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【ル ラボ】ムスク25 ロスアンジェルス(フランク・フォルクル)

ルラボ
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ムスク25 ロスアンジェルス

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Musk 25
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:フランク・フォルクル
発表年:2008年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/1,850円、15ml/20,900円、50ml/45,100円、100ml/69,850円
公式ホームページ:ルラボ

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世界中の汚れた顔の天使たちに捧げられた香り

©LE LABO

ルラボが出店している都市ごとの限定の香り「シティ エクスクルーシブ コレクション」。その中のひとつであるロサンゼルス限定の香り「ムスク25」は、2008年に発売されました。「サンタル33」を後に生み出すフランク・フォルクルにより調香されました。

彼はISIPCAでエドモン・ルドニツカから学び、その後、モーリス・ルーセルの下で学んでいます。ちなみにモーリスは、2000年にフレデリック・マルでアニマリック寄りな「ムスク ラバジュール」を調香しています。さらに、フランクはジャン=クロード・エレナのもとでも少し学んでいます。

Los Angelesとは、スペイン語で〝The Angels(天使たち)〟の意味です。スキッド・ロウというホームレスの街すら存在するほどにホームレスの数が全米最大であり、サウス・ロサンゼルスというギャングに支配された荒廃した地区と、ビバリーヒルズやウエストハリウッドなどの大富豪が住む地区に分かれている世界でも有数の貧富の差が凄いこの街をムスクによって表現しました。

世界中の汚れた顔の天使達に捧げられた香り(または綺麗な顔の悪魔の香り、もしくは男性女性を超えた究極の存在を生み出す香り)。天国へと導く真っ白に燃え尽きるようなアルデハイドに絡み合うムスクの中心にあるのは悪魔のような獣性を呼び覚ます白き蒼きアニマルなのです。

人々にすっかり誤解を植え付けてしまったムスク神話=洗い立てのシャツのような香りをはっきりと否定することなく、ムスク=麝香の本来の意味である、雄のジャコウジカの腹部にある香嚢(ジャコウ腺)から得られる分泌物のアニマリックな匂いをちらつかせる〝サブリミナル・ムスク〟の香り。

そして、そこには確かにバニラのような甘さとオゾンノートの新鮮さも同居します。25の香料で作られたこの香りは、濃度も25%です。以下の一文こそ、この香りを表現するに相応しい一文です。

わたしはそっとこう耳打ちしておく。「いっそあなたの悪魔を育てて大きくした方がいい。あなたにも偉大さへの道はまだひとつ残されている」と。

『ツァラトゥストラはかく語りき』 フリードリッヒ・ニーチェ

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マリオン・コティヤールをイメージした香り


元々のイメージは、フランスを代表する女優マリオン・コティヤールをイメージした香りであり、どうやら性的興奮の中で生まれる分泌液のあの感覚もアイデアの源となっているのです。

それはマリオンが、『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』(2007)で第80回アカデミー賞主演女優賞を受賞した後、エルトン・ジョンが開催したオスカー・パーティーに、ファブリース・ペノー(ルラボ創業者の一人)がマリオンの友人と共に参加した「かなりクレイジーな夜をマリオンのテーブルで過ごした」というこの罪深い夜からインスパイアされ生み出されたのでした。

清らかなジャンヌ・ダルクのような聖なる美しさを誇る女性が、悪魔のようなファム・ファタールぶりを魅せる、その一人の女性の天使と悪魔に対して、身震いしながら、身体の奥底から絞り出される(男女それぞれの)あの液体の感覚。

ムスク25とは、善悪の彼岸の香りなのです。

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「聖水をふりかけよ!」天使と悪魔の戦いのはじまり

この香りのウッドの部分は、夜のマルホランド・ドライブをドライブした時に感じた香りそのものです。そして、ムスクの部分は、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの「Under the Bridge」に出てくる〝City of Angels〟のLAというイメージそのものです。

ファブリース・ペノー

1990年代にカリフォルニアで大流行していた香りがありました。一年中快適な気候と合致したその香りの名を「ホワイトムスク」と申します。ザ・ボディショップより1981年から発売されていた香りでした。

そんな懐かしいホワイトムスク(ムスコン)の柔らかい温かさの中に、アルデハイドとスズランが切れ味のよい閃光を放ちます。さぁ、(ほんの少しソーピィーな)天使が到来するのです。フレッシュでクリーンなホワイトムスクの浮遊感の中で、ローズが加わり、香り全体が優しさに包まれた瞬間、すべては一変するのです。

それはどこか雪の降らないロサンゼルスの灰色になった空から、突然、粉雪が舞い落ちてくるような情景が思い浮かびます。

突然〝成分X=精液の香り〟がアンバーグリス、ベチバー、ユーカリのブレンドにより生み出されてゆきます。より美しく磨きこまれた人間は、人間らしさを失い〝悪魔のような美しさ〟を手にすることになるのでしょうか?

だんだんと、天使の翼が、焼け焦げていく中、ベチバーとアンバーグリスという悪魔に取り憑かれたあなたに対するムスクとシベットによる悪魔祓いがはじまります。

シベットの呪文が唱えられます。そして、ホワイトムスクのホワイトが撃滅される中、ムスクのパウダリーなアニマリックさに包まれながら、悪魔が最後に咆哮するのです。さぁ、「キミの中の秘められた悪を目覚めさせるのだ!」と!

そんな最後の絶頂を乗り越えた先にあるのは、信じられないほど温かく涼しく清々しいスエードのような森の香りが〝天使のカリヨンのようなムスク〟に伴われ、肌と心にそのカリヨンの音色を優しく響かせてゆくのです。

最後にこの香りの最も重要なポイントを述べるとするならば、上記の内容の根底に存在する知性こそがこの香りの類稀なる魅力と言えるでしょう。知性は香るものなのです。

アルデヒド44」がルラボ版「シャネルNo.22」なら、こちらはルラボ版ムスクが強めの「シャネルNo.5」とも言えます。さらにフレデリック・マルの「イリス プードゥル」と比べるとかなりの共通点が見つかります。ただし、二つの香りよりはフローラルの深みに欠けます。

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香水データ

香水名:ムスク25 ロスアンジェルス
原名:Musk 25
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:フランク・フォルクル
発表年:2008年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/1,850円、15ml/20,900円、50ml/45,100円、100ml/69,850円
公式ホームページ:ルラボ


シングルノート:アルデハイド、パチョリ、ムスク、ベチバー、スズラン、シダー、ローズ、アンバーグリス、シベット