ジバンシィによるものと間違ってよく記載されているイブニング・ドレス
『マイ・フェア・レディ』の舞踏会のシーンで登場するイブニングドレスは、日本のウエディング雑誌でよく取り上げられるドレスなのですが、よくその中で、〝ジバンシィによる〟という但し書きが書かれています。
しかし本作には、ユベール・ド・ジバンシィのデザインによるドレスは、一切登場しません。全てはセシル・ビートンによってデザインされたものです。
この舞踏会のシーンのイブニングドレスはグレーでまとめられたセットに、たくさんのシャーベット・カラーのイブニング・ドレスが登場します。華やかで優美だったエドワード7世の時代(1901-1910)の余韻を、これほどみごとに再現したセットと衣装はかつてありませんでした。
豪華な宝石に包まれて、それ以上に輝ける女性。
レディと花売り娘の違いは、どう振る舞うかではなくどう扱われるかです。
劇中のイライザの台詞
「この英語ではこの娘も一生貧民窟暮らし。だが私なら半年で大使館の舞踏会に公爵夫人として出してやる」というヒギンズ教授の台詞通りに、コックニー英語を話すイライザの英語を見事に矯正したのですが、舞踏会一のレディとして脚光を浴びたイライザが、浮かれ騒ぐヒギンズ教授に対して冷たく言い放つ一言です。
私も落ちたものね。花は売っても、体は売らなかった。でも、レディになったら、体しか売れないのね。
劇中のイライザの台詞
イブニング・ドレスのシーンで、オードリーはその角張った顔を目立たせないように、蜂の巣のように高く結ったヘアスタイルで登場します。高く結い上げた頭にダイヤモンドのピンを留め、長い首にはダイヤのチョーカーを高々と巻き、細い腕に白いサテンのロング・グローブをつけています。
ファッションとは何か?それは最大の欠点を、唯一無二の美の個性へと転化させる芸術的な試みなのです。なぜオードリー・ヘプバーンは、世界的なファッション・アイコンと呼ばれているのか?もはやファッションというものを理解することが、ただ写真を見るだけで十分だという認識を否定しなければなりません。ファッションを理解するためには、膨大な文章が必要なのです。
イライザ・ドゥーリトルのファッション10
ホワイト・イブニングドレス
- 白のイブニングドレス、全体にビーズが施されたレースが重なる
- 白いサテンのロンググローブ
- 高く結い上げた髪にティアラ
- ネックに豪華なジュエリー・チョーカー
- ワインレッドのロングガウン、バックもボートネック
ピンク!ピンク!ピンク!
オードリー・ヘプバーンが大好きなカラーのひとつである、ピンクの衣装が立て続けに登場します。以下登場する二つのピンクドレスは、アイコニックな3つのスタイル(グリーン・ジャンパースカート、マイ・フェア・レディ・ドレス、イブニングドレス)ほど有名ではありませんが、魅力的なシルエットであることには間違いありません。
イライザ・ドゥーリトルのファッション11
ピーチピンク・ドレス
- 花と果物のアクセサリーを施したストローハット
- ピーチピンクのジャケットとアンピールラインのドレス
- 白のハイネックのレースブラウス
- グレーのショートグローブ
- 黒のローヒールパンプス
作品データ
作品名:マイ・フェア・レディ My Fair Lady (1964)
監督:ジョージ・キューカー
衣装:セシル・ビートン
出演者:オードリー・ヘプバーン/レックス・ハリソン/ウィルフリッド・ハイド=ホワイト