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ペンハリガン

【ペンハリガン】バイオレッタ(マイケル・ピクタール)

ペンハリガン
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バイオレッタ

原名:Violetta
種類:オード・トワレ
ブランド:ペンハリガン
調香師:マイケル・ピクタール
発表年:1976年
対象性別:女性
価格:50ml/14,000円、100ml/20,000円

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天然のニオイスミレと、ゲーテの「すみれ」の香り

©Penhaligon’s

1950年代から70年代にかけてゆっくりと衰退の道を歩んでいたペンハリガンを復活させたのは、「ハマンブーケ」を愛する有名なイタリア人映画監督兼オペラ演出家であるフランコ・ゼフィレッリでした。彼は1975年に、ペンハリガンを買収し、シーラ・ピクルスをクリエイティブ・ディレクターとして、ブランドの再興を託したのでした。

そして、彼女は、まず最初にコヴェント・ガーデンに店舗をオープンし、ボトルキャップが四角に変更されていたのを、ウィリアム・ペンハリガンがデザインしたオリジナルの「ハマンブーケ」のボトルと同じようにラウンド・ストッパーと大きなリボンに戻しました。

1975年から1998年までシーラは、ペンハリガンの責任者として、ウィリアム・ペンハリガンとウォルター・ペンハリガンが調香したレシピを徹底的に分析し、過去のヘリテージを復活させただけでなく、新たに調香師を雇い、女性のためのさまざまな伝統的な花の香りを生み出していったのでした。

そのうちのひとつがマイケル・ピクタールにより調香され1976年に発売された「バイオレッタ」でした。19世紀のヴァイオレットの香水は、1893年にイオノンが発見され、安価にヴァイオレットの香りが生み出せるようになるまで、パルマ産の天然のヴァイオレットを原料とした非常に高価なものでした。

「バイオレッタ」は、そんな19世紀のヴィクトリア朝への憧れに浸ることができる、天然のニオイスミレ(sweet violet)を蘇らせた香りです。

19世紀のヨーロッパにおいて、香りの良いスミレとして、主に二種類の品種が広く栽培されました。共に冬から咲くスミレであるニオイスミレ(Viola odorata=Sweet violet)とパルマスミレ(Parma violet)です。

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自然とひとつになるように、息をのむほど美しいすみれの香り

野に咲くすみれ、
うなだれて、草かげに。
やさしきすみれ。
うら若き羊飼の女、
心も空に足かろく、
歌を歌いつ
野を来れば。

「ああ」 と、切ない思いのすみれそう。
「ああ、ほんのしばしばでも、
野原で一番美しい花になれたなら、
やさしい人に摘みとられ
胸におしつけられたなら、
ああ、ああ
ほんのひと時でも」

ああ、さあれ、ああ、娘は来たれど、
すみれに心をとめずして
あわれ、すみれはふみにじられ、
倒れて息たえぬ。されど、すみれは喜ぶよう。
「こうして死んでも、私は
あの方の、あの方の
足もとで死ぬの」

『すみれ』ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 高橋健二訳

春を運ぶ花は数あれど、これほど華やかさとは無縁な花はありません。いつもひっそりと咲いているすみれ(ヴァイオレット)。でもよく見てみるとこれほど、ちいさくてしずかに華麗なる色合いを持つ花もそうないのです。

都会にひっそり咲くすみれというよりも、ノスタルジックな田舎のあぜ道にひっそり咲く朝露に洗われたすみれのように、パウダリーなすみれが、ツンと涼しげなゼラニウムの風に吹かれ、軽やかに明るいベルガモットの陽光を浴びながら静かにゆらいでいる情景からこの香りははじまります。

すみれの葉(ヴァイオレットリーフ)も加わり、すーっと青々しい清涼感と共に、シダーに乾かされ、切なさとはかなさを広がらせてゆくすみれは、やがて、少女の柔らかな手で摘み取られます。

決して草原の輝きのようではない、あぜ道の草の涼しい息吹が、すみれの温かな吐息とひとつになる瞬間、心の中で閉じられていた窓がすべて開け放たれてゆくように澄み渡る香りに満たされてゆきます。

そして、その少女の胸に抱かれるように、ムスクとサンダルウッドに温かく包まれ、すみれは甘く清らかに、パウダリーな余韻を残してゆくのです。

それは、誰の心にも残る、懐かしい自然の香りを心に染み入らせてくれるようです。目を閉じて、深呼吸をして、平凡な日常に感謝したくなる香り。都会で香ると、心をコリをほぐし、田舎で香ると、心は自然とひとつになってゆくそんな香りです。

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自転車を漕ぐ、原節子様の匂い

『青い山脈』の原節子様。

『晩秋』で自転車に乗る、原節子様。

まるで自転車を漕いでいる原節子様から、フワッと舞う匂いのようです。

クラシカルで、上品で、笑顔が柔らかい大人の女性。でも妖精の存在を信じている、ロマンティックな少女のような心も失っていない〝自然の女性のうつくしさ〟を体現しているような、青空と道ばたのすみれがご挨拶するような香りです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「バイオレッタ」を「正真正銘のヴァイオレット」と呼び、「まずスミレの花の香りは、1880年代のイオノンの発見によって手に入りやすくなり、わずか数年で値段も劇的に下がった。その後に葉っぱの匂いの成分も見つかった。こちらは主としてオクチン(アセチレン)エステルだ。イオノンは香水だけでなく菓子の世界でも大いに活躍したが、今はフローラル系の主流の座を退き、独演での活躍はめったになく、バレンシアガの「ル ディス」やセルジュ・ルタンスの「ボワ ドゥ ヴィオレット」といったエキセントリックな組み合わせで使われている程度。」

「今の主流は、イオノンと構造的には似ているがずっとフルーティで洗練された香りのダマスコンやイロンだ。今でもスミレにこだわるブランドは少なく、イオノンの全盛期に創業したペンハリガンが孤塁を守っている感じだ。」

「ビオレッタはスミレそのもので、パウダリーウッドにパープルシュガー、かすかなグリーンアコードもいい。」「葉っぱの香りと花の香りが嗅ぎ分けられたら見事だ。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:バイオレッタ
原名:Violetta
種類:オード・トワレ
ブランド:ペンハリガン
調香師:マイケル・ピクタール
発表年:1976年
対象性別:女性
価格:50ml/14,000円、100ml/20,000円


トップノート:ゼラニウム、シトラス
ミドルノート:ヴァイオレット
ラストノート:サンダルウッド、ムスク、シダー