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クリスチャン・ディオール

【ディオール】ミス ディオール ブルーミング ブーケ(ルイーズ・ターナー)

クリスチャン・ディオール
©DIORBEAUTY
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ミス ディオール ブルーミング ブーケ

原名:Miss Dior Blooming Bouquet
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:ルイーズ・ターナー
発表年:2014年
対象性別:女性
価格:20ml/5,500円、30ml/8,690円、50ml/13,750円、100ml/19,250円

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約10年間、ミス ディオールのセンターをつとめる香り

©DIORBEAUTY

女性の次に、神が創造した偉大なもの。それは花です。

クリスチャン・ディオール

ディオールから2014年に発売された「ミス ディオール ブルーミング ブーケ」は、発売後10年近く経つ今でも「ミス ディオール シリーズ」の中で爆発的に売れている香りです。そのためディオールのコスメカウンターでは、何はともあれ最初にお薦めする「ディオールの看板娘」と言われています。

「ブルーミング ブーケ」とは、〝開花する花束〟という意味です。この香りは元々は当時の専属調香師フランソワ・ドゥマシーにより調香されたと言われていました、しかし、最近、2014年にルイーズ・ターナーにより調香されたと公表されました。

しかし、現在発売されている「ミス ディオール ブルーミング ブーケ」が、私たちの肌にたどり着くまでに、このフレグランスは、過去に2回のリニューアルを重ねていました。

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二つの「元祖ブルーミングブーケ」

ミス ディオール シェリー ブルーミング ブーケ 2008年版 ©DIORBEAUTY

ミス ディオール シェリー ブルーミング ブーケ 2011年版 ©DIORBEAUTY

それは2008年8月に発売された「ミス ディオール シェリー ブルーミング ブーケ」から始まりました。この香りは2007年に発売された「ミス ディオール シェリー オードゥ トワレ」が、アジアでは全く受けなかったため、アジア市場向けに〝サマーヴァージョン〟として再調香されたものでした。

実は、ルイーズ・ターナーはこの作品を調香した人なのです。彼女は2007年にフランソワ・ドゥマシーと共に、ファーレンハイト32を調香しました。この時に元祖「ブルーミング ブーケ」も調香していたのでした。

初代「ブルーミング ブーケ」は、フレッシュなマンダリンを中心としたシトラスの香りからはじまります。すぐにパウダリークリーミーなホワイトムスクが注ぎ込まれ、円やかな甘さに包まれてゆきます。

やがて、明るくみずみずしいピオニーが開花し、香りの奥にピーチのようなフルーツを感じさせながら、清潔感に満ちた石鹸のようにキラキラと輝きながら肌に馴染んでゆきます。

そこには「ミス ディオール シェリー」(2005年)のストロベリー×ポップコーンのような香りの片鱗はありませんでした。

そして、2011年にニューヴァージョン(二代)が発売されました。全体的にこの香りも同じく、石鹸のようなクリーンなフローラルなのですが、仄かなパチョリとほのかなローズが加えられていました。

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〝女性らしさが開花する〟瞬間の香り

©DIORBEAUTY

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シルクのように優雅ななめらかさを持つフレグランスです。正面から誘うのではなく、ふんわりと光が広がる、オーラを纏うような香りです。それは柔らかさという究極のエレガンスを持った「繭」のようです。

フランソワ・ドゥマシー

そして、2014年1月に「ミス ディオール ブルーミング ブーケ」とリネームして生まれ変わったのが現在発売されているものです。それは〝女性らしさが開花する〟瞬間の香りともいえます。

太陽の輝きを燦燦と浴びた(オレンジよりも香りが強くフルーティーな)シシリアン・マンダリンとカラブリアン・ベルガモットの樹の下でこの香りは展開してゆきます。まさに収穫する一日前のような冷たさも兼ね備えた瑞々しい柑橘の輝きに包み込まれてゆきます。

