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【キリアン】バック トゥ ブラック(カリス・ベッカー)

カリス・ベッカー
カリス・ベッカーキリアンブランド調香師香りの美学
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バック トゥ ブラック

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Back to Black
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:カリス・ベッカー
発表年:2009年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/37,950円

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〝暗黒へと逆戻り〟する媚薬

©Kilian

蜂蜜には、悪魔と天使の2つの顔があります。オリエンタルの香りにおいて、それは甘くて安らぎを与える効果があり、子供の頃に戻ったような気分にしてくれます。しかし、一方で、フェミニンな香りの中では、少しの蜂蜜が存在するだけで、非常にセクシーな気分を生みます。

クリスティーヌ・ナジェル

キリアン・ヘネシーは2007年10月に「バイ・キリアン」(現在は「キリアン」)という名でブランド創業するにあたり、6作品からなるコレクション「ルーヴル ノワール —愛が描く甘い誘惑の世界—」を発表しました。このコレクションは、三つのテーマに分けられています。

バック トゥ ブラック(暗闇へと逆戻り)」には「アフロディジアック(媚薬)」という副題がついています。Artificial paradises(人工の楽園、ボードレールの詩より)のテーマで生み出された香水です。

人工の楽園とは、ドラッグ(阿片など)によって人為的に到達できる〝理想の世界〟のことです。男らしさはあるが、女性も身に纏える香水です。一言で表すならpain(苦)です。そして、堕ちていく快楽を知ってしまった人のための香りなのです。

それは、ブラック・アンド・ホワイトの時代に戻って、その時代にしか存在しなかった官能と美のパワーを我が手にしようという「暗黒」の持つ力への誘いでもあるのです。

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「バック トゥ ブラック」の持つ二つの意味


この香りは2つの理由で「バック トゥ ブラック」の名になりました。

1つ目の理由は、前作「プレリュード トゥー ラブ」が、シトラスを使ったフレッシュな香りであったため、キリアン自身のトレードマークである、よりダークでセクシーな香りの世界観に戻したかったためです。

そして、メインの理由とも言える2つ目の理由は、キリアンが、2006年に発表されたエイミー・ワインハウス(1983-2011)のアルバム『バック トゥ ブラック』をとても愛しており、そのヴィンテージ・ジャズ/ソウル・スタイルからこの香りは大いなる影響を受けたためでした。

ここでエイミー・ワインハウスについて少しおさらいしてみましょう。ユダヤ系の移民の子としてロンドンで生まれた彼女の母方の叔父はプロのジャズミュージシャンであり、父方の祖母は歌手でした。

エイミーは2003年に、ビリー・ホリデイのようなハスキーな歌唱によって、ファーストアルバム『フランク』で、彗星の如く現れ、すぐに脚光を浴びました。そして、2006年にラスト・アルバム(セカンド・アルバム)『バック トゥ ブラック』を発表し、全英1位、全米2位となりました。

2008年の第50回グラミー賞において、最優秀新人賞や最優秀楽曲賞など5部門を受賞し、世界的なスーパーシンガーの仲間入りを果たしました。

しかし、プライベートにおいては、薬物・アルコール依存症に苦しみ、2011年7月23日、ロンドンの自宅で、ドラッグとアルコールの過剰摂取で死亡しているところが発見されたのでした。享年27歳でした。

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エイミー・ワインハウスの「バック トゥ ブラック」

そんな彼女が歌う「バック トゥ ブラック」の歌詞は要約すると「恋人にフラれ、その彼は前の彼女のもとへと戻っていく。じゃあ、私はどこに帰ったらいいの?闇に帰るだけ(back to black)」という内容となります。

私は「バック トゥ ブラック」を生み出すとき、エイミー・ワインハウスの声を香りに翻訳したものになるように作りました。

キリアン・ヘネシー

つまりは「愛によって墜ちる闇」を描いた香りとも言えます。エイミーの歌も人生もそうでしたが、人生を支配するのは、所詮は恋愛なのです。

愛が幸せを謳歌させる素晴らしい側面を描いた香りは、数多くあれど、愛の果てが、地獄の底に突き落としていく側面を描いた香りはなかなか存在しません。そして、この香りこそが、それなのです。光に満ちた愛の日々が、一転して闇の世界に落ちてゆき、タバコやアルコールの世界に逃れ、虚ろな目で虚空を見つめ、すべてを忘れたいと思っている瞬間をイメージした香りなのです。

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ビリー・ホリデイの歌声のような香り

私は十年前からひとつの執念にとりつかれていた、それはニューヨークでビリー・ホリデイに会い、彼女が≪生の声で≫唄うのを聴くことだった、ビリー・ホリデイ、ジャズの歌姫、ジャズの貴婦人、レイディー・デイ、ジャズのマリア・カラス、大スター、ジャズそのもの、の声を・・・。彼女は私にとってアメリカの声だったのだ。

