シャーロット・ランプリングはなぜイイ女たちに尊敬されるのか?
世界中の女優が憧れる女優の一人。それがシャーロット・ランプリングです。女優にとって、尊敬に値する女優とは、若さあふれる絶世の美女ではなく、衰える容姿をものともせず、年を重ねても尚、カメラの前で魅力的な役柄を演じる女優のことを指します。
シャーロットは、1946年2月5日にイングランド・エセックス州で生まれました。母親は画家で、父親は、NATO軍の将校であり、ベルリンオリンピック4x400mリレー金メダリストでした。そして、彼女は幼少期に英仏両国で教育を受けました。ロンドンで秘書として働いていたときにスカウトされモデルになり、後に演技の勉強をし、1965年に女優になりました。
本作により、シャーロットのイメージは、ミステリアス且つ悲劇性に満ちたイメージとなり、ダーク・ボガードに「ザ・ルック」と呼ばれるようになりました。
代表作は、間違いなくリリアーナ・カヴァーニの『愛の嵐』(1974)と大島渚の『マックス・モン・アムール』(1986)。以後キャリアは低迷していましたが、フランソワ・オゾンの『まぼろし』(2000)『スイミング・プール』(2003)で見事に復活を遂げました。
ルキノ・ヴィスコンティが愛した眼差し
あなたの全てを知っているようなその目がいい。
ルキノ・ヴィスコンティ
映画の背景を支配する重厚感溢れる調度品の数々となぜか美青年ばかりで構成された従者達。その輝きとは対照的に、すさんでいく住人の姿。それはシャーロット・ランプリングが演じるエリーザベトにおいては、特に著しい。
冒頭のイブニング・ドレス姿の輝くばかりの美しさ。それは華麗さではなく可憐さ。その哀愁を帯びた眼差し。細くて長い肉体のライン。ただ優雅なだけではない、独特な雰囲気。ドレスを着ることがごく自然なその存在感。
毎日ドレスを着ている貴婦人を静かに演じる彼女の存在感は、明確に美以上に知性によりもたらされたものでした。
なぜ21世紀に入り、女性はシャーロット・ランプリングの名を挙げたくなるのでしょうか?それは彼女の美しさではなく、その気品からなのです。どうやら、女性にとって最も重要なのは、アンチ・エイジングに夢中になり、気品を失った女性よりも、そんなものを超越した堂々とした女性なのでしょう。
エリザベート・ルック1
イブニング・ドレス
- ピンクベージュのイブニング・ドレス、ロングスリーブ、腕と胸元にレース
- ティアドロップのパールのイヤリング
- 左肩にコサージュ
- 3連パールネックレス
- ダイヤ付きの腕輪
- 白のヒールサンダル
静をもって動となすヨーロッパの女優。
- 一度見ると忘れられない特徴的なルックス
- 万人受けしない(特に男性に対して)美女タイプ
- 演技が上手いのか、雰囲気を作るのが上手なのかわからない人。
つまりこれが、女優にとっての美徳の三要素なのです。男性には理解しがたい女性の領域を示す人。それがシャーロット・ランプリングです。
だからこそ、女性の領域を知りたい男性にとって彼女は、ひとつの極星になるのです。彼女こそスーパーモデルの源流であり、そのひょろりとした肢体に纏わりつく布地の美しさを示してくれる人なのです。
そして、時間をかけてゆっくりと評価を高めた人にだけ持ちうるものを持つ人なのです。完璧さが美しさを生み出す重要な要素ではなく、未完成なものを残しつつ、非対称の美を体現する、まさに陶器の器のような美を、悲劇の中で昇華させることが出来た類稀なる人です。彼女の美は、動ではなく、静であり、極めて和テイストな美の閃光を放つ女優でした。
エリザベート・ルック2
ロングガウン
- パールカラーのノースリーブ・ロングガウン
作品データ
作品名:地獄に堕ちた勇者ども The Damned (1969)
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
衣装:ピエロ・トージ
出演者:ダーク・ボガード/イングリッド・チューリン/ヘルムート・バーガー/シャーロット・ランプリング