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クリスチャン・ディオール

【ディオール】ニュールック(フランシス・クルジャン)

クリスチャン・ディオール
©DIORBEAUTY
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ニュールック

原名:New Look
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:40ml/19,140円、125ml/39,600円、250ml/55,880円
公式ホームページ:ディオール

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フランシス・クルジャンの〝ノージェンダーなニュールック〟

©DIORBEAUTY

©Christian Dior

ディオールの調香師に就任してからの私の一大野心は、ファッションメゾンの香りを作る立場になったのだから、メゾン・クリスチャン・ディオールにもクチュールの精神を反映させてゆきたいということでした。私はクチュールとフレグランスの完璧な相乗効果を、全く大胆なスタイルで結び付けていきたいと考えました。

そこで、それまで女性のためだけだったニュールックの精神を、〝ノージェンダーなニュールック〟という21世紀風なものにして、その本質を反映する香水を作ることを目指しました。

フランシス・クルジャン

ディオールの「ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール」は、2004年に「コローニュ ブランシュ」「オー ノワール」「ボア ダルジャン」といった3種類の香りが発売され、2009年に「アンブル ニュイ」が発売されました。そして、2010年に一挙7種類の香りが発売され、「コローニュ ブランシュ」「オー ノワール」が廃盤となり全9種類となりました。

そのうちのひとつ「ニュールック 1947」は、クリスチャン・ディオールというファッション・メゾンにとって最も重要な用語と〝運命の年〟を冠した女性のための香りでした。ディオールの初代専属調香師フランソワ・ドゥマシーにより調香されました。

この香りが2023年に廃盤となり、2021年10月に二代目専属調香師(パフューム クリエイション ディレクター)に就任したフランシス・クルジャンにより、2024年2月2日に「ニュールック」はユニセックス・フレグランスとして転生を遂げました。

1946年に創業したばかりのクリスチャン・ディオールが、その翌年1947年2月12日のファースト・コレクションで、ヨーロッパの戦火によって女性から奪われていた〝美しさ〟を取り戻すことに成功しました。

それまで第二次世界大戦中の角張った、肩幅の広いスーツと短いスカートから一転し、細い肩、締まったウエスト、丸みを帯びたヒップ。何よりも前代未聞の長くて幅の広いスカート。このコロールライン=砂時計のシルエットを生み出したこのコレクションは、『ニュールック』と呼ばれました。

それは、わずか11年間の生命と引き換えに、ムッシュ・ディオールが、第二次世界大戦により、神が世界中の女性から奪い去った『美しくなる喜び』をふたたび取り戻した瞬間でした。

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ニュールックとは?

クリスチャン・ディオールのニュールック、1947年。©Christian Dior

同じく ©Christian Dior

ニュー・ルックとエッフェル塔。フォトグラファー:ルイーズ・ダール=ウォルフ。1947年。©Christian Dior

私は、ニュールックがどのように受け入れられるかを予見できなかったが、それと同じくらいに、歓迎されることをほとんど想像していなかった。ただ、私の最善のものを実現しようと試みただけなのだ。

クリスチャン・ディオール(ニュールックについて)

ここで『ニュールック』について軽くおさらいをしておきましょう。

『ニュールック』とは、クリスチャン・ディオール(1905-1957)が、1947年2月12日のファーストコレクションで発表した、コロール・ライン(花冠をイメージしたシルエット)を見た、ハーパーズ・バザーの編集者カーメル・スノーの以下の言葉〝My dear Christian, your dresses have such a New Look!〟から生まれた〝ファッションに革命を起こしたディオールのスタイル〟を指す用語です。

コロール・ラインとは、第二次世界大戦中につましい簡素な服装をするしかなかった女性たちの憧れを、戦後に最初に体現したスタイルであり、柔らかい生地とふんだんな布地を使用した砂時計のようなフォルムのドレス・ラインが特徴です。

そして、-13℃という厳寒の中行われた、このコレクションにより、戦争により瀕死の状態だったパリのオートクチュールは、一夜にして蘇ったのでした。この状況をカーメルは「パリがマルヌ会戦で救われたように、ディオールはパリを救った」とまで言ってのけたのでした。

『ニュールック』という名称の面白さは、このスタイルが当時の女性にとって「ニュー」ではなく、寧ろココ・シャネルによってコルセットから解き放たれる前のスタイルへの回帰に過ぎなかったところにあります。つまり、自分ひとりで持ち運べず、着る事も出来ない王侯貴族のようなファッションをディオールは20世紀風に復活させたのでした。

