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『ファイト・クラブ』Vol.3|ブラッド・ピットとヘレナ・ボナム=カーター

ブラッド・ピット
ブラッド・ピット
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オープニングは、銃を口に咥える「僕」から始まる

男同士が殴り合うことによって、得られるカタルシスは、間違いなく男同士のセックスで得られるカタルシスを暗喩しているのでしょう(原作者のチャック・パラニュークは同性愛の方です)。

それは第三の性=アンドロギュヌスとのセックスをも連想させます。女性にない器官を知る者同士だからこそ分かる快楽の領域というものが存在するはずです。そして、この映画にはほとんど女性が出てきません。

それにしてもブラッド・ピットは、『オーシャンズ11』でもそうなのですが、女性とラブゲームをする作品よりも、男同士で仲良く食べ物を頬張る作品の方がイキイキしています。『レザボア・ドッグス』の男臭いオープニングもそうですが、ここに女性と男性の決定的なファッション性の違いが生まれます。

女性の美しいファッションの多くは男性を対象にする。しかし、男性が魅力的なファッションは、女性ではなく、同性を対象にしているという真実です。

ファイトクラブ・ソープを持つブラッド。

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タイラー・ダーデンのファッション7

ゴルフウェア
  • ピエール・カルダンの白×黒ブルゾン
  • 黒地に赤のパイピングのポロシャツ
  • トリコロールカラーのストライプパンツ。『サタデー・ナイト・フィーバー』でジョン・トラボルタが履いてそうな形。

『ファイトクラブ』のファッション感度は細部に渡ります。

ピエール・カルダンのロゴ入りブルゾンでゴルフするシルエットが美しい。

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タイラー・ダーデンのファッション8

HUSTLERシャツ
メッシュのHUSTLERシャツとバーガンディ・パンツ

僕は映画というメディアの限界に挑む連中と働きたいんだ。それでなければ、正統な映画を作る巨匠だね。それ以外はぜんぜん興味ない

ブラッド・ピット 2002.2月号 エル・ジャポン

ハスラーとは、1974年にラリー・フリント(1978年に銃撃され下半身不随となる)によって創刊されたポルノ雑誌。1998年より、ハスラーハリウッドとして、ランジェリー販売を開始しました。これはさすがに街中では着ることは出来ないテイストです。

ボディラインを強調したシルエット。

ブラッド・ピットは役作りのため前歯を削りました。

履いているバーガンディのパンツはコレと同じものです。

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こんなすごいファック、小学校以来だわ!

そして、マーラ・シンガーが煙草の煙の中から登場します。

唯一の女性の登場人物。

なんなんだ!この髪型は!ムーミンで見たような…とにかく掟破りの存在感です。

タイラー曰く「どん底まで落ちようとする女」

「よく練習したわね?考えたとおりに言えたの?」


「人は愛する相手を傷つけ、傷つける相手を愛する」

ここで、本作のヒロインであるヘレナ・ボナム=カーター(1966-)の話をしましょう。オックスフォード大学入学を辞退してまで女優の道を邁進した彼女は、曾祖父にイギリス首相を持つ名家(父親は銀行頭取)の出の人です。

そんな彼女が演じるマーラ・シンガーは、「僕」が「腫瘍ができたら〝マーラ〟と名づけよう」と言い切るほどのとんでもない役柄です。

マーラがザナックスを過剰摂取するシーンで着ている青いスパンコールのドレスは、ジュディ・ガーランドへのオマージュです。

マイケル・カプラン

ヘレナは役作りとして精神的に壊れていた時代のジュディ・ガーランドをイメージし、目のメイクアップを「マーラはメイクなんて下手なはず」と、利き手ではない左手ですることにしました。服装のコーディネイトも、〝捨てられたウエディングドレス〟など拾った服をただ着ている感じを出すようにしました。

しかも髪型が大五郎みたいでめちゃくちゃで、メイクも汗の上に上塗りしてる感が凄く、本気で汚いゴシックメイクになってます。であるにもかかわらず成立する存在感がすごいのです。彼女こそ本当のボロルックの体現者とも言えます。

全く紅一点の役柄を果たさない彼女の存在が実に効果的です。壊れているのか、人類で一番まともなのか分からない彼女がタイラーとセックスした後に言うセリフが、「あんなすごいファック小学校以来だわ」でした。

当初マーラ役の候補にはコートニー・ラブ(カート・コバーンの妻)やウィノナ・ライダーも挙がっていました。

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リック・オウエンスのコート

手に持つ衣服は、コインランドリーから失敬したもので、古着屋に直行してお金に変えるのです。

このシーンのコートは、リック・オウエンスです。

交通量の激しい道路の中央線の上に平気で立つマーラ。

さすがマイケル・カプラン(衣装デザイナー)なのは、2002年秋冬ニューヨークコレクション(タイトルは「glundge 」)でプレタデビューし、一躍ファッション界の貴公子となる寸前のリック・オウエンスの衣装をマーラ・シンガーのスタイリングに取り入れていることです。

リック・オウエンスは、ロサンゼルスから世界的なファッション・デザイナーになった当時としては先駆的なデザイナーでした(ただしニューヨークのパーソンズ出身です)。

ヨーロッパの高級レザーファッションをコピーするLAのアンダーグラウンドな会社で、パタンナーとしての腕を磨き上げ、1994年に自身のブランドを立ち上げた異色の経歴の持ち主です。

公務員の息子としてかなり保守的だったリックは、ミシェル・ラミーと知り合い、15歳以上も離れた彼女の自由な精神に感化され、彼女を永遠のミューズとし(2007年に二人は結婚しています)、アシンメトリーなカットからスキンタイトなルックまで、ダークトーン、ドレープ、脱構築を持ち味として、グランジとグラマラスが同居した〝生粋のゴシック〟を作り出していったのでした。

そう言えば、マーラ・シンガーはどこかミシェル・ラミーに似ています。ただし、マーラは「自分のことをクールと思っている訳ではない」役柄なので、衣装はそれ以外は、すべて古着屋で調達したものでした。

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タイラー・ダーデンのファッション9

バスローブ
  • キャニオン・グループ8814・コーヒートーク。湯気の立ったコーヒーカップのアップリケつき、ラベンダーカラーのレディースのバスローブ
  • オリバー・ピープルズのOP-523



打ち合わせ中の主役二人と、 デヴィッド・フィンチャー監督。

作品データ

作品名:ファイト・クラブ Fight Club (1999)
監督:デヴィッド・フィンチャー
衣装:マイケル・カプラン
出演者:エドワード・ノートン/ブラッド・ピット/ヘレナ・ボナム=カーター/ミート・ローフ/ジャレッド・レト