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【フレデリック マル】スーパースティシャス(ドミニク・ロピオン)

ドミニク・ロピオン
©FREDERIC MALLE
ドミニク・ロピオンフレデリック・マルブランド調香師香りの美学
この記事は約15分で読めます。

スーパースティシャス

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Superstitious
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:10ml/9,240円、50ml/32,450円、100ml/46,200円

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トム・フォードにクビにされた経験をバネに!

フレデリック・マルとアルベール・エルバス。©FREDERIC MALLE

1999年、イヴ・サンローランとアルベール・エルバス。

最も大切なことは自由であることだ。自由があれば、考えることができ、感じることができ、失敗することができる。偉大なる創造は、失敗から生まれるんだ!

アルベール・エルバス

ファッション界の帝王イヴ・サンローラン(1936-2008)は、1998年に後継者として、アルベール・エルバス(1961-2021)を任命しました。

エルバスが大躍進するきっかけは一人の女性にありました。バーグドルフ・グッドマンの元社長であり、当時グッチの副社長になったばかりのドーン・メロー(1931-2020)でした。彼女が、ジェフリー・ビーン(三宅一生は彼の下で修行した)を紹介し、7年間修行することになるのでした。そして、1997年パリに行き、4シーズン、ギラロッシュでデザインを担当することになるのでした。

かくしてエルバスによるサンローラン王朝がスタートするのかと思いきや、1999年11月にイヴ・サンローランはグッチ・グループに買収され、エルバスは、時のグッチのクリエイティヴ・ディレクターであるトム・フォードによって2000年2月のショーを最後にクビになったのでした(結局3シーズンのみ担当した)。

そんな逆境を跳ね返すように、エルバスは2001年10月から、ランバンのアーティスティック・ディレクター(2001-2015)に就任し、このフランス最古のファッション・ブランドを見事に復活させ、世界中に「ランバン旋風」を巻き起こしたのでした。

エルバスが巻き起こしたランバン旋風について適格な解答は2010年8月号のヴォーグに掲載されたエルバス自身の言葉の中にあるでしょう。

(かなり高価であるのにどうして女性たちは彼のドレスを手に入れたいと願ってやまないのかという質問に対して)理由はよくわからないけど、ぼくの作る服を着る女性たちは、まず美しさを実感し、二番目には着心地の良さを感じ、三番目には、ある女性がぼくに言ってたんだけど、彼女はランバンを着るたびに恋に落ちるんだそうだ。だから、ひょっとしたら女性たちは恋をしたいのかもしれない……。四番目に、ぼくの服は女性たちから顔を奪ってしまわないんだ。つまり、着ている女性を見たとき、ドレスばかりが印象に残ってしまうということがないのさ。

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エルバスとマルのはじめての出会い

2009年にフレデリック・マルが妻マリーへの誕生日プレゼントとして購入したランバンのデニムドレス。

私は常々アルベール・エルバスは、フランスのオートクチュールのもっとも正統なる後継者だと考えてきました。そして、恐らく彼は同世代における最も素晴らしいフランスのクチュリエだと思います。

フレデリック・マル

フレデリック・マルの妻マリーは、イヴ・サンローラン時代から、そんなエルバスの大ファンでした。そして、15歳の娘もエルバスとH&Mのコラボ(2010年)を手に入れようと必死でした。そんなエルバスという存在について、マルはずっと気になっていました。

そして、遂に友人のエリー・トップ(ランバンでコスチュームジュエリーを担当していた。彼から、エルバスは、女性の友人へのプレゼントとしてマルの香水を選んでいるということを聞いていた)を通じてエルバスの電話番号を手に入れ、2016年1月にパリで昼食を取ることにしたのでした。

エルバスは、この昼食に乗り気ではなかったとマルに後日告白しています。しかし、会った瞬間二人は、意気投合し、共に「迷信家」であるという共通点を知るのでした(エルバスは絶対に床にかばんを置かない、一方、マルはブロッターを決まった方法でしか持たない等々)。

私は、エルバスがイヴ・サンローランの後継デザイナーに指名された90年代から彼の作品を知っていました。私がエルバスの中に見たのは、私のブランドの香水を作る調香師たちの中に見ているものと同じなのです。

