淡路恵子
この作品には、一人の日本人女優が出演しています。黒澤明監督の『野良犬』(1949)でデビューし、松竹歌劇団で活躍していた淡路恵子が出演しています。元々キミコ役は、当時日活に所属していた左幸子がする予定でしたが、オーディションの結果、松竹の淡路恵子が抜擢されました。
しかし、実際のところ、それといった見せ場のない役柄でした。
もうひとつの主役。それは失われた日本の姿。
ウィリアム・ホールデンが、MPに逮捕されたミッキー・ルーニーを身請けするために東京に向かうタクシーが、東京タワーから浜松町駅に向かう途中にある芝大門を通り過ぎます。最終的には、新橋にある大型キャバレー「ショウボート」へと到着するのですが。これらのシーンは、オール日本ロケです。アメリカ占領(1952年4月28日まで)のすぐ後の日本の姿がカラーで見ることが出来ます。
この時代の日本の女性にとって、アメリカ兵は、ユダヤ人にとってのナチス並みに悪魔のような存在だったのかもしれません。強姦された女性が、やけになって売春婦になったことも多かったことでしょう。そして、そういった負の空気が、エキストラの日本人女性たちからなんとなく伝わってきます(米兵のエキストラも駐留米兵でした)。
G-1フライトジャケット
ハリー・ブルーベイカー大尉を演じたウィリアム・ホールデン(1918-1981)には、ロバート・ビードル(1921-1945)という弟がいました。太平洋戦争の真っ只中である1945年1月5日に、彼は、パプアニューギニアのニューアイルランド島のカビエン上空で、海軍の戦闘機乗りとして日本軍のゼロ戦と戦い、23歳の若さで撃墜死しています。
ホールデンが本作の出演に際して唯一提示した条件がありました。それは、原作と同じように主人公が死に、ハッピーエンドを迎えないという条件でした。彼の中で、この作品は、弟への鎮魂の意味も込められていたのでした。だからこそ、アメリカ太平洋艦隊が全面協力したにもかかわらず反戦ムード漂う内容となっているのです。
そんな彼と同僚の爆撃機乗りが着ているのが、G-1フライトジャケットです。のちに『トップガン』(1986)でトム・クルーズが着たことにより、ファッション・アイテムに昇格したこのジャケットは、もともと陸軍航空隊がA-2フライトジャケットを開発しているのに対して、海軍航空隊が1930年代に開発したジャケットからはじまりました(1947年よりG-1の名称になる)。初期のモデルは山羊革とムートンで作られていました。
本作は、『スター・ウォーズ』(1977)のデス・スターの破壊シーンにも影響を与えたトコリの橋爆撃シーンにより、1955年の第28回アカデミー賞のアカデミー視覚効果賞を獲得しました。