トニー・モンタナ帝国の崩壊
トニー・モンタナは順調に成り上がり、ボスの愛人も略奪し、豪邸に住み、トラを飼い(マイク・タイソンは絶対にトニーに憧れていたはず)、仕立ての良いスーツと黄金と宝石の装飾品で身を固めるようになっていきました。しかし、それは彼自身が知らないうちに、自分自身の葬儀の準備をしているようでした。
「人間は確実に死に向かい進んでいく存在」であり、トニー・モンタナが永遠のギャングスタ・アイコンになったのは、そんな〝滅びの美学〟が、ダークトーンのファッションと共に見事に描かれていたからでした。
(アル・パチーノは本物のコカインを吸っていると話題になりましたよね?の質問に対して)そんなはずないじゃないか。アルはすごく真面目な男だし、もし撮影に本物のコカインを使っていたら、全製作費をそれを買うために使っても足りなかったろうね。
ブライアン・デ・パルマ
トニー・モンタナのファッション13
ブラック・タキシード
- ブラック・タキシード
- ダイアゴナル・ストライプの白のドレスシャツ、ウイングカラー
- ブラック・ボウタイ
- 白いシルクのポケットチーフ
- コンコルドのデリリウム マリナー
トニー・モンタナのファッション14
ニューヨーカー・スタイル
- ネイビーのオーバーコート、シングル、ノッチラペル
- チョークストライプのダークネイビー・ウールスーツ、3ピース(最後のスーツと同じ)
- ホワイトドレスシャツ
- レッド・シルクタイ、黄金の菱形の柄入り
そして誰もいなくなった・・・
『スカーフェイス』が、〝男たちの永遠のバイブル〟である理由は、悪趣味なまでに金ぴかな宮殿のような邸宅で、高価なスーツ姿で、戦争で使用するレベルの銃器で、大銃撃戦を行い果てるところにありました。
そこには、コカインを吸引し、空元気を出し、唾を飛ばしながら、実に見苦しく吼える男がいます。しかし、この作品の面白いところは、決して自殺などを考えずに、孤立無援になっても、蜂の巣にされても「もっと撃ってこい!こんな腑抜けた弾で俺が死ぬとでも思うのか!」と吼えて戦うあり得ない設定にあるのです。
それはアル・パチーノだからこそ生み出すことが出来た説得力なのです。そして、トニー・モンタナは戦い続けながら死に、伝説となったのです。
トニー・モンタナのファッション15
チョークストライプ・スーツ
- チョークストライプのダークネイビー・ウールスーツ、3ピース、シングル、2ボタン、ピークラペル、サイドベンツ
- ポケットチーフ、白のシルク
- ホワトドレスシャツ
- タン色のレザーベルト、金のバックル
- 〝キューバン・ブーツ〟ブラックレザー・スリッポン・アンクルブーツ
- コンコルドのデリリウム マリナー
作品データ
作品名:スカーフェイス Scarface (1983)
監督:ブライアン・デ・パルマ
衣装:パトリシア・ノリス
出演者:アル・パチーノ/ミシェル・ファイファー/スティーヴン・バウアー/ポール・シェナー
- 【スカーフェイス】トニー・モンタナ帝国とアル・パチーノ
- 『スカーフェイス』Vol.1|アル・パチーノとアル・カポネ
- 『スカーフェイス』Vol.2|アル・パチーノとアロハシャツとチェーンソー
- 『スカーフェイス』Vol.3|トニー・モンタナと世界で最も薄い高級時計
- 『スカーフェイス』Vol.4|トニー・モンタナと『白と赤の美学』
- 『スカーフェイス』Vol.5|アル・パチーノ=トニー・モンタナ愛用香水
- 『スカーフェイス』Vol.6|アル・パチーノのトニー・モンタナ伝説
- 『スカーフェイス』Vol.7|ミシェル・ファイファーのショートボブ
- 『スカーフェイス』Vol.8|ミシェル・ファイファーのディスコ・ドレス
- 『スカーフェイス』Vol.9|ミシェル・ファイファーの元祖ウェイフルック