フランソワーズ・サガン

「バック トゥ ブラック」それは行くというよりは、戻る(リターン)といった方が正しいかもしれない香りです。この香りは、嗅覚の媚薬を作ろうという試みであり、そのためにタバコの催眠性を求めたのでした。「アブサン(「テイスト オブ ヘブン」)」や「クリスタルメス(「ストレート トゥ ヘブン」)」よりも、危険ではない方法で楽園に行くことができる香りです。

この香りを身に纏うと、とてもセクシーかつエレガントに感じます。そして、私がすべての香りにおいて到達したいと望んできた、品質、セクシーさ、エレガンスのバランスが上手くまとまっている私の理想の縮図とも言えます。

キリアン・ヘネシー

トップノートもミドルノートも実際には存在せず(キリアン曰く「夜つけて、朝起きたら同じ香りがする」という唯一のシングルノートの香り)、ずっと同じ香りが展開してゆくこの香りにとって、ハニーの甘さを中心にしたシダーウッド、インセンスの3つの香りがキーとなります。

この香りのポイントは、フローラル・フルーティーは一切ない、ダークかつアニマリックなハニーという点です。

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愛によって堕ちる闇を感じ取る香り


弾けるベルガモットが自分の周りを包み込む世界から色彩を奪ってゆくようにしてこの香りははじまります。「バック トゥ ブラック」。白と黒の世界にあなたは放り込まれてゆくのです。

すぐに(色々なものがブレンドされた)蜂蜜が、肌の上に滑らかに伸びていくようにその濃厚な切れのいい甘さで包み込んでゆきます。そして、マラスキーノ・チェリーが入ったアーモンド風味の洋酒にスモーキーなタバコが溶け込むことにより、タバコの催眠性が発揮されてゆきます。それはどこかハニー風味のウイスキー・アフォガードのようでもあります。

香りは掻き混ぜられていくように展開するのではなく、ブラックドレスの美女が、物憂げな動作で、シガレットホルダーにシガレットを突き刺し、ライターで火をつけ、ゆっくりと吸い込む仕草そのものに進んでゆきます。さらに、アンバーグリスアコードが、濃厚な甘さになり過ぎないようにストッパーの役割を果たしています。

やがてカモミールティーが注ぎ込まれ、カルダモン、コリアンダー、サフラン、ナツメグといった清涼感を伴うスパイスがジンジャーブレッドのような食感を生み出しながら、タバコの芳香に溶け込んでゆきます。

だんだんとタバコのスモーキーさがオリバナムへと変化を遂げていく中、酒樽のようなシダーウッドとアーシィーなベチバーが溶け合い、甘ったるい官能性に香り全体が包み込まれてゆきます。

この香水で使われているシダーウッドはアトラス産(モロッコにまたがるアトラス山脈で採れる)であり、キリアンのお気に入りのシダーウッドです。アトラスシダーは独特の柔らかい木の香りがします。

ドライダウンにおいて、ある瞬間突然世界が反転するようにオークモスの苦い温かさと、ココアのようにパウダリーなパチョリ、アンバーとバニラにより、スモーキーな世界が、パウダリーな甘いハニーグルマンの世界へと一転するのです。ほんのりと残るラブダナムが白と黒のコントラストをよりはっきりさせる照明のように、退廃的な中毒性を生み出してゆきます。

「黒への帰還」それは、タバコの煙に包まれた記憶または憧れに対する帰還であり、苦い想い出を懐かしむ人間の不思議さとも言えます。香りのスモークに導かれながら、さぁ心の奥底に封印されたタバコに火をつけるのです!

キリアンの「ゴールドナイト」、セルジュ・ルタンスの「シェルギイ」、ディプティックの「ヴォリュート」、ペンハリガンの「ローイング ラドクリフ」、ズーロジストの「ビー」と「モス」ともよく比較される香りです。

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香水データ

香水名:バック トゥ ブラック
原名:Back to Black
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:カリス・ベッカー
発表年:2009年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/37,950円


トップノート:ベルガモット、グアテマラ産カルダモン、コリアンダー、ラズベリー、ブルー・カモミール、サフラン、ナツメグ
ミドルノート:ラオス産ハニー、ソマリア産オリバナム、アトラス産シダー、ベチバー、インドネシア産パチョリ、モス
ラストノート:タバコ、アンバーグリスアコード、シスタス・ラブダナム、アーモンド、バニラアブソリュート、ラオス産ベンゾイン

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