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【資生堂】ZEN(ミシェル・アルメラック)

資生堂
©Shiseido
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ZEN

原名:Zen
種類:オード・パルファム
ブランド:資生堂
調香師:ミシェル・アルメラック、マイケル・フォスター
発表年:2007年
対象性別:女性
価格:30ml/5,500円、50ml/8,250円
公式ホームページ:資生堂

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1964年、東京オリンピックの年に発売された『ZEN』

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1868年の明治維新により、日本は200年以上続いた鎖国の呪縛から完全に開放され、文明開化が進んでゆきました。そんな中、1872年に福原有信氏により「資生堂薬局」が創業され、資生堂の歴史ははじまりました。

しかし、日清戦争・日露戦争・韓国併合・第一次世界大戦などを経て、日本は帝国主義化し、1940年の日独伊三国同盟により、第二次世界大戦の波に飲み込まれてゆきます。そして、1945年に敗戦を経験することになるのでした。

そんな焼け野原から見事に蘇り、東京五輪を迎えた1964年にオーデコロン「ZEN(禅)」は発売されました。日本国内において欧米の美しさに対する憧れがピークに達していたこの頃、資生堂は、アメリカとヨーロッパに向けて、巧妙に考えを逆転させ、東洋に対する深い関心を見事に捉えたこの香りを、資生堂としてはじめて世界に向けて発売する香水としてローンチしました。

この香りの開発にあたり資生堂は、〝日本文化は日本人の手によって〟という狭い価値観から脱却するため、海外の一流調香師による日本のイメージを香りにしようと考えました。そして、1953年にエスティローダーの最初の香り「ユースデュー」を調香したIFFのジョセフィン・カタパノに調香を依頼したのでした。ちなみに「ZEN」の二年後の1966年に、彼女は歴史的名香ギ・ラロッシュの「フィジー」を発表することになります。

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そして2007年、『第三のZEN』が世界に解き放たれる。

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翌1965年資生堂は、ニューヨークに資生堂コスメティックス・オブ・アメリカを設立し、福原義春氏(セルジュ・ルタンスを生み出した男)が社長に就任し、アメリカ市場開拓に乗り出したのでした。一方、日本航空の機内販売品として「ZEN」は取り上げられたこともあり、欧米人の間に徐々に浸透するようになったのでした。

そして、1973年に、日本人形のような山口小夜子様と専属モデル契約(1986年まで)を結ぶことにより、「ZEN」は彼女のイメージと共に、「禅」として日本に逆輸入されるようになったのでした(1982年には「Spirit of ZEN」というフランカーも発売されています)。ちなみに現在の「禅」は、1986年に、欧米の香りの流れに合うように改良されたものです。

2000年に発売された「禅」©Shiseido

あたらしい「禅」の誕生は、2000年にナタリー・ローソンにより再調香され(白ボトルになる)、そして、2007年にミシェル・アルメラックマイケル・フォスターにより、さらにあたらしい「ZEN」が生み出されたのでした。

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この香りを身にまとう女性と対面すると、思わず背筋がすっと伸びる。

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2007年秋に欧米で発売され、発売後1年で、工場出荷130万個を突破する大ヒットとなり、2010年11月1日に逆上陸した「ZEN」は、〝瞑想から行動へ〟というコンセプトそのままに、スパークリングするパイナップルとグレープフルーツ、ベルガモット、オレンジのフレッシュな甘さが、酸味の効いたパチョリとブレンドされ、煌くシトラスシャワーのように全身に降り注ぐようにしてはじまります。

〝禅〟がイメージさせる〝静寂〟〝侘び寂び〟〝孤高〟の先にある、〝高揚感〟〝華やぐ心〟〝無限の歓喜〟に着目したというその精神が伝わるように、すぐに肌を透かして魂に到達するような甘やかなブルーローズをはじめとする鮮やかな花々(爽やかなフリージアやフェミニンなヴァイオレットなど)が、スパイスとグリーンとウッディを溶け合わせながら温かく官能的に広がってゆきます。

このブルーローズとは、1980年代に作られた今は存在しない幻の〝青薔薇〟の香りです。資生堂により独自に開発されたものであり、他のローズと比べて、フルーティな香りがします。

そしてパイナップル×オレンジと結びついたレッドアップルが、(清々しくも上品にふんわり甘い)ロータスと(スパイシーで温かみのある甘さが特徴の)チャイニーズローズと遭遇するのです。

この三つがひとつになる瞬間がとても美しく、開花する花々と一緒に、心と身体を開放してくれるようです。

やがて、『静から動に移ろう禅の世界』がインセンスとムスクの風に乗って、全身を捉えた瞬間、パチョリ(水蒸気で抽出したロベルテ社のパチョリ)を中心にシダー、アンバー、パインといった香りが心の隙間にすーっと注ぎ込まれてゆくのです。

〝優しいココマド、エレガントなココマド〟として、シャネルの「ココ マドモアゼル」と「チャンス」ともよく比較される香りです。

ボトルデザインは、資生堂の菊地泰輔氏により、茶室をイメージして作られました。ヴィジュアル・イメージは、ジャン=ポール・グードと資生堂のデザイナーのコラボレーションにより生み出されました。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「オリジナルのZENは、完璧なウッディローズだった。2番目のZENは、シャープなグリーンフローラルだった。そしていちばん最近のものは、鮮やかでモダンなスタイルの、ラクトン調のフルーティフローラルがあやふやなウッディアンバーを基調にして香る。グッチの「ラッシュ」を柔らかくしたバリエーション。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ZEN
原名:Zen
種類:オード・パルファム
ブランド:資生堂
調香師:ミシェル・アルメラック
発表年:2007年
対象性別:女性
価格:30ml/5,500円、50ml/8,250円
公式ホームページ:資生堂


トップノート:グレープフルーツ、パイナップル、ベルガモット、オレンジ、ローズ
ミドルノート:フリージア、レッドアップル、ロータス、ヒヤシンス、ガーデニア、スズラン、ヴァイオレット、オリス
ラストノート:パチョリ、シダー、ムスク、アンバー、インセンス、パイン