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【ゲラン】ネロリ プラン シュッド(デルフィーヌ・ジェルク)

ゲラン
©GUERLAIN
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ネロリ プラン シュッド

原名:Néroli Plein Sud
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:デルフィーヌ・ジェルク
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/49,500円、200ml/70,290円
公式ホームページ:ゲラン

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『夜間飛行』のサン=テグジュペリの処女作からインスパイアされた香り

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モロッコによく旅行します。 私がモロッコに強く惹かれる理由は、料理、ペイストリー、肌のトリートメントでオレンジ・ブロッサム・ウォーターを使用するハマムなど、オレンジ・ブロッサムに関する思い出による部分が大きいです。そこにはいつも官能性が存在します。

特に、空気中に漂うネロリの新鮮さにインスピレーションを得ました。そして、古い飛行機で、オレンジの木立の上空を飛行することを想像しました。青空に広がるその畑から、フレッシュな香りを感じてから、サハラ砂漠の暖かさに向かって南に下っていくのです。  このフレッシュさと暖かさの組み合わせがこのフレグランスの特徴です。

デルフィーヌ・ジェルク

2005年、パリ・シャンゼリゼ通り68番地のゲラン本店のリニューアルオープンを記念して発売された「ラール エ ラ マティエール(芸術と貴重なる生の素材)」コレクション。

この〝世界で最も貴重な原料を使ってゲランのパッションを表現して欲しい〟というコンセプトにより生み出されるコレクションの最新作として、2024年1月26日に「ネロリ プラン シュッド」が発売されました。

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリジャック・ゲランの、二人の個人的友情から生み出された名香「夜間飛行」以来、ゲランと縁の深いサン=テグジュペリ。彼の名を冠した財団とのコラボレーションにより生み出された〝サハラ砂漠の熱い砂の上を吹く新鮮な風〟の香りは、ゲラン帝国の香料確保のため世界中を飛び回っている五代目専属調香師ティエリー・ワッサーの代わりに、新作の調香を担当するようになったデルフィーヌ・ジェルクにより調香されました。

サン=テグジュペリが1929年に発表した最初の小説『南方郵便機』にインスパイアされたこの香りの名は、小説の原題〝Courrier Sud〟にちなんでいます。〝プラン シュッド〟とは〝真南〟を意味します。

全ての「ラール エ ラ マティエール」の香りは、ある貴重な1つの素材に絞り、それをいまだかつてない芸術的な側面から、新たな光を当て、素材の深みやコントラストを強調することにより生み出されています。今回は2016年の「ネロリ ウートルノワ」に引き続き〝ネロリふたたび〟です。

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サン=テグジュペリの見た夢の香り

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ ©GUERLAIN

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ ©GUERLAIN

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このフレグランスを作成するときに私が選んだコードネームは〝Mon Ange〟でした。それは英語で〝My Angel〟を意味します。 そしてそれはあなたの赤ちゃん、さらにはあなたの恋人への愛のアイデアでした。

デルフィーヌ・ジェルク

香水のテーマになりやすい名作『星の王子さま』の作者であり、ゲランの名香『夜間飛行』の原作者でもあるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリは、1900年にフランスのリヨンに生まれました。彼は飛行気乗りであり、フランスを代表する作家です。

ナチス・ドイツに占領されていた、パリ解放寸前の1944年7月に、フランス本土偵察のため出撃後、ドイツ戦闘機に撃墜され、亡き人となりました。

そんなサン=テグジュペリが、カサブランカとダカールのほぼ中間のサハラにある中継基地キャップ・ジュビー飛行場での主任時代(1927年10月から29年3月までの18ヶ月間)に執筆したのが、20代最後の年に生み出した処女作、フランス=アフリカ定期路線を飛ぶ郵便飛行士の小説『南方郵便機』。

