ボア ファリヌ
原名:Bois Farine
種類:オード・トワレ
ブランド:ラルチザン パフューム
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2003年
対象性別:ユニセックス
価格:日本販売終了
エレナのもうひとつの『庭園のフレグランス』
「原料を探すために旅をしているのですか?」という質問をよく受けます。私は「いいえ、香水の材料は提供され、私はそれが楽しいから旅行しているのです」と答えます。そして、それが真実なのです。しかし、私はいつも植物園を訪れ、インスピレーションを得ています。
ジャン=クロード・エレナ
2003年からスタートしたラルチザン パフュームの香りの旅シリーズ「エキゾチック ボヤージュ(レ・ヴォヤージュ・エグゾティキ)」の記念すべき第一弾「ボア ファリヌ」。
ラルチザンに最も縁のある調香師ジャン=クロード・エレナが、ラルチザンから電話で「旅の香りを出す予定なのですが、一作目を作ってくれないか?」と聞かれ、その1年前にインド洋の風光明媚な火山島・仏領<レユニオン島>の森を訪れた時に、見つけた不思議な白い木から得たインスピレーションを生かした香りです。
僅か10の成分で作られた、エレナ史上、もっとも短いフォーミュラで生み出された香りです。ちなみにエレナはこの香りと同じ年にエルメスの「地中海の庭」を作り、翌年エルメスの専属調香師になりました。
<森の小麦粉>という奇妙な名は、カラフルな木々が集まる魔法使いが出てきそうな森の中で、エレナが注目した白い木に咲く赤い花が、うっとりするような小麦粉の匂いがしたところから来ています(エレナは小麦粉を1Kg購入し研究に励んだのでした)。
この白い木は、レユニオン島だけに生息するルイジア コルダタという芳香樹です。そして、それは絶滅危惧種に指定されています。
私の頭の中には、女性が小麦粉の生地をこねている姿が浮かんでいました。生地の香りには深いエロティシズムがあるように思います。
ジャン=クロード・エレナ
秘境の島から香り立つ、パン生地の匂いを求めて…
「森のパウダー(フランス語では「小麦粉の森」)」をつくったときは、レユニオン島のルイジア・コルダタの小麦粉の匂いのする花々をテーマにした。「フランシーヌ」の小麦粉の箱の匂いを嗅いでつかんだ小麦粉のアコールを、ふたたび取り上げた。森というアイデアは、「緑の森」「臭い森」「黄色の森」など、住民が森の名前で場所に名をつけるこの島への愛情から生まれた。あとは香水のかたちを見つけるだけだった。
ジャン=クロード・エレナ
人喰いサメの楽園でもあるレユニオン島だけに存在する芳香樹ルイジア コルダタの花の香りが、最初から広がっていくようにしてこの香りははじまります。
素焼きアーモンドと煎ったヘーゼルナッツのふんわりうっとりするようなパウダリー感に心は奪われてゆきます。どこかピーナッツバターのような触感もあります。最初の瞬間から唯一無二の香りだと感じさせる個性がそこにはあります。
それは実際にエレナが最初にこの樹に出会ったときに、あえて写真を撮らずに、水彩画を描いたように、パン生地をこねているような淡さを肌の上に投影してくれるのです。
すぐに苦いウイキョウとクミン、甘いアンブレットシードがパウダリーなアイリスに溶け合い、小麦粉(=焼き立てのパンではなく)のような温かさに包まれてゆきます。そして、ホワイトシダーとガイアックウッド、サンダルウッド、ベチバーのクリーミーさによって、神秘的な森の鼓動を全身で感じるのです。
全体的に、浮き上がるような香料を散りばめて作られたこの香りは、まるでレユニオン島自体が、空中浮遊するかのような錯覚を覚えさせるほどに、独特な開放感を与えてくれます。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「この香水は偶然の発見から生まれたのではないだろうか。香料のヘリオトロピンが、ゲランの「アプレロンデ」にあるようなシダーの香調やかすかなハーブの香りと合わせられると、驚くことに粉っぽい、木の実を練り込んだような焼きたてパンの香りになる。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ボア ファリヌ
原名:Bois Farine
種類:オード・トワレ
ブランド:ラルチザン パフューム
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2003年
対象性別:ユニセックス
価格:日本販売終了
トップノート:フェンネルシード(ウイキョウ)
ミドルノート:アイリス、アンブレットシード
ラストノート:ホワイトシダー、ガイアックウッド、サンダルウッド、ベンゾイン