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『イージー・ライダー』2|ピーター・フォンダとヒッピー・スタイル

その他の男優たち
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魅力的な3人のファッション対比。

Mのワッペンがついたアイビーなセーター。

全く違うファッション・テイストの3人が並ぶ時に生まれる〝ひらめき〟。

ファッションとは、留めるべきものをいかに留めないかの美学です。

ジョージ・ハンセン・ルック2 アイビールック
  • ゴールドのフットボール・ヘルメット
  • サスペンダーに赤シャツ
  • ダークブルーのセーター。黄色のM字マーク

いつも、若い奴らに「大事な三つのルールを覚えておけ」と言ってるんだ。一つ、男と女は憎しみ合っている。二つ、女の方が賢く、強い。そして、これが一番重要なんだが、女はフェアプレイをしないってことさ。

ジャック・ニコルソン、1984年。

この作品が、ファッション史的に大いなる価値を持つ意味合いは、3つの異なったファッションが一つの画面で対比されている点にもあります。ザ・バーズ的なヒッピー・ルック=デニス・ホッパーと、アイビー・ルックのジャック・ニコルソン、そして、バイカールックのピーター・フォンダ。

異なった3つのファッション・スタイルが生み出す不協和音は、やがて不思議なバランス感覚を生み出し。私たちが新たなるスタイルを知るきっかけになります。ファッション感度の高い映画を見る楽しみはまさにこの一点にあると言っていいのではないでしょうか?

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彼らはアメリカ(自由)を見つけに旅に出た。

ヒッピーファッションを象徴するド派手なフラワー柄のシャツ。

よく見ると素晴らしいフラワーパターンのシャツ。

フラワープリントこそ、ヒッピールックの象徴です。

バイカールックにフラワー柄のアンバランスさ。

アメリカンニューシネマは必ず不幸な結末を迎える。

デニス・ホッパー死す。理由は「そのうざい長髪を切れ!」とのこと。

キャプテン・アメリカ・ルック3 フラワープリント
  • フラワープリントのシャツ
  • サイケデリック柄のバンダナを首に巻く

ピーター・フォンダが11歳のとき、母親フランシスは、夫ヘンリー・フォンダの浮気癖が原因で首を剃刀で切断し、自殺しました。当時、自殺したと知らなかったピーターは、後年、ある知人が語っていた「自殺をする人々というのは、身体の中で自分自身が一番気に入っていた箇所を致命傷の場所にするものです」の一言によって母親の死が壮絶な自殺だったことを知ります。

そんなピーターの心の傷をえぐるが如くデニス・ホッパーは墓地のシーンで叫びます!「その女神像に登り、君のおふくろに向かってなぜ自分を見捨てたのかを尋ねるんだ!」と。あっけに取られて拒絶するピーターに向かい、デニスはこう続けた。「こいつは俺たちの唯一のチャンスなんだ、わかるか?俺たちにとってのチャンスなんだよ!」。そして、2時間ピーターは、女神像にしがみつき泣き叫び続けた(娼婦とのLSDによるアシッド・トリップ・シーンに使用される)。

混迷を極めた二週間半後の撮影スケジュール終了後に、デニス・ホッパーは、最後のキャンプ・ファイアー・シーンの撮り忘れに気づき、サンタモニカの山の中で、2台のチョッパーはすでに盗まれ失われていたので、バイクなしで追加撮影を決行します。その時、ピーター・フォンダは、炎を見つめながらこう考えていたと回想しています。「俺たちは負けたんだよ。イージー・ライダーは失敗したんだ」と。そして、デニスのことをこう感じたと言います。「一緒に仕事をしているのは狂った男なんだよ。いつも酒を飲み、覚せい剤を常用している奴なんだ」と。まさに60年代後半だからこそ生まれた、反逆と狂乱の中の感性の爆発でした。

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しかし、そんなものはどこにもなかった。

バンダナをつけたデニス・ホッパー。1971年。

撮影担当のラズロ・コヴァックスとデニス・ホッパー。製作費僅か37万ドルの低予算で作られ、世界中で6000万ドルもの興行収入を叩き出した。

カンヌ映画祭にて出演者たち。1969年カンヌ国際映画祭新人監督賞受賞。

それは今までに行われたことのない最高のそして真実の方法だったんだ。

デニス・ホッパー

「彼らはアメリカ(自由)を見つけに旅に出た。しかし、そんなものはどこにもなかった」。秀逸な公開当時のキャッチコピー。今この作品を見る私たちにとって、アメリカの60年代後半のヒッピー・ムーブメントの息吹が、はっきりと感じることの出来る作品です。この作品の中には、旅があります。そして、アメリカの魅力もまたここにあります。

広大なルート66を滑走する2台のチョッパー。そこに流れるアメリカン・ロック。そして、登場する60年代ファッションに包まれた登場人物たち。従来の映画作りに対して反逆したドロップアウトしかけの若者たちが勢揃いしたその異様な熱気。今私たちが失いつつあるものが、この作品の中には、明確に存在します。

この作品は問いかけます。「男は恋人とではなく、男同士で旅に出るのだ!」と。それこそが男の魅力を磨き上げる最高の方法だと。旅がヒッピーの本質であるならば、男の魅力の格上げの本質も旅にあるのです。