ちなみにこのコレクションの会場に、ムッシュ・ディオールはまだ発売前の「ミス ディオール」を振り撒きました。クルジャンは、もしムッシュが2024年に転生したなら、-13℃のランウェイショーでどのような香りを振り撒きたいと願うのだろうか?そんな想像力を働かせてこの香りを生み出したのでした。

ただし、クルジャンは、自分自身のお気に入りのディオールのカシミア・ジョガーからもインスピレーションを得ています。それは高級感と日常の快適さの完璧な組み合わせであり、その精神も香りの中に反映させたいと考えていました。この香りが「ニュールック1947」と全く違う理由は、以下のクルジャンの一言に集約されています。

私は、1947年に発表された女性のための〝ニュールック〟が、2024年に再び発表されるのなら、ユニセックスであるべきだと考えました。つまり、ジェンダーをクロスする〝ニュールック〟の香りを創造したのです。

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好きになる香りではなく、香りに愛されるように育てていく香り。

©DIORBEAUTY

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新鮮で、豊かで、しなやかで、官能的な複数の側面を持つ原材料を組み合わせました。私は、完全オリジナルで大胆なフレッシュノートを通じて再発明されたアンバーの香りの美しさを讃えるコンポジションを作成しました。 つまりまったく新しいタイプの官能性が表現されているはずです。

フランシス・クルジャン

NEW LOOK、ニュールック、新しいスタイル、新しいノージェンダーのスタイル、失われたエレガンスへの回帰。その伝統と革新の精神を素肌に立ち上らせるために、クルジャンが手がけた最新作「ニュールック」の精神は、どこまでも崇高である。ディオールという最もZ世代に影響を与えている最先端を駆け抜けるラグジュアリー・ブランドだからこそ、その盟主として新しい世界の扉を開く香り、それが「ニュールック」です。

この香りを前にして「素晴らしい!」と即答できる人はいないでしょう。なぜならそこにあるのは〝新しいスタイル〟だから。

シャネルの「No.5」でココ・シャネルとエルネスト・ボーが実現し、フレデリック・マルとドミニク・ロピオンが「スーパースティシャス」で、21世紀風に転生させようとした〝新しいスタイル〟が遂にここに究極形態で現れるのです。

はじまりは太陽が沈む夕陽と、そのかなたに見える冷たい月の光がひとつに見える奇跡の瞬間を我が身に引き寄せるように、満ち広がる温かく甘やかなアンバーと氷の微笑のようなアルデハイドからはじまります。

ここで使われているアルデハイドは、アルデハイドC12 MNAです。フレッシュなアンバー調であることが特徴です。

1947年のクリスチャン・ディオールの『ニュールック』の真髄は、贅沢に人工素材を利用し、女性の美しさに劇的な光を当てることでした。だからこそその精神をノージェンダーのものにしたこの香りのはじまりは、徹底的に〝天然〟ではないのです。

1947年当時、どんな女性であっても最初に『ニュールック』を着たとき、鏡の前の自分にびっくりしたことでしょう。しかし、やがては、一心同体化し、新しいエレガンスを手にすることになりました。つまり、その精神を香りに転化し、素肌に溶け込んでいくことによって、アルデハイドの中から、スズランやジャスミンといったディオールを象徴する花々がほんのりと香り立つのです。

やがてアルデハイドとホワイトアンバーの白金の輝きで愛でられた素肌に、ふいに降り注ぐ、教会の香りのようなフランキンセンスの銀色の煙の香りとひとまとめになり、まるで天使の涙が、全身を洗い清めていくような、新しい美的感覚で満たされゆくのです。

砂時計のシルエットを生み出すために人工的な布地やコルセットで作り上げられた〝究極のエレガンス〟。それがやがて、あなたの肉体そのものに人々の目に映るように、あなたのオーラとなり広がる〝究極のエレガンス〟を演出してくれる「ニュールック」。

メゾン・クリスチャン・ディオールのコレクションの中で、唯一店頭で試香する必要がない香りだと言えます。なぜなら、この香りは、ディオールを愛するあなたにとって、好きになる香りではなく、香りに愛されるように育てていく〝AIフレグランス〟なのだからです。

この香りから、フレグランスは新しい章を開くことになります。それは、新しい自分を作り出す栄養素としての〝新しい美しさの種〟としての香りの役割なのです。やがてこの香りに愛されるようになったなら、あなたは〝新しい美=ニュールック〟に包まれることになるでしょう。

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香水データ

香水名:ニュールック
原名:New Look
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:40ml/19,140円、125ml/39,600円、250ml/55,880円
公式ホームページ:ディオール


トップノート:アルデハイド
ミドルノート:フランキンセンス
ラストノート:ホワイトアンバー