それは、新しい世代のためにクラシックを現代化するという能力なのです。

フレデリック・マル

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元祖ゆるキャラ=〝エルバス君〟

©FREDERIC MALLE

©FREDERIC MALLE

僕は体重が重いから、何を見せるべきで、何を見せるべきでないかということに、とても気を配っているんだ。そして、自分の体重が重いということと、自分の作る作品には大きなつながりがあると確信しているんだ。

僕の幻想は、スマートな肉体になることなんだ。その幻想を明確にして、自分の持っていないものすべてを詰め込むんだ。つまり僕の作る服は、つねに軽やかさを追求しているんだ。これこそがファッションが生み出すファンタジーなんだよ。

アルベール・エルバス

会ってすぐ二人は香水を作ることに合意しました。そして、2016年8月に香りの試作品が出来る前に、まず二人はボトルデザインを考えることにしました。場所は、パリのカフェです。

当初マルは、割れたガラスのデザインにしようと考えていました。しかし、その考えをエルバスに言ったとき、「それなら死んだ方がマシだ。僕は割れた鏡っていうのがすごく嫌いなんだ。僕の名前で、割れたガラスの何かをローンチしたら、もう僕とはランチに行けないよ」と言われてしまいました。

そこで迷信を象徴するような「目」をデザインしたものを見せるとエルバスはそのアイデアをとても気に入りました。その「目」とは、evil eye(邪視)とも呼ばれる第三の目です。マルは何度もナプキンに「目」を描いて、エルバスに見せたのですが、それを見たエルバスは「下手くそすぎるよ」と言って3つの「目」を描き、そのうちのひとつがボトルデザインとして選ばれたのでした。

マルはそれをiPhoneで撮り、深みとタイムレスなエレガンスを生み出すために、漆黒のラッカーにアンティークなゴールドを配して、パッケージにしたのでした。

さて、9月はじめに、エルバスが10月3日にレジオンドヌール勲章を受章することになりました(フランスの国家勲章で、5階級に分かれ、エルバスはファッション業界での功績を称えられ、4番目のオフィシエの称号を授与された)。

授賞式にはファッション業界の知人がたくさん集まるのですが、デザイナーを辞めたエルバスには発表するドレスも何もありませんでした。そのためエルバスはマルにひとつの提案をしたのでした。「あと一ヶ月で香りを完成させたい」と。

そして、その新作の香水を〝香りのドレス〟として勲章を受章する席上発表したいと。「エルバスってゆるキャラなんだよね」と言うマルは、「一ヶ月では無理だ」と彼に伝える事が出来ませんでした。

こうして、フレデリック・マルが敬愛する人物の世界観を、香りで表現するといコレクション「XXX=ポートレート」の第二弾として、アルベール・エルバスが取り上げられることになるのでした。

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ドミニク ロピオン VS カルロス ベナイム

©FREDERIC MALLE

もしあなたがチョコレートの香りが欲しければ、私はこう提案します。チョコレートの香りを身につけるよりも、チョコレートを買って食べるべきだと。

アルベール・エルバス

急遽ドミニク・ロピオンカルロス・ベナイムにフレデリック・マルは頼み込み、マルの新作として製作中の二つの試作品をエルバスに試してもらうことにしたのでした。

パリの名門ホテル「ル・ムーリス」(ゲランの一号店が誕生した場所でもある)のロビーで、カルロスが調香したオリエンタルの香り(グルマンに近い甘い香り)と、ドミニクが(2年かけて)調香したフローラル・アルデヒドの香りを、エルバスは試香したのでした。

そして、オリエンタルについては「スウィートすぎる!まるでケーキの香りがする女性だ!私はお皿の上のケーキには目がないが、女性から香るケーキには我慢ならない」と拒絶しました。一方、フローラル・アルデヒドに対しては「トップからうるさすぎる」と答えました。

そこで、ロビーにいる最もセンスの良さそうな女性にこの二つの試作品をつけてもらうことにしたのでした。最初彼女はオリエンタルの方が好みだと言いました。しかし、少し経ち、戻ってきた彼女は、フローラル・アルデヒドの方がまわりの男性に好まれたと言い放つのでした。すっかり混乱したエルバスは、持って帰って自分でつけてみることにしました。

