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【ゲラン】ヴァニーユ プラニフォリア エクストレ 21(ティエリー・ワッサー/デルフィーヌ・ジェルク)

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ヴァニーユ プラニフォリア エクストレ 21

原名:Vanille Planifolia Extrait 21
種類:エクストレ・ドゥ・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ティエリー・ワッサーデルフィーヌ・ジェルク
発表年:2023年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/85,800円
公式ホームページ:ゲラン

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愛が愛を呼ぶ、ゲランのヴァニラ

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私はヴァニラが好きです。なぜならそれは多くの感情を呼び起こすからです。そのグルマンの側面は、私たちを子供時代に引き戻してくれます。一方で、ヴァニラは官能性の頂点であり、ゲランの香りの中にひそむ恍惚をともなう甘美さに欠かせない要素です。私はこの二面性に魅了されているのです。

デルフィーヌ・ジェルク

21世紀に入るまで、ゲランがずっと秘密にしてきたレシピがあります。二代目調香師エメ・ゲランにより生み出されたゲルリナーデです。ゲルリナーデとは、香水芸術に情熱を傾けてきたゲランだからこそ調達出来る、選りすぐりのベルガモット、ローズ、ジャスミン、トンカビーン、アイリス、ヴァニラのエッセンスを組み合わせて創造する〝ゲラン帝国の血〟であり〝ゲランの精神=刻印〟です。それはゲランの歴代調香師にのみ一子相伝で伝えられてきました。

とここまでが通常のゲルリナーデの説明となるのでしょうが、ここからが、本当のゲルリナーデの真髄に迫る部分です。それはコミュネルと呼ばれる、6つのエッセンス自体が、異なる生産者や国からの、同じ植物の異なるエッセンシャルオイルを組み合わせ、異なる側面を生み出すようにブレンドされているところにあります。

この6つのエッセンスそれぞれのスペシャル・ブレンドこそが、ゲルリナーデの真の秘密のレシピなのです。

2005年、パリ・シャンゼリゼ通り68番地のゲラン本店のリニューアルオープンを記念して発売された「ラール エ ラ マティエール(芸術と貴重なる生の素材)」コレクションの〝究極のコレクション〟として、2023年に『ラール エ ラ マティエール エクストレ』が発売されました。日本では10月12日から伊勢丹新宿店で開催される「サロン ド パルファン 2023」で先行販売され、11月1日以降、一部ブティック限定で販売されています。

ゲルリナーデを生み出す〝ゲランの六星〟それぞれに脚光を当てていく、それぞれの香りには、〝宿命の数字〟=ゴールデンナンバーが振り当てられています。

そのうちのひとつ「ヴァニーユ プラニフォリア エクストレ 21」は、五代目専属調香師ティエリー・ワッサーデルフィーヌ・ジェルクによって調香されました。

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シャリマーとヴァニラチンキについて

ジャン=ポール・ゲランとジャック・ゲラン、1956年。©GUERLAIN

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ゲラン帝国を興隆へと導いた天才調香師ジャック・ゲラン(1874-)は、叔父であるゲランの二代目調香師エメ・ゲランにより才能を見い出されました。そして1890年に、弱冠16歳にして後継者として英才教育を受けることになり、1895年に、21歳でゲランの三代目調香師に就任しました。

アプレロンデ」(1906)「ルール ブルー」(1912)を創造し、エメが生み出したゲルリナーデを、ゲラン帝国の『ナポレオン法典』へと昇華させてゆきました。順風満帆に見えた彼の人生は、1914年に、ゲランがシャンゼリゼ通り68番地に新店をオープンしたこの絶頂の後に、どん底にまで落ちてゆきました。

第一次世界大戦(1914-1918)の勃発です。1914年8月1日、フランス政府の総動員発令により、41歳で3児の父親だったジャックも徴兵されることになりました。そして、一兵卒として塹壕戦に参加し、戦闘で頭部に傷を負い、片目を失明するのでした。以後、車の運転も、乗馬も出来なくなりました。

普通の人なら、この時点で、年齢的にも、何かを創造する意欲を失ってしまうでしょう。しかしジャック・ゲランが芸術家として称えられるのはこの後、大復活を遂げたためでした。重傷から回復した後、ジャックは、1919年に「ミツコ」を創造します。そして、1921年にサンスクリット語で、〝愛の宮殿〟を意味する香り「シャリマー」を生み出したのでした。