すぐにフレッシュでジューシーな甘いシトラスの芳香の中、桃色の小妖精が語らいはじめます。

ピーチとアプリコットのジューシーなフルーツの甘さが、春を運んできます。そして、朝露を含んだピオニーとちょっぴり辛口な温かいダマスクローズ、そして、可憐なるジャスミンそれぞれがその花びらを開花させてゆくのです。

それぞれのパステル・フローラルの香りに奥行き(個性)を与えないことにより、(爽やかな青空を愛さない人がいないように)誰もが愛さずにはいられない花束の香りを作ることが出来たのでした。そして、これこそが「ブルーミング ブーケ」の大いなる個性なのかもしれません。

やがてパチョリが水気を失ったマンダリンとベルガモットを最後にひと絞りし、花々にその最後の果汁を振りかけ、苦い失恋の記憶を蘇らせていくのです。

かくして、フレッシュに弾ける若さに、涙を流した想い出が加わるのです。そして、そんな心の汚れをホワイトムスクがさっぱりと洗い流しながら、抱きしめられるように清らかなクリーミーソーピィーな香りですべてを包み込んでくれるのです。

この香りの魅力は、(パウダリーさを伴わない)控えめなフローラルブーケが生み出すエレガンスです。だからこそ、物足りないと考える人が、たっぷりこの香りのスプレーをプッシュしてしまうと、すべてのバランスが崩れてしまうのです。

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さあ、メイクアップするようにフレグランスを吹きかけるのよ!

©DIORBEAUTY

ディオールの真骨頂。それは「ミス ディオール」という香水史における類稀なるグリーンシプレの傑作を、徹底的に形骸化し、アジア市場を席巻するアイドルグループに変えたところにあります。

それは、メイク力を磨き上げれば、誰でも彼女になれる!という意味において、憧れの乃木坂46のような存在とも言えるフレグランスなのです。〝さあ、メイクアップするようにフレグランスを吹きかけるのよ!〟という号令の下、誰でも、どこでも、どんな時でも、少し頑張れば可愛くつけこなせるフレグランスなのです。

フランソワ・ドゥマシーの成し遂げた快挙。それは、細かい説明を必要としない良い香りを作ることに成功したということです。2014年以降、日本において、香水販売の効率化が推し進められるきっかけとなった香りとも言えます。

〝最初の3分にすべての魅力を濃縮し、お客様の即決をうながすのだ!〟という意味においては、「最強の販売力を持つ香り」です。

しかし、以後、ディオールの絶対王者として君臨するこの香りに対して、新作が発売されるたびに、ディオールの販売員たちは「ブルーミングブーケの呪い」に悩まされることになるのです。

キャンペーン・モデルは、〝ミス・ディオールの顔〟ナタリー・ポートマンがつとめていました(キャンペーン・フィルムは、ソフィア・コッポラにより撮影された)。

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2021年に発売された〝ディオール ボビー〟

2021年版 ©DIORBEAUTY

1952年版 ©DIORBEAUTY

クリスチャン・ディオールとボビー ©DIORBEAUTY

2021年1月22日より限定発売された「ミス ディオール ブルーミング ブーケ〈 ボビー エディション〉」(90mL 48,000円、シリアルナンバー付き、2023年現在に至るまで不定期に限定発売されています)。

ボビーとは、クリスチャン・ディオールの愛犬の名前です。1952年、クリスマス・コレクションとして限定登場した、特別なフレグランスボトル「J’appartiens à Miss Dior(ご主人様はミス ディオール)」にオマージュを捧げたものです。

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香水データ

香水名:ミス ディオール ブルーミング ブーケ
原名:Miss Dior Blooming Bouquet
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:ルイーズ・ターナー
発表年:2014年
対象性別:女性
価格:20ml/5,500円、30ml/8,690円、50ml/13,750円、100ml/19,250円


トップノート:シチリアン・マンダリン、カラブリアン・ベルガモット
ミドルノート:ピンクピオニー、ダマスクローズ、ジャスミン、アプリコット、ピーチ
ラストノート:ホワイトムスク、パチョリ