数日間身に纏い、エルバスは、マルと一緒に二人の調香師に会うことになりました。そして、結果的に、彼は、ドミニクが持つ〝創造性〟における共通点を感じ取り、彼の香りを選ぶことにしたのでした。その共通点とは、共に、女性という存在に対して崇拝に近い観念を持っており、女性が作品に隠れてしまうのではなく、より美しく見せるために存在すべき、という考えがありました。また、ドミニクの建築家のように香水を作る方法もエルバスの洋服を作る方法と似ていました。

かくしてエルバスが「あの偉大なるアルページュ時代のようなアルデハイドでありながらも、身に纏いやすい」と語る香りがチョイスされたのでした。ここで使われたアルデハイドは、C12 MNA、C12 Lauric、C11でした。

ちなみに、ここで却下されたカルロス・ベナイムの試作品は、後の「ミュージック フォー ア ホワイル」となりました。

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この香りに対するエルバスのこだわり

©FREDERIC MALLE

©FREDERIC MALLE

この香水にある隠れた構造は、アルベールが作る洋服にある隠れた構造に似ています(つねに軽やかさを追求している彼の服には、特殊なカッティング方法が用いられています。シームができないようなカッティングのため、通常の服とは落ち感が違い、そのため非常に多くの生地が必要になるのです)。

フレデリック・マル

この試作品は、フレデリック・マルのために、ドミニク・ロピオンが、ごく自然にエレガンスな雰囲気がにじみ出るような香りを作ろうと2年かけて調香していたものでした。

そして、エルバスのために、最後の調整が行われることになりました。「フローラルが強すぎて、可愛すぎるから、もうちょっとパンクな方がいい」「完璧すぎるから、もう少し砕けたほうがいい」などと言ったエルバスの意見を、マルが香りの言葉へと翻訳し、ドミニクが成分を変更させていくのでした。

特にエルバスはこの香りのドライダウンを気に入っていたので、温かいアンバーと深みのあるベチバーをもっとはっきりして欲しいと要求しました。結果的に、このドライダウンの存在感が、この香りを唯一無二なものにしました。

かくして、ギリギリ10月3日までにこの香りは完成したのでした。結果的に、マルとエルバスは、香水制作のやり取りの際、一通のメールもお互いに投げかけず、何度か電話のやり取りと5、6回に渡る2時間のランチだけでこの香水は完成を迎えるのでした。

そこにはマーケティング・グループもフォーカス・グループも存在しませんでした。オフィスで話し合うこともなく、全てランチを通してこの香りは創られたのでした。

最後に2人にとって、名前は「スーパースティシャス(迷信)」しかないと考えていました。それは2人の共通点であり、強力な力であり、第六感であり、視界に入るもの以上のものであったからです。それは、幸運を信じることと言い換えてもいいでしょう。

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香りが生み出すクチュールドレスの香り

グレース・ケリー様。1955年。©Howell Conant/Adelman Images,LP

この香水は単に僕とフレデリックのコラボではないんだ。化学を越えるもの、もしかしたら錬金術さえも越えるような、2人の人間、2つの考え、2つの世界が1つになったもの。だから1+1が3になったようなものなんだ。

アルベール・エルバス

この香りは、失われた女性のクラシカルな美をひたすら追求してきたアルベール・エルバスという男性の浪漫をボトルの中に封印したような香りです。どこでつけることが出来るのかではなく、この世界観の中に、自分自身をいかに投影させていくか?という楽しみに満ちた香りです。

この香りは、50年代のハリウッド・ビューティーを21世紀に体現していくことに喜びを感じる女性だけの特権として生み出された香りと言えます。

さぁ、魔法の煙のようにアルデハイドが、スプレーの一吹きと共にやって来ます。この瞬間、あなたが最も敬愛するクラシカルな理想の女性像への探求の旅がはじまるのです。

幻想的に発泡するアルデハイドに、オークモス、パチョリ、ベチバーといった森のエッセンスが、エルバスの住む世界=モードの世界のクールネスを付け加え、ソーピィーという言葉の斜め上をゆく天使の羽根を手に入れたかのような浮遊感に包まれてゆきます。

