アリュール オードゥ トワレット
原名:Allure Eau de Toilette
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:1996年
対象性別:女性
価格:50ml /15,180円、100ml /21,230円
公式ホームページ:シャネル
世紀末、世界中の女性は再びシャネルに〝魅了〟された。

©CHANEL

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1978年にジャック・ポルジュがシャネルの三代目調香師に就任し、1982年にカール・ラガーフェルドがクリエイティブ・ディレクターに就任しました。1984年に「ココ」が発売されたこの年3月、ラガーフェルドによるシャネルのファースト・コレクション(1984/85秋冬コレクション)が発表され、シャネルはファッション・ブランドとして不死鳥のように蘇りました。
以降、シャネルのブティックはオクラホマから東京まで、
この状況を見たシャネルのCEOであるアリー・コペルマンは、「ロー ドゥ イッセイ」「シーケーワン」といった1990年代の〝つけやすいフレッシュな香り〟の流行に乗り、1996年に女性用の新作フレグランスを発表しました。その名を「アリュール」と申します。
20代後半から30代の女性をターゲットにしたこの香りは、通常シャネルが新作の女性用フレグランスで発表するオード・パルファムからではなく、オード・トワレから発売されました。
〝アリュール〟とは、フランス語と英語で「魅力、魅惑する」という意味です。それは完全復活したシャネルというブランドの自信を反映した、万華鏡のようなフローラル・フレッシュ・オリエンタルの香りです。
シャネルはこの香りのPRキャンペーンに過去最高となる1,000万ドル以上の予算を投入しました。シャネル・フレグランスの広告に初めて黒人女性が登場したことを含め、20代のファッションモデル7人が起用され、ファッションフォトグラファーのハーブ・リッツによって、様々なタイプの女性像を、カジュアルでありながらシックなスタイルで撮影されました。
今自分が欲しいものを与えてくれる〝王子様=バチェラーの香り〟

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この香りには、通常の香りのピラミッド構造は存在しません。身に纏う人それぞれにその人だけのその時の魅力が反映されるように香り立つように調香されています。
それはまるで六面にファセット・カットされたダイアモンドの一面に光が当たり輝くように、六つの香りのうちのひとつが、その人の魅力に反映し、優雅なブルボンバニラと絡み合い、シンクロするように香りを放つのです。
- シトラス=レモンとベルガモット
- フルーツ=マンダリンオレンジとピーチ
- フローラル=メイローズとジャスミン、スイレン、ピオニー、マグノリア、オレンジブロッサム
- ウッディ=サンダルウッドとベチバー
- オリエンタル=アンバー
- アニマリック=ムスク
つまりは、今自分が欲しいものをどんなものであろうとも与えてくれる〝王子様=バチェラーの香り〟なのです。
女性の魅力を最大限に引き出してくれるバニラ

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多様性の時代に、再評価されてしかるべき香り、これが「アリュール」です。女性用として発売されましたが、クロスジェンダーな香りです。シャネルのエレガンスを、身に纏う人々それぞれが持つ〝魅力〟に併せて、まとう人によって独自のハーモニーを奏でていく、〝目に見えないスタイリスト〟のような役割を果たしてくれます。
それはバチェラーの性別がなくなったような香りです。つまりあなたの元に集まった魅力的な6つの香りが、あなたの心を勝ち取るために素肌の上でロマンティックなデートをしてゆき、最後に最高のパートナーが残っていくのです。
シャネルのコスメカウンターではなく、シャネルのブティックに足を踏み入れるような、あなたがお花畑に舞う蝶になるような、うっとりする瞬間からこの香りははじまります。フレッシュなシトラスとうっとりと心が浮き上がるようなアンバーの魅惑のシンフォニーです。
すぐに、太陽のようにではなく、冷房の効いたブティックの人工光に全身が照らされるようにマンダリンがはじけてゆきます。人工美のエレガンス、この洗練された空気が、シャネルの生み出すエレガンスの真骨頂なのです。
そしてだんだんと華やかなローズをはじめとするフローラルブーケに包み込まれながら、独特なバニラの余韻に満たされていくのです。
ここに存在するバニラは、フレッド・アステアのようなバニラです。この稀代のダンサーが女性とステップを踏むと、その女性の魅力を最大限に引き出してくれるように、あなたの魅力をノーリミットで引き出してくれるバニラです。
そのような香りの流れの中にも、先に羅列した6つの香りのファセットのいずれかが万華鏡のように、あなたの素肌の上で、ふんわりと入れ替わり立ち代わり現れ、やがて輝くシトラスと繊細なアンバーバニラに祝福されながらひとつのファセットが選ばれていくのです。
どこか現実とは思えないシャネルの刻印とも言えるアルデハイドも感じることが出来る、抗うことが出来ないフレッシュなオリエンタルのきらめくオーラを我が身に受け止めていくのです。
セクシーになりたい女性に、脚線美と胸の谷間を与え、知性的になりたい女性に、眼鏡と集中力を与え、自分が何者か分からない女性にヒントを与えてくれる香りです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「アリュール」を「グリム・フローラル」と呼び、「初めに「マスト」(カルティエ、1981)があった。むかつく安っぽいチョコレートの香水で、ドライダウンは忘れがたいバニラとパチョリとインドールだったが、大当たりした。その香調で驚くべきは(なかなか消えないことを別にすれば)、ダーク系のフェイスパウダーとまったく同じ匂いだったことだ」
「10年後に、「デューン」(ディオール、1991)が見事なひらめきで最初のアイデアをひっくり返し、鉛色の空の下に広がる砂漠の色のような、冷えびえした香りを作り出した。当時は誰もおもしろいとは思わなかった。市場には5年早いより半年遅れのほうがましというルールがあるそうだが、アリュール(1996)はデューンのアイデアを借りて、それをもう少し優しくした感じ」
「フルーティなトップノートが、ベースの陰気なメッセージを少し和らげている。かくしてアリュールは、香水を楽しむでも自分の趣味をひけらかすでもなく、もっぱら社会的な地位の証しとして香りを発散させたい女性向きの製品となった」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:アリュールオードゥトワレット
原名:Allure Eau de Toilette
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:1996年
対象性別:女性
価格:50ml /15,180円、100ml /21,230円
公式ホームページ:シャネル
トップノート:レモン、ベルガモット、マンダリン・オレンジ、ピーチ、パッションフルーツ
ミドルノート:ジャスミン、スイレン、ハニーサックル、フリージア、マグノリア、メイローズ、ピオニー、オレンジブロッサム
ラストノート:サンダルウッド、ベチバー、バニラ、パチョリ、アンバー