彼は三方をサハラ砂漠、もう一方を大西洋に面した僻地で、砂漠に不時着した仲間をモール族の襲撃から救い出すという危険な任務もこなしながら、この作品を書き上げました。

主人公の飛行士ジャック・ベルニスと恋に落ちる幼馴染の人妻ジュヌヴィエーヴは、共に悲劇的な結末を迎えるのですが、そのモデルは自分自身の若き日と苦い別れとなった元婚約者ルイーズ・ド・ヴィルモランでした。

若き日の苦い想い出と、モロッコ産のビターオレンジが結びついたこの香りには、調香師のデルフィーヌが衝撃を受けたモロッコのケミセット産のオーガニック・ネロリ精油の魅力が詰めこまれています。

彼女はその魅力を探求するために、実際にケミセットを訪問し、オレンジの木が生息する農園で、花々がアガファイ砂漠からの風を受け、唯一無二な苦みと蜂蜜のような甘みを生み出していくことを知りました。

このネロリ精油は、水蒸気蒸留法で抽出しています。 オレンジ・ブロッサムを必要な数だけ収穫したら、24時間以内に加熱蒸留工程に入ります。 そして、2つに分離されます。 ひとつは精油、もうひとつはオレンジウォーターです。ゲランがこの精油を原料として使用し、ウォーターは村民に有効利用して頂いています。
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サハラ砂漠の熱い砂の上に吹く、さわやかな風のようなネロリ。

デルフィーヌ・ジェルク ©GUERLAIN

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「ネロリ プラン シュッド」では、モロッコ産オレンジブロッサムのピュアなフレッシュさを、ターメリック、シナモンといったセンシュアルなスパイスが高めます。それはまるで、サハラ砂漠の熱い砂の上に吹く、さわやかな風のよう。

三つの言葉でこの香りを説明すると〝フレッシュで活気があり、スパイシー〟です。

デルフィーヌ・ジェルク

水のように清らかな空が、星々の輝きを浴びて、かぎりなく美しく浮かびあがった。そして夜が更けた。月の下にはサハラ砂漠の砂丘が広がっていました〟この一文が、この香りのベースノートなのでしょう。

ゲランのサハラ砂漠への浪漫飛行は、飛行機が空へと舞い上がるようなソーピィーかつ、目もくらむほどにピリっと弾けるジンジャーとシナモン、クローブ、土っぽくスパイシーな黄金色のターメリック(ウコン)のスパイスブレンドからはじまります。それはまるで、重力に逆らい天上に駆け上ることを夢見る人類のロマンを、〝天と地のスパイス〟のコントラストにより表現しているようです。

すぐに今にも地上にふたたび落ちていきそうな感覚の中、いきいきと緑豊かに蜂蜜のニュアンスも秘めた、ほろ苦いネロリと爽やかに甘いオレンジ・ブロッサムが現れます。それらがターメリックと結びついてゆき、エンジンが本格起動するように、身も心もすべてが軽くなるような気分で満たされてゆきます。

やがて、クリーミーなサンダルウッドと大地を想わせるベチバーが、すべてをひとまとめにして、心地良い甘き浮遊感で、モロッコの太陽のようなネロリの華やかな温かさと、サハラ砂漠のようなターメリックのスパイシーな温かさで、身体の周辺を浮遊するようなムードを広がらせてゆきます。

とてもロマンティックな香りです。今は失われた時代への憧れを香りに投影したような、夢に向かってひたむきに進んでいく女性と男性の心の琴線に触れるターメリックが、黄金色に輝く砂漠の旅へと誘う冒険心を湧き上がらせてくれるのです。

このフレグランスの興味深い点は、とてもフレッシュでありながら、高級なコロンのように持続性があることです。スパイスが効いているので、私はこの香りをパワーフローラルと呼んでいます。

デルフィーヌ・ジェルク

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香水データ

香水名:ネロリ プラン シュッド
原名:Néroli Plein Sud
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:デルフィーヌ・ジェルク
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/49,500円、200ml/70,290円
公式ホームページ:ゲラン


トップノート:ジンジャー、ターメリック、シナモン
ミドルノート:ネロリ、チュニジア産オレンジ・ブロッサム
ラストノート:ベチバー、サンダルウッド