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【シャネル】エゴイスト(ジャック・ポルジュ/フランソワ・ドゥマシー)

シャネル
©CHANEL
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エゴイスト

原名:Egoiste
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュフランソワ・ドゥマシー
発表年:1990年
対象性別:男性
価格:100ml/15,950円
公式ホームページ:シャネル

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感想(9件)

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メンズ香水市場に対するシャネル帝国の逆襲

1987年に発売された「ボワ ノワール」©CHANEL

メンズ・フレグランス史上最高峰のネーミング・センスを誇るのが、1990年にシャネルから発売された「エゴイスト」です。「エゴイスト」とは、フランス語で、「わがまま」「身勝手な」という意味なのですが、そういった一歩間違えると、下品になりかねない単語をフレグランスにつけてしまうところが、まだ尖がっていた時代のシャネルの素晴らしさでした。

「鋼鉄の意志を持ち、チャーミングで、圧倒的なオーラを放つ男性」というこの香りのコンセプトを、スパイス・ウッディ・バニラにより体現したオリエンタル・スパイシーの香りは、シャネルの三代目専属調香師ジャック・ポルジュフランソワ・ドゥマシーによって調香されました。

すべてのはじまりは、1980年代後半に、シャネルのクリエイティブ・ディレクターのカール・ラガーフェルドが、メンズ・コレクションへの進出を画策したことからはじまります。

そして、パルファム&コスメ部門のマーケティング・ディレクターのジーン・ジンマーマンも、その動きに呼応するように、シャネルを代表するメンズ・フレグランスの創造を立案したのでした(全米市場における標的は、カルバン・クラインの「オブセッション フォーメン」だった)。

そういった思惑を受け、ジャック・ポルジュは、かつてエルネスト・ボーが生み出した「ボワ デ ジル」(サンダルウッドがフューチャーされた香り)を、メンズ・ヴァージョンに改良した香りこそが〝男性のためのNo.5〟に相応しいと考えたのでした(それまでサンダルウッドが男性のための香りとしてメインで使用されたことはなかった)。

かくして、パリ・ブティック限定のフレグランスとして1987年に「ボワ ノワール」が販売され、1990年に、ほんの少しの微調整を経て、全世界販売されることになるのでした。

その時に、ジーン・ジンマーマンはフランス語の名前では世界戦略の不利になると考え、英語圏でも分かりやすい「エゴイスト」に名称変更して発売することを決定したのでした。

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史上初のメンズのためのサンダルウッドの香り

©CHANEL

私自身が最も気に入っている香りは、「エゴイスト」です。

そして、この香りは、当時、あまりにも斬新過ぎました。今ではどのブランドも斬新な香りを創ることを恐れているように感じます。

ジャック・ポルジュ(2010年)

男たちの心を占領し、彼らの肉をさいなむために生み出されたこの香りは、タイム、ローズマリー、ラベンダー、セージといったハーブを混ぜ合わせて作り出された薬草と、オレンジの皮、プラム、アプリコットといった砂糖漬けされた果実が溶け合う中、シナモンとナツメグが鋭い断末魔をあげるようにしてはじまります。

それはまるで、女性から渾身の一撃を喰らわされたような衝撃です(もしくはコカコーラのスカっとした爽快感)。すぐに、アルデハイドで掻き混ぜられたベースのブルボンバニラが現れ、ローズウッドとコリアンダーが溶け合い、慰めあうような温かさに包み込まれていきます。

すでにトップノートから、複雑な男性と女性の感情の機微を投影することに成功しているところが、この香りの恐ろしさであり、エゴイストがエゴイストである所以なのです。

やがて、華やかなダマスクローズが、すべてをゲームチェンジするかのように、香り全体にタバコのようなレザーのようなスモーキーさで包み込む中、透き通るように清らかなカーネーションが、燃えるようなシナモンと戦うようにして蜃気楼のように煌きます。

破壊なくして創造もないのでしょうか?かくして、壮絶なる香料の死闘の末に、馥郁な甘さを放つバニラとスパイシーローズの残り香と、クリーミーなサンダルウッドとアンブレットシードが、紳士同盟を結ぶように甘く優しくドライダウンしていくのです。

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失敗作となったエゴイスト

©CHANEL

1990年4月にヨーロッパの市場から披露された「エゴイスト」は、1991年の北米市場進出に備え、一大広告キャンペーンを行うことにしました。

ジャン=ポール・ グードによってクリエイトされた、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」の〝モンターギュー家とキャピュレット家〟に合わせて展開する素晴らしいコマーシャル・フィルムは、当時話題になりました。

それは、ホテルのバルコニーから、シャネルのオートクチュールのドレスに身を包んだ35人の女性たちが、男性のエゴイストに対して、口々に不満を叫び、そのボルテージが最高潮に達した時に一つだけ開かなかった窓から、男性の手と共に、香水だけが登場するというスピード感溢れる展開でした。

フレグランスのCMとしては破格の100万ドルの予算をかけ、リオデジャネイロ郊外の砂漠にインターコンチネンタル カールトン カンヌを、300人の人員により4週間かけて再建し、撮影は行われました。(900万ドルの予算をかけて、メンズ・フレグランス史上最大のキャンペーンが行われた)。

ボトル・デザインは、シャネルのアートディレクター、ジャック・エリュによるものです。

しかし、エゴイストは、初年度で、予想を遥かに下回る700万ドルの売り上げしか上げることが出来ませんでした。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「エゴイスト」を「砂糖漬けフルーツ」と呼び、「エゴイストといえば、優雅だがウッディが抑えられた、やや水っぽいパステル調の砂糖漬けフルーツだ。そう記憶していたため、この香水には驚かされた。原型である「ボワ ノワール」を嗅いだことはないが、オリジナルに近いのではないかと思う。」

「プロヴァンス地方のタイムやラベンダー、ハーブ類がふんだんに使われ、シャネルのコレクションではこれがいちばんゲランに近い。「ジッキー」に「アンテウス」を加え、残香は「ボワ デ ジル」で丸みをつけたようだ。「ムシュワール ドゥ ムッシュ」にもまったく引けをとらない。こちらのほうが陽気で、ダンディさは抑えられているが。ただ、つけるときには控えめに。強い香水なのだ。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:エゴイスト
原名:Egoiste
種類:オード・トワレ
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュフランソワ・ドゥマシー
発表年:1990年
対象性別:男性
価格:100ml/15,950円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:マホガニー、シチリア産マンダリン、ブラジル産ローズウッド、コリアンダー
ミドルノート:カーネーション、シナモン、ダマスクローズ
ラストノート:レザー、サンダルウッド、バニラ、タバコ、アンバー

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