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美人香水100選

山口小夜子/美人香水100選 第一夜

美人香水100選
©Shiseido
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山口小夜子/美人香水100選

Sayoko Yamaguchi 1949年9月19日に横浜で生まれる。1972年にパリコレ(パリ・ファッションウィーク)のイヴ・サンローランやシャネルのランウェイにて、ステレオタイプなファッションモデル像を突き破る、日本人形のような〝黒髪のおかっぱボブ〟と〝アーモンド・アイズ=切れ長の目〟が生み出すエキゾチック・ビューティにより、一瞬にして世界中の人々を魅了する。

以後70年代パリ及びニューヨークコレクションのランウェイを席巻し、1977年には、雑誌『ニューズウィーク』の「世界のトップモデル6人」に選ばれる。一方で、1973年から資生堂の専属モデルとして、コスメとフレグランスを芸術の領域へと導いてゆく橋渡し的な役割を果たしていく。

いまだに、日本人女性の永遠の憧れであり、『美の基準が凡庸化』した時に、私たちの感性に警告の鐘を鳴らしてくれる日本人女性にとって〝永遠に不滅の存在〟です。

私がパリコレに出ていた時代は、すべてのジャンルが革新的な方向に向かっていた時代だと思うんです。中でも当時のファッションは、音楽、アート、舞台など、すべての要素が溶け込んでいて、今よりずっと世の中をリードする力が大きかった。特に当時のパリコレクションの盛り上がりは、本当に大変なものでした。

当時はアンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、ミック・ジャガー、デヴィッド・ボウイ・・・世界中のアーティストがパリに集まっていた頃。東京やニューヨークもそれぞれ面白かったけれど、やはりパリが70年代という時代の一部を作っていた気がします。そしてファッションそのものも、その影響力や〝在り方〟が今とは違っていた。前に向かって進もうというエネルギーの強さは、あの時代独特のものですね。

山口小夜子

小夜子様の美人香水

第一章 ホワイト ストレージ(トバリ)
第二章 すずろ(資生堂)
第三章 ZEN 禅(資生堂)
第四章 (資生堂)
第五章 沙棗(SASO)(資生堂)

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日本一のフレグランス・スペシャリストに聞く小夜子様の香り

©Shiseido

私にとってのエロティシズムとは、美と醜が一緒になっていること。正反対のこと、かな。女らしい人が突然男っぽくなったり、美しい人が突然醜くなったり、醜い人が突然美しく見えたりといったその一瞬。

山口小夜子

香水販売の世界において、ただ効率よく販売するのではなく、〝香りのアドバイザー〟として、これからの新しい香水販売の在り方を提案し、日本一のフレグランス・スペシャリストという呼び声も高いフレグランス・スペシャリスト様に、「もし山口小夜子様が個人的に尋ねてこられ、〝私の香り探し〟をご一緒にお願いします」と仰られたら何をお勧めしますか?とお尋ねしました。

以下、スペシャリスト様のお言葉となります。

本当に、カイエデモード様と最初に出会ったあの日に、話題に上がったのが、山口小夜子さんでしたよね。あれはコローニュの三作品のテスターが入ってきた頃でしたでしょうか?まだ心斎橋にルイ・ヴィトンの路面店(かつてこの方は心斎橋店におられました)がある時のことでしたよね。

つまり、私にとって本当に憧れの女性。そして、私が学生時代にラスベガスで見たシルク・ドゥ・ソレイユの『O』の世界から抜け出てきたような言葉では言い表せない〝雰囲気を持った女性〟それが山口小夜子さんなのです。

そんな彼女におすすめしたい香りというお題は、とても畏れ多く、私には『これです!』と断言できないのですが、何度も何度も考えてみて、2つのイメージが浮かび上がりました。

©Shiseido

私が考える女性にとってのエロティシズムとは、隠そうとすることかな。ひとが化粧をするのを見てると、エロティックだなと思ったりします。

山口小夜子

一つは今も資生堂から発売されている「すずろ」のような日本の古典文学を香りにしたような唯一無二の日本的な香りです。漂う静けさや〝佇まい〟、香りを〝気配〟として纏うような香水が小夜子さんのイメージだと思います。

