ボンドガール後の生き方のカッコよさ。
私は過去に生きる女性ではありません。
浜美枝
1970年代に東宝との専属契約を終え、フリーになった浜美枝様は、プライベート・ライフを重要し、テレビとラジオの仕事を中心にシフト・チャンジしていきます。
彼女は、本来女優業に対して興味が強かったわけではありませんでした。幼少期に、小さなボール紙工場を経営していた両親が、第二次世界大戦の東京大空襲で焼け出され、貧しい環境の中、中学卒業後16歳でバスガールになった美枝様。
「私はずっと演技することに対して楽しいと感じたことがありませんでした」という彼女は、東宝専属の女優になった後も、休みの日には、バックパックを抱えて、アジアやヨーロッパ諸国を旅する日々に明け暮れていました。
そして、そんな時に、本作の監督のルイス・ギルバートが、『キングコング対ゴジラ』(1962)を見て、彼女の起用を決めたのでした。
キッシー鈴木・ルック3
浴衣
- 白地に竹模様の浴衣
闇の中月の光で照らし出される竹取姫のような美枝様の可憐な美しさが、ジェームズ・ボンドの存在感を圧倒しています。
キッシー鈴木・ルック4
ビキニ
- 白ビキニ
和装からはじまり、最後にはウルスラ・アンドレスばりの白のビキニ姿で登場する美枝様のスタイルのよさ。
ここで不思議な感覚に捕らわれます。ビキニというもののはじまりの歴史が、面積の縮小の歴史へとつながり、それが、21世紀も少し進み、ビキニの方向性を見失った現在に、改めてこのシルエットを見てみると、ビキニというスタイルが、当の昔に終着駅にたどり着いていた事を理解させてくれます。
キッシー鈴木・ルック5
羽織
- ストライプの羽織
現代女性にとってのスタイルアイコン 浜美枝様。
たとえ美枝様の英語力に問題があり、若林映子様とのキャラクター・チェンジをした事実があろうとも、それは22歳の女性にとっての、一つの偉大なる経験であり、浜美枝という存在の価値を高めこそすれ、下げる要因にはなりえません。
現在において、最もファッション業界に影響を与えている映画とも言われているボンドムービー。それぞれの時代のそれぞれのボンドムービーが様々な視点により再評価を受けています。
そんな中、唯一無二の日本人ボンドガールである浜美枝様と若林映子様。この二人が日本の高度経済成長期において、世界中に対して見せた日本人女性のイメージは、私たち日本人女性が再認識すべき多くの〝失われつつある日本の美〟を兼ね備えています。
作品データ
作品名:007は二度死ぬ You Only Live Twice(1967)
監督:ルイス・ギルバート
衣装:アイリーン・サリバン
出演者:ショーン・コネリー/若林映子/浜美枝/丹波哲郎/カリン・ドール/ドナルド・プレザンス
- 【007は二度死ぬ】ジェームズ・ボンド日本上陸
- 『007は二度死ぬ』Vol.1|日本に来たジェームズ・ボンド=ショーン・コネリー
- 『007は二度死ぬ』Vol.2|ショーン・コネリーとトヨタと姫路城
- 『007は二度死ぬ』Vol.3|丹波哲郎とドナルド・プレザンス
- 『007は二度死ぬ』Vol.4|若林映子・日本人ボンドガール第一号
- 『007は二度死ぬ』Vol.5|若林映子とショーン・コネリー
- 『007は二度死ぬ』Vol.6|若林映子と「60年代のスウィンギング・ニッポン」
- 『007は二度死ぬ』Vol.7|浜美枝・もう一人の日本人ボンドガール第一号
- 『007は二度死ぬ』Vol.8|竹取姫のような浜美枝様
- 『007は二度死ぬ』Vol.9|カリン・ドール、第三のボンドガール
- 『007は二度死ぬ』Vol.10|ナンシー・シナトラの神曲