1925年4月28日から開催されたパリ万国博覧会で発表されたこの香りは、世界で最初のオリエンタル・ノートでした(現在、ゲランでは世界初のアンバーフレグランスと呼んでいます)。「シャリマー」誕生のきっかけは、「ジッキー」(1889)にもっとたっぷりヴァニラを加えたらどんな香りがするだろうとふと考えたことでした。

このシャリマーにより、ゲランはアメリカ市場進出を果たすことになり、世界帝国を築き上げることになりました。以後、ゲランにとってヴァニラとの関係は切っても切れないものとなりました。

ここでゲラン帝国の伝説のヴァニラについて説明してゆきましょう。ウッディでレザリーでスパイシーな魔性のオーラを放つ、約2世紀に渡る秘伝のヴァニラ=ヴァニラチンキです。

このヴァニラチンキの産地は、最も豊潤なヴァニラが生まれ育つとゲランが考える環境がある、マダガスカル島の北部東海岸です。

かの地でゲランが専属契約している農家でオーガニック栽培されたヴァニラは、収穫後すぐにそのヴァニラビーンズを、フランスのオルファンにあるゲランの工場に送り届けます。そして、手作業でマッシコ(Massicot)と呼ばれるカッターを使い切り分けられ、最後にオーガニックアルコール(2021年より)に21日間漬け込み、極上のヴァニラの香気成分を抽出してゆくのです。受粉から15~18ヶ月かかるこの気の遠くなるような作業の果てにヴァニラチンキが生まれるのです。

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ヴァニラに包まれる愛は、永遠のものになるらしい。

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はじまりから絶頂に導いてくれる〝恍惚のヴァニラ〟は、バニラが連想させる濃厚な甘ったるさではなく、酸いも甘いも知り尽くしたフランス女がふと見せるはにかんだ笑顔のような軽やかにエレガントなヴァニラです。この笑顔を見てしまうと、深く引きつけられひとつになりたい欲求にかられてしまうそんなヴァニラがそこにはあります。

ゲラン帝国の香りの歴史は、香りに愛の言葉を与える歴史でした。その中心的な役割を果たしてきたヴァニラ。このヴァニラチンキが、30%に濃縮されたエクストレとなり、散らばめられたスパイスと共鳴し合い、愛が愛を呼ぶ、ヴァニラの愛の伝説があなたの素肌に滑らかに伝承されていくのです。

ヴァニラチンキとスパイスがブレンドされると、独特なレザーのニュアンスが生み出されるのですが、このレザーの要素が、ヴァニラにスモーキーさとコクを加えていくのです。

「21」は、ゲランが厳選したプラニフォリア種(世界各地に生息する約120種ものヴァニラのうちのひとつであり、ヴァニラの中でも非常に優れた品種)から採取されたヴァニラビーンズから、香りを浸出するためにアルコールの中で冷やされる21日間が由来である、ゲランのヴァニラのゴールデンナンバーです。さらには、「シャリマー」が創作された1921年にもかけています。

ヴァニラの持つ甘さをより魅惑のものに変えていく役割として、ミルラとホワイトムスク、そしてオポパニンが重なり、円やかにとろけて高まる美しさが満ち広がってゆきます。

ちなみにオポパニンとは、別名〝ゲラン・アンバー〟と呼ばれており、こちらも「シャリマー」で初めて使用されたゲランの秘密のレシピです。それはヴァニラとオポポナックス、パチョリをブレンドしたものです。

まるで世界一のジェラートを作るマルガージェラートで人気の絶品オレンジバニラのヴァニラだけを、素肌の上に引き伸ばし、それがとろけて肉体と一体化する瞬間を全身で味わうように、愛が愛を呼ぶほどにデリシャスなヴァニラ。それはゲランならではの「Je ne sais quoi(言葉にできない魅力)」を、シックに(センスよく)周りの人々に届ける香りとも言えます。

ラール エ ラ マティエールの傑作「ドゥーブル ヴァニーユ」との違いは、〝酔わせるヴァニラ〟と〝お澄ましヴァニラ〟の違いです。

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香水データ

香水名:ヴァニーユ プラニフォリア エクストレ 21
原名:Vanille Planifolia Extrait 21
種類:エクストレ・ドゥ・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ティエリー・ワッサーデルフィーヌ・ジェルク
発表年:2023年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/85,800円
公式ホームページ:ゲラン


シングルノート:ヴァニラチンキ、オポポナックス、スパイス、アンバー、ムスク