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【エルメス】エピス マリン(ジャン=クロード・エレナ)

エルメス
エルメスジャン=クロード・エレナブランド調香師香りの美学
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エピス マリン

原名:Epice Marine
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/36,190円
公式ホームページ:エルメス

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エレナが〝パイレーツ・エルメッセンス〟と呼ぶ香り

©Hermès

嗅覚で勝負してきた男と味覚で勝負してきた男の出会いが生み出したフレグランス。スパイス、ラム酒、ワックスがかけられたフローリング、燻した木材など二人が愛する共通の匂いから生み出された香りです。冬のブルターニュの海岸をイメージしたある種の逃避行です。

ジャン=クロード・エレナ

地中海の庭」の成功により、2004年にジャン=クロード・エレナエルメスの初代専属調香師に就任することになりました。そして、≪嗅覚の詩≫とも言える究極のフレグランス・コレクション『エルメッセンス』が誕生しました。

2013年9月に十一作目として発表されたのが「エピス マリン」です。「エピス」とはフランス語で「スパイス」のことです。ついにエルメッセンスは嗅覚だけでなく、他の感覚も、香り作りの宇宙に巻き込んでいったのでした。

ブルターニュ人のシェフ〝キュイジニエ・コルセール(海賊料理人)〟ことオリヴィエ・ローランジェとエレナの2011年の出会い(ラジオ番組にて)から発展し、スパイスに対するお互いの情熱の中から生まれた香りです。

ちなみにエレナはこの香りを〝パイレーツ・エルメッセンス〟と呼んでいます。

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〝海賊料理人〟ことオリヴィエ・ローランジェとは?

「私はミューズの役割を果たしました」オリヴィエ・ローランジェ

気分と鼻の調子によって、この香りは〝海〟から入るか、〝スパイス〟から入るか選ばれます。そして、この〝海〟とは穏やかな海ではなく、荒海なのです。

ジャン=クロード・エレナ

オリヴィエ・ローランジェ(1955-)とは、別名〝スパイスの魔術師〟とも呼ばれる世界有数のフレンチ・シェフです。彼は、2008年12月(1982年から)に引退するまでブルターニュのカンカルにあるラ・メゾン・ド・ブリクールという、フランスで20数軒しかないミシュランの三ツ星レストランのオーナーシェフでした。

医者の息子として生まれたローランジェは、1976年に5人の鉱山労働者に鉄の棒で襲われ、数週間生死の境を彷徨う昏睡状態になり、2年間療養生活を送りました。そして、回復後、今までフライパンも持ったことのない彼が、シェフになろうと心機一転し、僅か6年でレストランを経営するようになったのでした。

ラジオ番組を通じてエレナと意気投合したローランジェは、2011年10月にカンカルのシャトー・リシューに彼を招待しました。当時、『エピス・ロランジェ』のためのあるスパイスミックスの商品アイデアに行き詰っていたのですが、エレナのアドバイスにより〝Poudre des Bulgares〟が誕生したのでした。

そのお返しと言わんばかりに、「モノクロームの色彩で満たされたブルターニュの香りを作ってはどうか?」とエレナに打診したのでした。

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嗅覚の巨匠と味覚の巨匠の、夢の競演。

元気いっぱいのオリヴィエ・ローランジェと、冷静沈着なジャン=クロード・エレナ。

それは二人の眺めてきた〝海〟の違いを反映した試みでもありました。なぜならエレナが生まれてこの方ずっと見てきた海はグラースの小さな村から見る穏やかな地中海であり、ローランジェが見てきたブルターニュの海とは天と地の差がありました。そんな二つの海のビジョンをひとつの香りの中に投影していきたいとエレナは考えたのでした。

ある日、エレナは、ローランジェがヨーグルトの味付けにローストしたクミンを使っているのを見て、衝撃を受けました。そして、このクミンの香りこそ、二つの海をひとつの香りにまとめる立役者になりえると考えたのでした。早速、エレナは自宅にローランジェ特製のローストクミンシードを1キロ送ってもらい、それを蒸留してエッセンシャルオイルを作りました。トースト、ヘーゼルナッツ、炒ったセサミの魅惑的な香りを含むエキスです。

さらにラボでシナモン(「オー ドゥ エルメス」を象徴する香料)、カルダモン、クミンといったスパイスの香りに、ベルガモットの強い香りを加えて爽快感を出し、海藻や海水の香りのする合成分子アルゲオンを加えてブルターニュを想起させる試作品を作りました。

2012年2月に、「これが私の頭の中にあるブルターニュです」とローランジェに手紙を書き、2つのサンプルを送りました。「唯一足りないのは北の霧の香りです」とシェフは答え、「この霧はウイスキーのブルイックラディック(ピーティーでスモーキー)のようだ」と提案しました。

早速エレナは、すぐにブルイックラディックを購入し、数日間肌につけて過ごしました。そして、サンザシの花とそば粥の香りを組み合わせて、ローランジェが望む霧を表現したのでした。このような8ヶ月にもわたる手紙のやり取りの果てに、合わせて1年半の時をかけ、この香りは生み出されたのでした。

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荒海を、穏やかなスモーキースパイスブーケで表現した香り

©Hermès

私は、「寒さ」や「冷たさ」の影響で生み出される効果を香りで作り出すことにとても興味があります。果たして「寒さ」や「冷たさ」によって生み出される「震え」を香りによって生み出すことは出来るのだろうか?そして、その「震え」る香りは、身に纏いたいと思えるほどに心地よい香りになりえるのだろうか?それは極めて概念的な香りです。そういった点に、私はすこぶる興味があります。そして、こういった香りに対するアプローチを、私は、「真の香りの創造」と呼びます。

ジャン=クロード・エレナ

船乗りと海賊の人生を象徴する荒波のブルターニュの海と甲板に積まれたスパイスの叙事詩「エピス マリン」は、ビターなベルガモットとライムが、波に洗われた小石と(潮風のような)海藻と一緒になって弾け合うようにしてはじまります。

すぐにスモーキーな(焼きたてのパンのような)セサミとグリーンカルダモン、シナモン、ブラックペッパーが注ぎ込まれ、牡蠣を思わせる海辺の冷たい生臭さを、スパイスが見事に味わい深いものに変えてゆきます。

まるで、雲の間から差し込む太陽の光を浴びながら、大海原のど真ん中で荒れ狂う冷たく激しい波のしぶきを浴びているようです。ロバート・ルイス・スティーヴンソンの『宝島』を読んでいくような生き生きとした高揚感を感じさせます。

やがて、ベルガモットがヘーゼルナッツと溶け込み、霧がやってくるように円やかになります。このヘーゼルナッツの香りは、通常の香水に使われている生のクミンではなく、ローストクミンシードから抽出されたエッセンシャルオイル(甘いキャラメルのような香りを放ち、まったくアニマリックではない)にシダーウッドとベチバーが加わることにより生み出されたものです。

このナッツのようなクミンとベチバーとスパイスブーケが万華鏡の様に色々な側面を見せながら、ほのかにスモーキーな葉巻とウイスキーの匂いに乗って、肌の上に酔わせるようなスモーキースパイスのハーモニーを生み出してゆくのです。

エレナが1998年にカルティエで生み出した「デクラレーション」の究極形態とも言えます。似ているようで全く違う香りです。

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作品データ

香水名:エピス マリン
原名:Epice Marine
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/36,190円
公式ホームページ:エルメス


シングルノート:クミン、ヘーゼルナッツ、セサミ、シナモン、カルダモン、ベルガモット、シーノート、ウィスキー、ベチバー、オークモス

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