すぐに降り注ぐ薔薇の花びらと、ジャスミンの厳かな大合唱に出くわします。そして、香りに二つの色彩が生まれます。ピーチとペッパーが生み出す総天然色と、サンダルウッドが生み出すリトル・ブラック・ドレスを連想させる白黒の世界です。

この二つの香りのコントラストが、アルデハイドの持つ冷たさと妖艶さを相反させながら、ついにあなたは華やかな大都会の非日常空間へと着地してゆくのです。永遠に色褪せないハリウッド・ビューティーを楽しむ香りです。

この香りを身に纏うと、ただちにトム・フォード・ビューティーのカウンターに駆けこみたくなるような香りです。そして、直接、自分の魅力を褒めて頂ける空間に向かって邁進したくなる香りです。愚かな女性と言われようとも、〝美を崇拝する〟ことだけを栄養素として生きていくことに、命を懸けている女性の香りです。

一方、男性がこの香りを身に纏うと、そんな女性をエスコートする白いドレスシャツを優雅に着こなす、エレガントなスーツ姿の紳士の誕生と相成ります。

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エルバスの遺作=「21世紀のN°5」



最後にエルバスは、こう言っています。「ドレスの香りを作りたかった。それは、部屋を去った後の女性の残り香のような香りです」と。そして、これはコラボではなく、二人の友情が生み出した香りなのだと。

一方、この香水を身に纏う女性のイメージとしてフレデリック・マルは以下のように語っています。

それは2通りあるでしょう。1つは、偉大なクラシックな香りとして、つまりセカンドスキンにのような、ラグジュアリーを理解するものとして考えます。それはヒッチコックのキャラクター(特にグレース・ケリー)のように氷の下の炎です。

しかし、一方で、この香りは、もはや長い間、香水業界では作り出されてこなかった香りだから、過去への回帰と共に、一周回ってモダンにも映ることでしょう。特に若い人たちにとって、この香りはとても斬新に思えるかもしれません。つまり、ヴィンテージのブローチをジージャンに合わせるようなものなのかもしれません。

フレデリック・マル

ちなみに、この香り以前のフレデリック・マルの香りの中で、アルデハイドを含んだ香りは「イリス プードゥル」「ユヌ フルール ドゥ カッシー」だけなのですが、これらの香りは、アルデハイドをメインに作った香りではありませんでした。

最後にこの香りについて最も説得力のあるフレデリック・マルの言葉を引用させていただきます。

アルベール・エルバスはただひたすら、自分がデザインした服を着る女性に、より美しくなって欲しいと考えています。その頑ななまでの女性崇拝の姿勢に私はずっと敬意を抱いていました。つまりこの香りは、アルベールの服のように、身に纏う女性を格上げし、力を与える香りなのです。

ココ・シャネルがN°5(No.5)を制作するときに調香師エルネスト・ボーに頼んだのは、「フローラルの香りではなくて、女性の肌から本来するような香り」でした。そして、N°5は、フローラルアルデヒドという香調を生み出し、20世紀に名を刻む香りとなりました。

それからおよそ100年の時を経て、偉大なアルベール・エルバスのために作られたこの香りは「女性のドレスからする香り」でした。この香りは、21世紀のN°5として、間違いなく、歴史に名を刻んでいくことでしょう。

ちなみにN°5と比較すると、「イリス プードゥル」はアルデハイドが少し抑えられ、フローラルが強調され、より女性らしく、「ユヌ フルール ドゥ カッシー」は、アルデハイド少なめで、よりリアルなフローラルらしく、「スーパースティシャス」は、アルデハイドが少し強めで、フローラルが少なく、よりファッショナブルな感じがします。

新世代のためのフローラルアルデヒドは、2017年3月フレデリック・マル24番目の香水として発売されました。ドミニク・ロピオンによる調香です。

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香水データ

香水名:スーパースティシャス
原名:Superstitious
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:10ml/9,240円、50ml/32,450円、100ml/46,200円


シングルノート:エジプト産ジャスミン、ターキッシュ・ローズ、ピーチ、アンバー、インセンス、ハイチ産ベチバー、パチョリ、アルデハイド

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