ブルー ドゥ シャネル
Bleu de Chanel 2006年に発売されたひとつの香りが瞬く間に世界中(特に欧米)の男性を虜にしました。その香りの名を「テール ドゥ エルメス」と申します。
そして、この香りのあおりを受け、1999年以降着実に売り上げを伸ばしていたシャネルの「アリュール オム」シリーズは苦戦するようになりました。
かくして打倒「テール ドゥ エルメス」の号令の下、11年ぶりのシャネルのメンズ・フレグランスとして、2010年に「ブルー ドゥ シャネル」が生み出されたのでした。
男性のための〝はじめてのシャネル〟
「ブルー」と「エゴイスト」は正反対のメンズ・フレグランスです。「エゴイスト」は女性のフレグランスから触発されたフレグランスなのですが、「ブルー」には女性的な要素は一切存在しません。
メンズ・フレグランスとは、依然シェービング・クリームの影響下にあります。そして、ブルーはそういった要素を全て詰め込んだものなのです。そこには、一切のファンタジーは存在しない香りなのです。
ジャック・ポルジュ
シャネルの三代目専属調香師ジャック・ポルジュにより調香されたウッディ・アロマティックの香りは、さして新鮮味のない香りなのですが、そのマーケティング戦略は明確でした。
ジャック・エリュによるクールなボトル・デザインとシャネルのブランド力を背景に、以下に記す三つの層を取り込むためのフレグランスとして創造されたのでした。
- ファッション感度は高いが、フレグランスには興味のない男性
- 人に尋ねられたときに、お洒落だと思ってもらえるフレグランスとして、何十年も定番の香りとして使い続けてくれる男性
- パートナーがシャネルの香りを付けてくれることに喜びを感じる女性
そのため、香りにかける予算よりも、遥かに膨大な予算を、マーティン・スコセッシとギャスパー・ウリエルに投入し、日常生活の中で人々が接するあらゆる広告媒体にキャンペーンフォトを登場させました。
そして、ごく平凡な万人受けする香りとクールな広告イメージ、さらに意図的に、女性が使用しても違和感のないパートナーと共有できるフレグランスとして売り出されることにより、マーケティングの勝利を勝ち取ることに成功したのでした。
フレグランスに対してまだ詳しくない男女層をターゲットにした「はじめてのシャネル」の香りです。
シャネルの恐ろしいところは、平凡な香りでありながらも、香料だけは一級品であるということです。まさに、エルメスの「テール ドゥ エルメス」だけでなく、ドラッグ・ストアに売られている模倣フレグランスを、その品質の良さで駆逐するために生み出された、メンズ・フレグランスにゲームチェンジ(=「青い革命」)をもたらした香りなのでした。
ブルー ドゥ シャネル三部作
2018年
ブルー ドゥ シャネル パルファム
レモンとシダーとサンダルウッドによって生み出される、意味もなく、言葉もなく、ただ美しい形がふとあらわれて消えて行く〝男に美しさだけを求めた〟香り。
2014年
ブルー ドゥ シャネル オードゥ パルファム
アンバーとムスクが追加され、涼しげな爽快感と温かい官能性の秤の上に身も心もあずけるような〝シャネルを着た危険な男〟の香り。
2010年
ブルー ドゥ シャネル
「世界で一番使いやすいフレッシュな香り」のコンセプトで生み出された記念すべき第一作。グレープフルーツに男の熱い心を抽入した香り。