男が惚れる男=スティーブ・マックイーン
私は、ロデオ世界選手権において投げ輪部門のチャンピオンになり、映画でも300本以上の作品で重要な役割を演じ、アカデミー賞も受賞した。しかし、私がもっとも自慢したいことは、スティーブ・マックイーンをアリ・マッグローに引き合わせたことだ。
ベン・ジョンソン(1971年オスカー・ナイトに二人を引き合わせた)
奴とルディ(アル・レッティエリ)が古い農場で撃ち合いをするシーンの時、スティーブは座っている私のそばまでやって来て、空砲の入った45口径の銃で、私のブーツのすぐそばを狙って撃ちやがった。本当に頭にくる男だ!そうやっていつも私をからかっては笑っている!体をいつも鍛えているから、私とケンカになっても、体力の差で彼のほうがおおいに優位だしな。その点で余計、頭がくる。
サム・ペキンパー(マジ切れインタビュー)
スティーブは台詞、とくに長い1人しゃべりを敬遠する傾向があって、ボディ・ランゲージで考えを伝える方を好んだ。彼こそはこの25年の間で、ひとこともしゃべらなくても本物の情感を伝えることのできる最高の役者だったと私は思う。
ウォルター・ヒル(脚本)
アレック・ボールドウィンが1994年に『ゲッタウェイ』をリメイクした時に言っていたのが、「俳優としての目標は、セリフを節約すること」です。多くを語らないから、その人のちょっとした仕草に目がいき、男が男である部分と、女が女である部分が、よく伝わるのです。
男性が魅力的に描かれた映画の主人公は、話しません(その前例を覆したのが、クエンティン・タランティーノであり、彼の凄い所は、ソコにあります)。その最もたる例が、チャールズ・チャップリンとハンフリー・ボガートなのです。
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サム・ペキンパー。昔の映画監督にもファッション・スタイルがありました。
![3816](https://cahiersdemode.com/wp-content/uploads/2016/10/3816.jpg)
ベン・ジョンソンとスティーブ・マックイーン。
ドク・マッコイ スタイル1
ブラックスーツ
- ブラックウールスーツ、シングル、2つボタン・ジャケット、ノッチラペル、ベントレス、6ボタン・ベストの3ピース
- ブラックタイ
- ブラックレザーベルト
- ライト・グレーのコットンシャツ→ホワイトシャツ、グレーピンストライプ
- 黒のカーフレザー、5アイレット・キャップトゥ・オックスフォード
- グリュエン・プレシジョン、金腕時計
- シュロンのRonwinne
本作のマックイーンの衣裳は、大まかに言うと、一種類のみです。それはブラックスーツです。そして、懲役4年の刑に服していたという役柄に忠実に、1972年の時代設定から4年遡った1968年スタイルのスーツを身に着けているのです。
![a22256ed39c7ae935e8b30a54d0c296c](https://cahiersdemode.com/wp-content/uploads/2016/10/a22256ed39c7ae935e8b30a54d0c296c.jpg)
スーツにも、着物と同じく、崩し方の美学があります。
![getaway72sm-cx1-watch](https://cahiersdemode.com/wp-content/uploads/2016/10/getaway72sm-cx1-watch-e1477651998671.jpg)
60~70年代の男の映画には欠かせないアクセサアリーとしての時計。
マックイーンのサングラス
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マックイーンの時計は、グリュエン・プレシジョン。
![](https://cahiersdemode.com/wp-content/uploads/2016/10/getaway1.jpg)
この着くずしの絶妙さ。何気にヘアスタイルは2ブロック。
マックイーンが本作でつけているサングラスは、シュロンのRonwinneです。
シュロンは1865年に創業されたアメリカ最古の眼鏡ブランドであり、1947年に「ロンサー」という史上初のブローライン・サングラスを発売したブランドとしても有名です。
このRonwinneは、1946年までに、700万個販売され、ロンサーは、1971年までに1600万個発売されました。
ドク・マッコイ スタイル2
レインコート
- ベージュのレインコート、比翼ボタン、センターベント
- 黒のウールのリブ編みセーター、クルーネック
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銀行強盗の時に、防弾チョッキを隠すためにレインコートを着用。
![](https://cahiersdemode.com/wp-content/uploads/2020/01/getaway72sm-cl3d-raincoat-e1580198728893.jpg)
青と赤のチェックが確認できます。
アリ・マッグロー
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この時、二人はすでに恋愛関係にありました。
スクリーンで観るたびにすばらしいなあと思う俳優が世界で2,3人いるけど、スティーブはそのうちの1人なの。本当に彼には驚かされたわ。あんなに知性のある人だとは思ってなかったの。知性と言っても、書物から得るようなものではなくて、いろいろなことをてきぱきとやってのける彼独特のすばらしい能力のことよ。
アリ・マッグロー。1972年5月、ロケーション撮影中。エル・パソ。
最もストレートにスティーブ・マックイーンの魅力が伝わる作品
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打ち合わせ中のサム・ペキンパーとマックイーン。
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主役2人と、サリー・ストラザース、アル・レッティエリ。
後に『レザボア・ドッグス』(1992)に影響を与えた作品だけあって、全編ブラックスーツで通すマックイーン。ゴミまみれになりながらもメキシコへの自由のための逃避行を、妻キャロルと共に繰り広げる。
ある意味、夫婦のロードムービーのようでもあり、そのもの「オールド・ファッション・ラブソング」(警察の警戒網から逃げるときに<ポール・ウィリアム・ヴァージョン>がラジオから流れる。)とも言える、二人の物語。
もうそこには全ての能書きを超越したブラックスーツを着る男の魅力が溢れています。ただただブラックスーツ。ブラックスーツ。ブラックスーツなマックイーンの着こなしに惚れ惚れするためのスーツ姿の男の魅力が詰まった作品です。
そこには女が弱いスーツに伴う仕草がぎっしりつまっています。
例、釈放されて、公園に出て、ネクタイを緩めるときの「シャバに出たぜ。太陽が眩しい」的な情緒溢れる渋さ(バックのクインシー・ジョーンズのスコアがイチイチ心を打つぜ!)や、妻に裏切られそうになった時の、両腰に手を添えるときのスーツの開き方など・・・いい男になるための栄養素を補給するための絶好の栄養補給ムービーです。
作品データ
作品名:ゲッタウェイ The Getaway (1972)
監督:サム・ペキンパー
衣装:レイ・サマーズ
出演者:スティーブ・マックイーン/アリ・マッグロー