究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ

【ペンハリガン】ティラララ(ベルトラン・ドゥシュフール)

ペンハリガン
ペンハリガン
この記事は約5分で読めます。
当サイトではアフィリエイト広告を利用しています

ティラララ

原名:Tralala
種類:オード・パルファム
ブランド:ペンハリガン
調香師:ベルトラン・ドゥシュフール
発表年:2014年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/29,700円

スポンサーリンク

「ミーダム カーチョフ」というファッションブランド

この香りには壮大な物語があります。そして、その果てに生み出されたこの香りには、他に類を見ない強烈な個性が存在します。

概略を申しますと、この香りは、新進気鋭のロンドンのファッションデザイナーとペンハリガンがコラボレーションした新機軸の香りです。まずはこのデザイナーについて説明していきましょう。

セントラル・セント・マーチンズでウィメンズウェアを学んだイギリス人エドワード・ミーダムと、メンズウェアを学んだアフリカ育ちのフランス人ベンジャミン・カーチョフが、2006年にファッションブランド、ミーダム カーチョフをスタートしました。

2007年AWにロンドン・コレクション・デビューを果たし、英国の懐古主義と、過剰なまでの装飾、そして、ユニセックスなテイストを織り交ぜた、そのアバンギャルドな世界観が話題を呼びました。

そして、フィービー・ファイロがデザイナー・オブ・ザ・イヤーを獲得した2010年のブリティッシュ・ファッション・アワードにおいて、彼らは新人デザイナー賞を受賞しました。


私はテネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』を愛しています。私の内面は、ブランチ・デュボアとスタンリー・コワルスキーに支配されています。どこか狂っていて、凶暴なのです。

エドワード・ミーダム

ミーダム カーチョフは、TOPSHOPとのコラボなどでも話題を呼ぶのですが、資金難に苦しみ、2015年SSを最後にブランドは休止しました。

2014年9月にペンハリガンとコラボしたこの香りは、そんな断末魔と共に生み出されたのでした。

スポンサーリンク

この香りの名は、ある小説の売春婦の名である。

『ブルックリン最終出口』1989年

『ブルックリン最終出口』1989年

1997年にロンドンに引っ越して来たときに、ペンハリガンに出会いました。どの香りも、まさに本物の英国を体現しているようだと感じました。その時以来、私はこのブランドの香りに夢中です。

ベンジャミン・カーチョフ

メイクからショーの演出、そして、その場に振り撒く香水(過去9シーズンに渡り、さまざまなペンハリガンの香りが使われた。それほど二人はこのブランドを愛していた)まで、徹底的にこだわりを持つ二人の完璧主義者にとって、いつか究極の香りを生み出したいという宿願がありました。

そして、ここに、第三の男の登場と相成ります。その男の名をベルトラン・ドゥシュフールと申します。この香りの創造のために雇われた鬼才の誉れ高いこの調香師は、イーストロンドンのスタジオで、二人からブランドのフィロソフィーと彼らが愛するものについてたっぷりと教えてもらうのでした。そして、あるひとつの小説について聞かされたのでした。

幸せな家族はどれもみな同じように見えるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある。

「アンナ・カレーニナ」レフ・トルストイ

それは2014年AWのファッションショーのタイトル「Tralala」についてでした。この聞きなれない名は、二人がヒューバート・セルビー Jrの『ブルックリン最終出口』の中に登場する売春婦の名から引用したものであり、そのテーマを元にこの香りを創造してほしいと言うことでした。

スポンサーリンク

汚れた顔の天使の香り

©Penhaligon’s

アバンギャルド・フレグランスとでも申しましょうか。スペルバウンドのような香りの変化に包まれていく香りです。かつて大阪農林会館に存在した日本極東貿易のガラス戸の中で生息していそうな香りです。

アルデハイドによって爆発力を高めたベルガモットの炸裂からはじまるショーの幕開けは、スパイシーなサフランの閃光と共にはじまります。

すぐに光の中から立ち上る、メランコリーなヴァイオレットが物憂げな空気で満たしてくれます。さぁ、ティラララの登場です。50年代の〝汚れた顔の天使〟は、レザー、ウイスキー、タバコといった場末のバー・アコードに、派手なメイクアップを連想させるパウダリーなアイリス、そして、享楽的な密室のひと時を連想させるバニラ、ベチバー、パチョリに包まれたブジーな温かみを解き放ってゆきます。

さらに、時折現れるチューベローズとイランイランがあなたの心と素肌を官能的な風で翻弄してゆきます。

ヘリオトロープがこの香りに黄金の甘い輝きと郷愁のコントラストを加えてゆきます。そして、特筆すべきは、ラブダナムとベンゾイン、バニラで通常生み出すオリエンタル・アンバーのアコードを、インセンスとオポポナックス、バニラにより生み出していることです。

香りは全体的にレッド&パープルのベルベットや毛皮、サテンで飾り立てた女性のような華やかさに包まれ、享楽主義的なムードが漂うのですが、どこか70年~80年代の堕落した空気=荒廃したスラム街に佇むような不穏な気分も感じさせます。黄金の悦楽と泥だけの欲情を同時に感じさせる香りです。

ちなみにデザイナーの二人が愛している香りは、まずベンジャミンは「ハマンブーケ」(これさえあれば何もいらない)、エドワードは「ハマンブーケ」と「ブルーベル」「カスティーユ」(そして、ゲランのルール ブルー)とのことです。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:ティラララ
原名:Tralala
種類:オード・パルファム
ブランド:ペンハリガン
調香師:ベルトラン・ドゥシュフール
発表年:2014年(廃盤)
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/29,700円


トップノート:アルデハイド、サフラン、ウィスキー、ヴァイオレット
ミドルノート:レザー、チューベローズ、インセンス、カーネーション
ラストノート:パチョリ、ベチバー、ムスク、バニラ、ヘリオトロープ