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『ゲッタウェイ』Vol.1|スティーブ・マックイーン×サム・ペキンパー

スティーブ・マックイーン
スティーブ・マックイーン
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男ならサム・ペキンパーを見ろ!

おれは仕事がほしいんだ。おれは娼婦なんだよ。だから、虫唾の走る相手とも仕事をする。ただし、おれは凄腕の娼婦だがな。

サム・ペキンパー

今、20代のファッション感度の高い男子は、二極化されています。一つは、オフホワイトアミリに代表される鮮度の高いファッションと、サンローラン、トム・フォードに代表される歴史のあるファッション。

前者は、ファッションアイコンを最新芸能人や、雑誌で取り上げられた人に求めます。一方、後者は、ファッションアイコンを昔の映画スターやミュージシャンに求めます。基本的に、前者がファッションの入り口であり、後者がファッションの洗練への道と考えられます。

ファッションIQを洗練させるために、絶対的に必要不可欠なものはファッションの歴史を知ることです。「俺は感性でオシャレを追求できるから、歴史なんて重要じゃねえ」なんて言っている人ほど、スマートに、影ではファッションの歴史と向き合っているのです。

こういう姿勢の人々は、ファッションとは反逆の歴史であることを知っています。だから、彼は、それを忠実に再現しているのです。「ファッションなんて感性なんだよ!こまかい歴史なんて興味もねえ」と声高に宣言することによって・・・

21世紀に入り、20世紀を代表とする男性のファッション・アイコンが注目を集めています。その5本の指に入る1人。それがスティーブ・マックイーンです。ファッションの歴史とは、デザイナーの名前を覚える以上に、ある時代の遺産。映画の中で輝き続けるファッション・スタイルの遺産。これを知り、自分の中に取り入れることにより、個性は生まれていくのです。その絶好のサンプル、政治の世界で喩えるならばジョン・F・ケネディとも言えるのが、マックイーンなのです。

この作品において、当時42才のマックイーンは、『ハイ・シエラ』(1941)のハンフリー・ボガート(彼もファッション・アイコンの1人)の雰囲気を目指したと言っています。

男とは何か?タフなだけではダメ。優しいだけでもダメ。弱さを見せるだけでもダメ。男の魅力は皺が刻まれるようになってから発散されるもの。そして、その皺を希望に出来る男性が魅力的な男性であり、皺に絶望を感じさせる男性は、もはや男性ではなく老人なのです。

男性は、40才にして、老人になるか若者になるかの選択を迫られるものです。そして、20代の男子にとって、そんな男のサンプルを、知っておくことによって、20代にして40男の強みを、身につけることが出来るのです。

サム・ペキンパーとスティーブ・マックイーン。

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スティーブ・マックイーンの魅力

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ハンツビルの刑務所で10日間かけて撮影されたオープニングシーン。エキストラは全て本物の囚人です。

THE GETAWAY, Steve McQueen, 1972

「どうせお前は戻ってくるさ」と出所するマックイーンに言い放つ看守も本物です。

1960年代から70年代にかけて世界中の女性を虜にし、そして、同時に男性にとって憧れとなったスーパーアイコン=スティーブ・マックイーン(1930-1980)。僅か生誕9ヶ月にして、両親は離婚。母親は、何度も幼少期の彼を捨てたアルコール中毒者で、2度の再婚相手の継父にことごとくDVされ、非行少年になったマックイーン。彼の最終学歴は、非行少年の矯正施設という、確実に社会の底辺で人生を終えるだろうと思われていた少年が、どうしてスーパースターに成り得たのか?

マリリン・モンローもそうだったように、底辺から伸し上がる人間のパワーの前では綺麗ごとなぞ通用しません。人々はなぜ、マックイーンを見ると、現代でも只ならぬオーラを感じるのでしょうか?それは、彼の中にそれだけ深い闇が存在するからなのです。

そして、今のアイコンと呼ばれる人たちに最も存在しないのが、この闇なのです。SNSですぐに心の闇を曝け出し、プライベートを切り売りする人たちは、何を生み出し何を得ることに価値を見出しているのでしょうか?

それではスティーブ・マックイーンを象徴する3つのイメージを羅列していきましょう。

1.キング・オブ・クール
2.強情、予知不能、強靭さと脆弱性というありえない組み合わせから生まれた個性
3.型にはまらない悪を演じても悪と感じさせない男っぷり

男の美しさとは何か?それを教えてくれる人。最近の映画のように、ストーリーを現実的に見せようとしても、必ず鍛え上げた肉体を披露する影の薄いハンサムな登場人物と、これまた肉体美を誇るやたらにつるんつるんなスタイルの美女が登場する作品にはない、シンプルな男と女の世界観。これがマックイーンの映画なのです。

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スティーブ・マックイーン×サム・ペキンパー

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スーツがどこまでも似合う男。スティーブ・マックイーン。

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同じスーツは何着も用意された。このスーツはプロテクターを下に装備できるように、全てがゆったりしたサイジングになっている。

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男が男であるために。スーツを着こなすことは男の証なのです。

競演がきっかけに本当の夫婦になった二人。

彼ほど銃を本物のようにみせる役者はいない。

サム・ペキンパー

この二人が会えば、チャールズ・ブロンソン×セルジオ・レオーネ級のメンズワールドが作り出せる。ショットガンとコルトガバメントをぶっ放すマックイーン。拳銃の扱いがここまで上手な俳優もそういない。

刑務所が最も似合う俳優が、ダニー・トレホ(元々サン・クエンティン大学出身なので当たり前か・・・)なら、拳銃が最も似合う俳優はマックイーンかもしれない。

それはリアルに見せるのではなく、リアルさを突き抜けたカッコよさ=ファッションとしての拳銃の見せ方がどこまでも上手なのです。マックイーンはただ歩いてるだけでマックイーン。『荒野の七人』のときのカウボーイ・ハット、『大脱走』のときのグローブとボール、『ブリット』のときの肩がけコートなど枚挙にいとまがありませんが、ほぼ全ての作品において、マックイーンは、自分の映画の中のキーアイテムをファッションにまで昇華させるのです。

この辺りが、オシャレな男子にとって彼が永遠のスタイル・アイコンである所以なのでしょう。

作品データ

作品名:ゲッタウェイ The Getaway (1972)
監督:サム・ペキンパー
衣装:レイ・サマーズ
出演者:スティーブ・マックイーン/アリ・マッグロー