そしてもう一つは、陰影です。〝光と影〟のような二面性ではなく、光と影の間にあるその輪郭。それが時にぼんやりとしたりくっきりとした物になったり、形を変幻自在に変えるもの。姿や形がない〝気配〟のようなものなのに、人の記憶に残り、語り継がれていくようなそんな香りこそが小夜子さんに相応しい香水なのだと思います。

だからこそ、実際に香りをチョイスするとなると一つ目に挙げた中だとやはり「すずろ」です。ゲランの「ミツコ」はあまりに有名すぎて、小夜子さん的ではないと感じます。つまり、ひっそりとした、でも凛とした香りの方がイメージに合う気がします。

そして、二つ目の小夜子さんのイメージを香りにすると、「アプレロンデ」のような雨上がりの後のほのかに香り立つ空気感のような香りが相応しいと思います。

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山口小夜子様におすすめしたいルイ・ヴィトンの香り

あ、私、演じてるって感じじゃないんです。ファッションショーでも、撮影でも、コマーシャルでも、なにかこう、自分が憧れ続けてゆくものに近づいてゆこうとする作業なのです。だから、憧れるものがうまく心にイメージできないと、ショーのときでも足が震えてしまう。ステージに出ても、すぐに引き返して来ちゃうの。(笑)

山口小夜子

さすがの彼女であっても、山口小夜子様におすすめする香りを選ぶことは苦心されるようですので、質問を変えてみました。「では、小夜子様がルイ・ヴィトンのフレグランス・コーナーにお越しになられたとしたなら、何をおすすめしますか?」と。

以下、再びスペシャリスト様のお言葉です。

あくまでファンタジーとして、私が小夜子さんにご紹介したいルイ・ヴィトンの香りを提案するならば、私が大好きな小夜子さんの資生堂時代の二つのコマーシャルからイメージした香りをお勧めしたいと思います。

©Shiseido

まずこの「資生堂ベネフィーク」のコマーシャルです。この映像が生み出す世界観から感じるのは、和のお稽古事や武道の精神が、〝礼に始まり礼に終わる〟ことを小夜子さんが、様式美をもって伝えてくれているところにあります。

このコマーシャルの中のおじぎは「真・行・草」のうち最も丁寧な「真」のお辞儀です。小夜子さんの色々なコマーシャルを見ていて感じるのは、この方は言葉を必要としない世界に生きておられる方なのではと感じさせられる事です。そして、それは〝香水の世界〟にも共通する部分なのです。

そんなずっと伏目がちだった小夜子さんが最後に私を見つめる瞬間、同性であるにも関わらずその不思議な色気に心が持っていかれるような気持ちになり、すべては真っ白に消えてゆくのです。

この圧倒的な〝和の様式美〟に相応しいルイ・ヴィトンの香りとしておすすめするのが「マティエール ノワール」です。その理由は「マティエール ノワール」から私は〝翳〟を感じるからです。

ただ、それだけですと「オンブレ ノマド」や「ニュイ ドゥ フ」でも良いんじゃないか?ということになるのでしょうが、この二つに無くて「マティエール ノワール」にあるもの。それは「品のある佇まい」だと思っています。

「マティエール ノワール」を自分に吹きかけたとき、私の中で〝水墨画〟が描かれていくように感じる瞬間があります。それは『水墨画で描かれる白い花』。まるで小夜子さんが持っていらっしゃる〝儚さ〟と〝静けさ〟に共通する、堂々として凛とされた印象を与えてくれるようです。だからこそ、このコマーシャルの小夜子様に相応しい香りだと思います。

そしてもうひとつの「資生堂ベネフィーク」のコマーシャルを見ていて感じるのは、先程のコマーシャルとは対極に位置する小夜子さんの、少女のようなあどけなさを感じます。それは横溝正史の『獄門島』の三姉妹のような、〝物の怪〟のような妖しい雰囲気もあります。

それでいて、とても可愛らしいのです。そんな小夜子さんに相応しいルイ・ヴィトンの香りとしておすすめしたいのが「アポジェ」です。

小夜子さんの白い肌と、コマーシャルに意図的に散りばめられた白、そして、〝微笑み〟が「アポジェ」の静けさと清らかさが同居するイメージに私の中で結びつきました。