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【ブルガリ】アクア プールオム マリン(ジャック・キャヴァリエ)

ブルガリ
©BVLGARI
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アクア プールオム マリン

原名:Aqva Pour Homme Marine
種類:オード・トワレ
ブランド:ブルガリ
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2008年
対象性別:男性
価格:50ml/13,090円、100ml/19,470円
販売代理店ホームページ:KAWABE

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軽やかな〝海のジュエリー〟の香り

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マリンノート(オゾンノートではなく)は、ブルガリから誕生したイメージがあるのですが、実際のところ、ブルガリがマリンノートの香りを発表したのは、アルマーニが「アクア ディ ジオ プールオム」によって一大旋風を巻き起こした10年後の2005年の「アクア プールオム」によってでした。

アクア シリーズ(Aqvaとスペルされる理由は、ラテン語にはuが存在しない為)第二弾として発売された「アクア プールオム マリン」は、ジャック・キャヴァリエにより調香されました。

海藻ポシドニア・オセアニカ © Ajuntament de Sant Josep de Sa Talaia 2022

前作と同じくこの香りの背景には、地中海の浅瀬に生息する海藻ポシドニア・オセアニカが広がっています。それは深海ではなく、穏やかな青い浅い海の底で感じる『宝石のような海の帝国』を表現しようとしているのです。

まるで地中海の海水に反射する太陽の眩い光と、打ち寄せる波のパワーを吸い込んだ海藻の協奏曲によって、サファイアブルーとエメラルドグリーンを宝石のように身にまとう男たちを生み出そうとしているようです。それは躍動するフレッシュな海のパワーと美しさを想起させる、マリンノートに新しい役割=〝海のジュエリー〟をもたらす香りをさらに〝軽やかに〟したものです。

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エメラルドブルーのどこまでも歩いていけそうな遠浅の海。

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海の水=OCEAN WATER(SEA WATERではなく)をテーマにした香り第二弾は、明るくて軽快な太陽の新鮮な空気を吸い込んだ(メロン、瓜のような)カロンが広がる中、ピリリと弾けるグレープフルーツとネロリのフレッシュな香りからはじまります。

オリジナルには存在しなかった冷たいグレープフルーツが、遠浅のエメラルドブルーの海がどこまでも続いていく、果てしない物語のはじまりを告げてくれます。

すぐに、地中海の浅瀬に生える〝海をキレイにする=海のオリーブ〟海藻ポシドニアの塩味が広がってゆきます。ですが、香り自体は、一切の海藻が存在しない、驚嘆させられるほど、うつくしい〝白い浜辺とエメラルドブルーのどこまでも歩いていけそうな遠浅の海〟を連想させます。

そんなビーチを恋人と二人で独占する贅沢な瞬間に満たされていくのです。やがて、ミネラルアンバーと(レモンのような)シダーウッドが、素肌の上に流れてゆく穏やかな波のように広がってゆきます。

キャヴァリエが〝透き通るような〟イメージを投影したというこの「マリン」は、オリジナルよりも癖のない〝マリンの輝き〟に満ち満ちています。 

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「スポーツジムで無料配布するシャワージェルの香りとしては申し分ない。それ以外の役には立ちそうもない。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

日本一のフレグランス・スペシャリストの方の貴重な「アクア プールオム マリン」のご説明はこちらです↓

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チャンドラー・バールによる解説

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この香りには2つの指紋があります。1つ目はジャック・キャヴァリエのものです。彼は最近非常に成功を収めている多作の調香師で、毎年世界中のフレグランス製品の4分の1を生み出しているようです。2つ目は、業界ではカロンとしても知られる分子、メチルベンゾジオキセピノンの紛れもない香りです。 キャヴァリエは、群衆の中からそれを引き抜き、香水業界がこれまでに見た最大の商業的成功のいくつかの主役にそれをキャスティングしました。そして1990年代の香水のスタイルを事実上定義しました。ブルガリが2008年に、アップデートされた90年代の香りを発売するということが賢明な選択をしているかどうかは、また別の問題です。

多くの優れた調香師がそうであるように、キャヴァリエは芸術家であり技術者でもあり、いくつかの香りの原型を熟知しています。彼は、キャロライナ・ヘレラの非常に過小評価されているエッジの効いたフェミニンさが印象的な「シック」(2002)、ジバンシィのラズベリー・グルマンの香り「ホット クチュール」(2000)、そしてフランスの伝統主義で美しくアップデートされたゴルチエのフローラル「クラシック」 (1993) を創作しました。

彼は広大な美的領域を持っています。彼は、下品なスタイル(ロベルト・カヴァリの魅惑的なネオンマンゴー「サーパンタイン」)もできるし、超商業的なアメリカのモール・スタイル(カルバン・クラインの「ダ ヴィンチ コード」)もできるし、素晴らしいハイエンドの贅沢もできる(ノワール デ ノワール」と「タスカン レザー」、共にトム・フォードのもの)。

しかし、キャヴァリエが歴史を作ったのはカロンのおかげです。 カロンは、微量のオゾンを含む新鮮な海水の香りを与える合成物質です。1992 年、キャヴァリエはイッセイ ミヤケの「ロー ドゥ イッセイ」でそれを発表し、1996年にはアルマーニの「アクア ディ ジオ プールオム」で再びそれを行いました。

遅ればせながらブルガリはキャヴァリエのスーパーマリンを求めたのでした。 ブルガリのプレスリリースでは、海風に関する言葉が散りばめられ、グレープフルーツやネロリなどの言葉が使われていますが、実際にここにあるのは、自然界とはまったく関係のないフレグランスです。

「アクア」は、強力な空調設備を備えた高価なエグゼクティブ・ジムで海辺の匂いがする消臭石鹸の香りを放つ、「ロー ドゥ イッセイ」の、当たり障りのないハンサムな息子です(私の推測では、キャヴァリエは、火打ち石のようなミネラル感を演出するために、サリチル酸塩をいくつか加えたのではないかと予測します)。ほとんどの男性は気に入ることでしょう。

チャンドラー・バール(ニューヨーク・タイムズ、2008年)

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香水データ

香水名:アクア プールオム マリン
原名:Aqva Pour Homme Marine
種類:オード・トワレ
ブランド:ブルガリ
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2008年
対象性別:男性
価格:50ml/13,090円、100ml/19,470円
販売代理店ホームページ:KAWABE


トップノート:ネロリビガラード、グレープフルーツ
ミドルノート:ポシドニア、サップ
ラストノート:パチョリ、ヴァージニアシダー、ローズマリーフラワー、ホワイトシダーウッド、アンブロクサン、クラリセージ