【スカーフェイス】
Scarface 1980年代から90年代にかけて社会の最底辺に生きるワル達に絶大な影響力を生み出した〝悪党の教科書〟。特に黒人のギャングスタ・ラッパーやブラジルやメキシコの麻薬ギャングたちに今も愛され続けている作品。それが1983年にブライアン・デ・パルマが監督した『スカーフェイス』。
アル・パチーノが、『ゴッドファーザー』シリーズとは真逆の(深作欣二作品に登場する)狂犬のようなヤクザ=トニー・モンタナを見事に演じあげています。1932年の暗黒街映画の傑作『暗黒街の顔役』を、キューバ移民に置きかえた作品であり、そのストレートな暴力描写によりオリジナルに対する冒涜とまで、公開当時酷評されました。しかし、今では、史上最高のギャング映画の地位に上り詰めた〝リアルな悪党たちのハートを撃ち抜いた作品〟。
ジョルジオ・モロダーの80年代の空気が放電しているようなシンセサイザーが実に素晴らしい。1982年11月22日から1983年5月6日まで24週間かけて撮影されました。
あらすじ
舞台は、1980年アメリカのマイアミ。政治亡命を装いキューバから、無一文で流れてきたトニー・モンタナ(アル・パチーノ)は、相棒のマニー(スティーヴン・バウアー)を従え、難民キャンプから抜け出し、アメリカで最底辺からのし上がるためにコカイン取引に携わります。
マイアミのマフィアのボス、フランク・ロペス(ロバート・ロッジア)に認められるための初仕事で、仲間がチェーンソーで殺されます。そして、トニー自身も切り刻まれるすんでの所で、マニー達に助けられ、無事コカイン取引に成功します。
そのコカインを届けるために、フランクの腹心であるオマー・スアレス(F・マーリー・エイブラハム)と共に、フランクの大豪邸を訪れるトニー。彼はそこで、フランクの情婦エルヴィラ(ミシェル・ファイファー)に一目惚れし、絶対に伸し上がり、彼女を略奪する決意を立てる。
順調に組織で取引をこなし、羽振りが良くなったトニーは、疎遠だった母親と妹のジーナ(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)のもとを訪れる。「ろくでなし!」と反発する母親に対して、ジーナは兄のいる華やかな世界に強く惹きつけられます。
すぐに時は来た!ボリビアの麻薬王ソーサとの取引で、裏切り者だったオマーは処刑され、その後釜としてトニーは、ソーサの信頼を勝ち取ることに成功したのだった。ソーサと勝手に取引をするようになったトニーにフランクは暗殺部隊を差し向けるも、返り討ちにし、トニーはフランクを殺害し、縄張りもエルヴィラも自分のものにするのだった。
見事、下克上を成し遂げたトニーは、エルヴィラと結婚し、マイアミの麻薬カルテルの頂点に君臨することになる。しかし、脱税容疑で告発され、ソーサも麻薬取締りの強化により苦境に立たされる。トニーは、麻薬取締委員会で最も力のある委員の暗殺に手を貸す代わりに、脱税問題のけりを付けてもらうことでソーサに協力することになります。
しかし、委員暗殺当日、委員の家族もろとも暗殺しようとするソーサの手下の下劣さに反発し、トニーはその手下を射殺し、ソーサと敵対することになる。さらに、マニーとジーナが付き合っていることを知り、マニーを殺してしまいます。もはやトニー自身が重度のコカイン中毒となり理性的な考え方が出来ないようになっているのでした。
大切な人が誰一人いなくなりコカインの山に顔を埋めるトニーの大豪邸に、遂にソーサの暗殺部隊がやって来た!さぁ、トニーよ銃を取れ!死に花を咲かせるのだ!M203グレネードランチャー付きのM16A1を手に取り、トニー・モンタナの最後の闘いの幕が切って落とされるのだった。
ファッション・シーンに与えた影響
1980年代に公開当時、名作『暗黒街の顔役』に対する冒涜であるという評価を受けていたこの作品の再評価は、80年代後半からはじまるレンタルビデオ時代により、アメリカの黒人・ヒスパニックの支持を得たことからはじまりました。
つまり、80年代後半から90年代にかけて、『スカーフェイス』がブラック&ヒスパニック・ファッションに与えた影響は絶大でした。さらに、エルヴィラのファッションも、90年代のウェイフルックの元祖として、21世紀に入り、タイムレスアイコンの地位を手にしたのでした。
この作品がファッション・シーンに与えた影響は以下の5点です。
- トニー・モンタナのアロハ・ルック=ワルのリゾート・ルック
- 1930年代風、ギャングスター・ダブルスーツ
- エルヴィラが教えてくれるディスコ・ドレスのクールネス
- エルヴィラのスタイリッシュなショートボブ
- エルヴィラの元祖ウェイフルック
今では『スカーフェイス』はただのバイオレンスムービーではなく、ファッションムービーとしても不動の地位を獲得しています。
作品データ
作品名:スカーフェイス Scarface (1983)
監督:ブライアン・デ・パルマ
衣装:パトリシア・ノリス
出演者:アル・パチーノ/ミシェル・ファイファー/スティーヴン・バウアー/ポール・シェナー
- 【スカーフェイス】トニー・モンタナ帝国とアル・パチーノ
- 『スカーフェイス』Vol.1|アル・パチーノとアル・カポネ
- 『スカーフェイス』Vol.2|アル・パチーノとアロハシャツとチェーンソー
- 『スカーフェイス』Vol.3|トニー・モンタナと世界で最も薄い高級時計
- 『スカーフェイス』Vol.4|トニー・モンタナと『白と赤の美学』
- 『スカーフェイス』Vol.5|アル・パチーノ=トニー・モンタナ愛用香水
- 『スカーフェイス』Vol.6|アル・パチーノのトニー・モンタナ伝説
- 『スカーフェイス』Vol.7|ミシェル・ファイファーのショートボブ
- 『スカーフェイス』Vol.8|ミシェル・ファイファーのディスコ・ドレス
- 『スカーフェイス』Vol.9|ミシェル・ファイファーの元祖ウェイフルック