジャン=クロード・エレナ)

フレデリック・マル
フレデリック・マル
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コロン ビガラード

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Cologne Bigarade
種類:オーデコロン
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2001年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/29,150円
販売代理店ホームページ:高島屋オンライン

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オーデコロンの概念を覆した「意欲作」

私はこの香りは、人々に必ず愛される香りだと確信していた。しかし、今日では人々は薄い香りを求めていなかった。

フレデリック・マル(この香水はそれほど売れなかった)

2000年にフレデリック・マルが創業した時、ジャン=クロード・エレナは、「アンジェリーク スーラ プリュイ」を調香しました。そして、マルに、毎年〝渾身の一作品〟を発表していきたいという提案をしました。かくして、翌2001年にエレナ第二弾として「コロン ビガラード」が生み出されました。

エレナはこの作品から、以後、エルメス時代に至るまで長い付き合いになる、ラボラトリー・モニーク・レミー(2000年よりIFF社の傘下に入ったグラース最高の天然香料会社)との関係をスタートしました。

「ビガラード」とは「ビターオレンジ」のことです。その名の通り〝ビターオレンジ・コロン〟。この作品は、エレナが長年夢にまで抱いていた〝ピリッとして、ビターフレッシュなビターオレンジそのもののコロン〟を創造したいという想いを徹底的に追及した作品でした(マルはエレナのビターオレンジにかける強い想いをカフェ・ド・フロールで聞く)。

そのためラボラトリー・モニーク・レミーに、ビターオレンジを分子蒸留するにおいて、テレビン油のような匂いを取り除き、澱んだイエローカラーを無色透明にし、光毒性の成分を排除するという3点の徹底を要求したのでした。

この要求の実現のため、最上級の品質のビターオレンジが大量に必要になりました(その結果、この香りのビターオレンジの割合は55%という大容量となりました)。

エレナが調香の段階でかなり苦労したこの香りが完成するまで、マルは試作品を4回しか嗅がせてもらうことが出来ませんでした。でありながらも、1回ごとに出していくマルの感想と提案をエレナは見事に捉え、自分自身の目指す理想の香りへと到達させたのでした。

ちなみにこの香りは、たった20の香料(ノートを含む)で作られた香りです(「ロー ディヴェール」も20で、ブルガリの「オ パフメ オーテヴェール」は19です)。

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〝オレンジの苦味〟に、感情を語らせた香り

私はビターが好きです。ビターは知的です。なぜなら考えることを促してくれるからです。私はビターな香り、知的な香りを好みます。しかし、みんなが今欲しがっているのは砂糖のように甘い香りです。でもそれは知的ではありません。

ジャン=クロード・エレナ

たとえもぎたてのオレンジを目の前で絞ったとしても、感じることが出来ないような、理想のビターオレンジの香りからこの香りははじまります。果汁をたっぷり感じさせる生のオレンジの香りです。芸術的な甘さと苦さと新緑のコントラストがそこにはあります。

この香りには、クリーン及びシャープネスといった従来のオーデコロンの要素が一切存在しないことに驚かされます(ネロリ、ラベンダーといった香料は一切使用されていない)。

最も美しい景色であろうとも、人間の感動は3分で薄れていくように、香りにおいても、最も魅力的な瞬間は3分で喪失してゆきます。桜を見て感動し、桜並木に囲まれているうちに、感動は薄れ、その数日後、散った桜の木を見て、喪失感を感じるように、この香りは、感動から喪失感への感情の流れをものの3分で見事に表現してくれる、自然が生み出す嗅覚の絶頂感を投影したトップノートではじまります。

さて、〝ビターオレンジ・コロン〟は、以下の三つの創造の精神により生み出されています。

  1. (自然な透明感を与える)ローズとカルダモンによりビターオレンジに命を与える。
  2. シダーウッドにより、果樹園の温かい木々の感触と、心地良い風の中で揺れるオレンジの快楽主義を表現する。
  3. 干し草と草により、もぎたての感触を生み出す。

ビターオレンジの新鮮な感触の後に、独特な甘さを運ぶコリアンダーと表裏一体になり潜むクミンがこの香りの真骨頂です。このクミンによる臭みの按配が香りに、失望と切望を同時に与える魔法のスパイスの役割を果たしています(エレナの先生であり友人であるエドモン・ルドニツカの「オー ドゥ エルメス」の影響が強い)。

この香りから、エレナの柑橘系に対するアプローチは、苦味とスパイスを強調し、新鮮さと甘みに感情を語らせることに成功した、新たなる高みに到達するのでした。ちなみにこの香りは、2009年のエルメスにおける「オー ドランジュ ヴェルト」とも比較されます。

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実はクリスチャン・ルブタンのために作られた香り

ルブタンとフレデリック・マルの付き合いはとても長い。それはマルの1990年の結婚式に新婦のシューズをデザインしたことからはじまります。

フレデリック・マルとルブタン。2019年。

私は今ではほとんど「コロン ビガラード」しか身に纏いません。フレデリック・マルとは長年家族ぐるみの付き合いをしてきました。彼が店を出すとき、私の店の道路を挟んだ向かい側に出すように言ったんです。彼は気が進まなかったようです。

そして、あるとき、彼は私に香水は何をつけているかを聞き、私はコロンをつけていると答えました。すると彼は「コロンを作ってみるよ、君が何を考えているか教えて」と言ってきたんです。そして、出来たのが「コロン ビガラード」なのです。

私には他のマルの香りはダメです。「ロー ディヴェール」は私の肌ではメタリックになります。そして、「ベチベル エクストラオーディネール」の香りは本当に大好きなのですが、私はベチバー・アレルギーなのです。

クリスチャン・ルブタン

クリスチャン・ルブタンは、コロンが好きで、コロンしか身に纏わない人です。彼が若い頃(10歳くらいから)から愛用しているのは4711の「オーデコロン」とキャロンの「プール アン オム」でした。

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香水データ

香水名:コロン ビガラード
原名:Cologne Bigarade
種類:オーデコロン
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2001年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/29,150円
販売代理店ホームページ:高島屋オンライン


トップノート:ビター・オレンジ
ミドルノート:ローズ、ピンクペッパー、カルダモン、クミン
ラストノート:シダーウッド、草、干し草