アンドロギュヌス

オードリー・ヘプバーン1 『ローマの休日』1(2ページ)

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プリンセスがパジャマ女子になるアンドロギュヌス性

Audrey Hepburn && Gregory Peck in Roman Holiday

シーツの柄、長椅子、机の前の椅子、カーテンの二段構え振りといい部屋全体が、とても魅力的です。

男物のパジャマで眠るアン王女。

男物のパジャマで眠るアン王女。

女性にとって永遠の憧れの瞬間。それは、魅力的な男性のシャツを着るということ。

髪を直してもらっているオードリーと、監督とグレゴリー。

プリンセス・アン・ルック2 ボーイフレンドパジャマ
  • ジョー・ブラッドレーのストライプのパジャマ

この作品の肝は、プリンセスが、普通の女子に憧れると言う逆転の発想にあります(普通は逆です)。つまり、そのような役柄を演じるにおいて、さも毎日上質のネグリジェを着ているかのような気品と、それでいて男物のパジャマからも、隠し切れぬプリンセスの気品を醸し出せる人であるかが重要でした。更に白のブラウスにサーキュラースカートで、颯爽とローマを、夢のように踊るように駆け抜け、ローブデコルテのドレスも着こなせる人でなくてはなりません。


1950年代前半において「ドライブインのレストランのウェイトレス風の娘たちが次々と映画スターになり、本物の気品を感じさせる女優がいなくなった。教育を受け、綴りを間違えることなく、おそらくはピアノも弾けるような若い女優がね」とウィリアム・ワイラー監督がぼやいたほど、アン王女のオーディションは難航しました。そして、ほぼエリザベス・テイラーかジーン・シモンズに決定したその時に、ロンドンのパインウッド・スタジオのスクリーンテストにやって来たのが、オードリー・ヘプバーンでした。1951年9月18日のことでした。

ワイラーはありのままのオードリーを評価するために、彼女がもう終わったと思った後もカメラを回しつづけさせました。「カット」と言われた後、オードリーは王女にふさわしいベッドに坐って、なまめかしく伸びをして、両手で膝を抱いてほほえみながら、「どうでした?これでよかったかしら?」ときいた。

そのスクリーンテストを見た瞬間にワイラーは夢中になりました。「私がアン王女役に求めていた魅力、無邪気さ、才能をすべて備えていた。さらに彼女にはユーモアがあった。すっかり彼女に魅了された我々は「この娘だ!」と叫んだよ」。ワイラーは、テスト終了後にカメラを回しっぱなしにしたオードリーの自然の受け答えの茶目っ気と品の良さの不思議な同居に惹きつけられたのでした。

スクリーンテストの映像の中に、コスチューム・フィッティングのシーンがあるのですが、この時の全ての物腰が、世界中の王室が教科書にしたくなるほど優雅さと威厳に包まれています。ドレスの形をあらゆる角度から見せていくためのステップワークも、ブラウスの袖をまくり、ハンカチーフを首に巻く仕草も、全ては魔法のようです。

オトコの服を着るオンナはいつの時代も美しい

オードリーの気品。それは彼女の前半生により生み出されたものでした。第二次世界大戦前夜の1929年5月4日、ベルギーのブリュッセルで、投機家のイギリス人とオランダ貴族の娘として生まれました。8歳で、イギリスのケント州にある寄宿学校に入学し、ヨーロッパ中に戦火が広がる中、1939年に母親と共に中立国オランダに帰国します。

しかし、翌年40年にオランダは、ナチス・ドイツに侵略され、占領されてしまいます。オランダのウィルヘルミナ女王はロンドンに亡命しました。大戦中、オードリーは栄養失調に苦しみます。しかし、6年間バレエを習い続け、15歳でバレリーナになりました。反ナチスのレジスタンス運動にも従事します。この時、オードリーの叔父はレジスタンス容疑で射殺されました。ちょうど同い年のオランダのユダヤ人アンネ・フランクもナチスに殺害されています。

ナチスドイツ占領下の地獄のオランダ生活を生き抜き、大戦終結後に、本格的にバレリーナになる訓練を受けます。そして、オランダでも有数のバレリーナになるのですが、170cmの長身という将来性の問題もあり、舞台のコーラスガールの方が逼迫する家計の足しになるので、バレリーナの道を断念しました。彼女の気品は、甘やかされた生活の中で備わった気品ではなく、生死を分ける日常の中から身についた誇りの伴った気品でした。

彼女が、映画史上に残るプリンセスを演じることが出来たのも、この気品があったからなのです。それが本物のプリンセスにはない、人生の悲しみを知るものにしか醸し出せない愁いを帯びた神話の中のプリンセスを生み出していく結果となったのです。

だからこそ、王宮逃亡からパジャマシーンにつながる世間知らずな美少女っぷりが生きてくるのです。愁いがあったからこそ、それから解放された瞬間のオードリーは他を寄せ付けぬ輝きに包まれているのです。特に、パジャマを着たあのオードリーとグレゴリー・ペックの雰囲気が、兄妹のように似ているわけなのですが(口周りが格別に)、これはメイクアップ・アーティストが意図的にそうしたのか分からないですが、オードリーが男性の服装を着ると、少年のような魅力を宿すことによるのでしょう。この長髪を切るまでのオードリーは間違いなく、バンビのようなしなやかな小鹿の躍動感に満ち溢れています。それは中性的な魅力とも言い換えることが出来ます。

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