ジェームズ・ボンド

ロジャー・ムーア3 『007 黄金銃を持つ男』1(3ページ)

    作品名:007 黄金銃を持つ男 The Man with the Golden Gun(1974)
    監督:ガイ・ハミルトン
    衣装:エルサ・フェネル
    出演者:ロジャー・ムーア/ブリット・エクランド/モード・アダムス/クリストファー・リー



    いつも心に黄金銃を・・・

    ロバート・マッギニスによる熱いイラスト。

    1974年12月、007シリーズ第9作目にあたる「007 黄金銃を持つ男」が日本で公開されました。当時のポスターには、準主役の小人ニック・ナックに扮するエルヴェ・ヴィルシェーズの名はなく、なぜか、フランソーワーズ・ティリーという本編でクレジットされていない女性がボンドガール表記されていました。

    フランソワーズ・ティリーは、確かに本作に登場します。それも悪党の大邸宅のプールで、全裸で泳いでいる女性役として、ジェームズ・ボンドに「一緒に泳がない?」と声をかける役柄でです。チュー・ミーという名の彼女の登場時間は1分にも満ちません。彼女もボンドガールなのか?という疑問が素直に沸き起こります。しかし、この時代の映画の素晴らしさは、このテキトーな情報を基にしたハッタリズムが生み出すいかがわしさによる部分も多分にあります。そうなのです、007シリーズほど、デタラメな宣伝が似合う存在はないのです。

    この配置こそ007なのです。銃とビキニ美女。

    さてハッタリズムの極みと言われるロジャー・ムーア王朝のボンドムービーにおける素晴らしさは、ムーア本人のこの言葉に集約されるだろう。

    ボンドムービーとは、観客にとって、古い友人のような存在になっている。観客はその後に何が期待できるのか知っている。大掛かりなアクションシーンや美しいロケ地だ。さらに魅力的な女性たち。そして、観客は何が登場しないかも知っている。ボンドムービーでは脳みそが画面上に散らばることもない。作品の本質は暴力的だが、視覚的に見せることは決してしない。

    ロジャー・ムーア

    それは、日本人にとっては昭和世代なら理解できるだろ「男はつらいよ」シリーズと全く同じ感覚である。だからこそ、時には迷走することだってあるんです。「黄金銃を持つ男」は、ボンドシリーズ最大の危機でした。そして、アジアが舞台のはずなのだが、なぜかボンドガールはスウェーデンから来た2人の女性という不思議な状況になっていました。ここでこそ、ノラ・ミャオ(『ドラゴン 怒りの鉄建』『ドラゴンへの道』)をボンドガールにするべきでした。そこにブリット・エクランドがいればもう十分だったのです。

    本作の原作は、原作者のイアン・フレミングが僅か56歳で、校正中にロンドンの自宅で心臓麻痺を起こし死去したという「呪われた作品」です。そして、ロジャー・ムーア(1927-2017)による三代目ボンド第二弾です。ドラキュラ伯爵=クリストファー・リーを太陽の黄金の光の中で、三つの乳首を持つ男として蘇らせ。タイの孤島のお化け屋敷で2人の部下(うち一人は小人)と、ジェームズ・ボンドと向き合うそのスケール感が大きいのか小さいのか最後まで分からない世界観は、完全にボンドムービーのお約束の規格外でした。

    この作品は、明らかに失敗作だった。しかし、その失敗の要素が、今となっては、かなりの希少価値を生む作品なのです。見所は間違いなく以下の三点だ!

    1.スパイ見習い2年目のメアリー・グッドナイト嬢のズッコケキャラ
    2.キモかわいいニック・ナックの全て
    3.ルルの山本リンダ×和田アキ子並みの気合の入った主題歌



    ボンド史上最高のキモかわキャラ=ニック・ナック

    115cmの男に世界中のオンナは夢中になった?

    なにをやってるんだか・・・

    こちらは男の憧れを体現したボンドガールとのワンショット。

    ロンドン・プレミアの3人。ナイスポーズ!!

    1974年のロンドン・プレミア、エリザベス2世の夫フィリップと握手するエルヴェと2人のボンドガール。

    女から見て本作で一番モテそうなキャラクターが、ニック・ナックです。身長約115cmの彼が、常にバトラー・スタイルで、ちょこまかと現れるその姿は、最初は、不気味なのだが、やがてはその動きに可愛らしさを感じさせ、最終的には「ニック・ナック」だけを見ていたい(=あなただけを見つめたい)気持ちにさせられるのだ。この作品は、小人を悪党に描くことによって、小人の魅力を解き放った画期的な作品とも言えます。

    そんなニック・ナックを演じるエルヴェ・ヴィルシェーズ(1943-1993)は、パリに生まれ芸術を学んだ後に、画家やフォトグラファーとして活動しながら、ニューヨークで俳優を目指します。小人症というハンデを背負いながらも前進しようとするその前向きな姿がとても素敵です。本作出演直前までは極貧状態であり、家賃が払えず、ロサンゼルスで車中生活を行っていました。

    究極の逆境の果てに、本作出演によってスターになったエルヴィは、リカルド・モンタルバンと共に「ファンタジー・アイランド」というテレビ・シリーズで1977年から1983年まで活躍します。しかし、出演する女優を片っ端からナンパしたことで、プロデューサーの不興を買い、さらにモンタルバンと同額のギャランティを要求したこともあり、解雇されました。

    その後は、ぱっとした役柄もつかず色物として芸能界で生きていきます。そして、重度のアルコート中毒と、通常のサイズの内臓器官が小さな肉体に圧力をかけている不自然な健康状態に悩まされた果てに、その苦しみから逃れるために1993年9月に拳銃自殺しました。



    トラックスーツを着る二人のリー。

    今はほとんど見かけなくなったジャージの足掛け。

    クリストファー・リーのトラックスーツと・・・

    もう一人のリーのトラックスーツ。

    スカラマンガ・スタイル1 トラックスーツ
    • ネイビーのトラックスーツ、足掛け付き
    • 白のスニーカー

    ジャック・パランス(『シェーン』(1953)の悪役)はスカラマンガ役を断ったと言われています。その理由が、「ネイビーのジャージを着る」ためかどうかは定かではない。

    しかし、このネイビーのトラックスーツは、明らかに当時ブルース・リー(1940-1973)の幻の作品だった『死亡遊戯』のイエロー・トラックスーツの影響を受けています。しかし、このネイビーのトラックスーツを、オープニング・シークエンスで〝黄金銃を持つ男〟に着せたことによって、その黄金銃のメッキは剥がれてしまったのです。

    元KGBのスパイであり、報酬は1人100万ドル。顔写真は一枚もないが、乳首が3つあることだけは誰もが知る世界最強の殺し屋。ドラゴンボールにたとえるならば桃白白。その人の名はスカラマンガ(名前の響きも格好良い)。演じるのは、クリストファー・リー(1922-2015)。なぜ、これほど魅力的な経歴のミリオンダラーマン=スカラマンガのお披露目シーンを、もっと格好良いファッションで、登場させなかったのでしょうか?本作のすべてはここに尽きます。



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