マリリン・モンロー

マリリン・モンロー3 『七年目の浮気』1(2ページ)

    作品名:七年目の浮気 The Seven Year Itch (1955)
    監督:ビリー・ワイルダー
    衣装:ウィリアム・トラヴィーラ
    出演者:マリリン・モンロー/トム・イーウェル/イヴリン・キース



    男性が断れない条件を出すオンナ=マリリン。

    「私の人生はよつんばでした」マリリン・モンロー。

    マリリン・モンローは1962年8月5日に急死しました。36歳でした。この作品は、彼女が20代後半にスター街道を登りつめる不安定な精神状態の中で作られました。プレッシャーと数多くの誘惑が生み出すストレスの中、なかなか睡眠が安定せず、アルコールや精神安定剤等の量も増え、遅刻を繰り返し、セリフも覚えることが出来ず、ひとつのシーンに何十回もテイクを重ねなければならなかったと言われています。

    「どうしようもなくセリフ覚えが悪かったが、30回目くらいに上手くいくセリフ回しが、彼女以外には出せないコメディセンスを生み出していた」と監督のビリー・ワイルダーは述懐します。マリリン・モンローが死去して55年(2017年現在)経つにも関わらずなぜ彼女は、若者をはじめ成熟した女性を惹きつけて止まないのでしょうか?1950年代のセックス・シンボルだったマリリンは、年月を経るにつれて、人類のセックスシンボルとして、そして、女性にとってのスタイル・アイコンとして現代のクレオパトラのような地位に君臨することになりました。

    最初、マリリンの魅力は、女性にはなかなか受け入れがたいものでした。60年代に入り、ビキニ水着が流行する中、ヒッピー文化の台頭とフリーセックスの風潮により、女性はよりセックスに対して奔放になり、マリリン・モンローの再評価が始まりました。それはまだ『セックスシンボル』としてのマリリンでした。そして、1970年代以降においては、マリリン・モンローはハリウッド=マリリンとまで言われるほどに神格化され、80年代のグラマラスな女性の時代においては、マリリンは、女優の枠を飛び越え、マドンナを代表とするシンガー(本田美奈子を含む)にとって目指すべき女性表現の一つのアイコンとなりました。

    1990年以降、ビデオ文化が定着し、マリリンの映画が簡単に見れるようになり、彼女はあらゆる世代にとって、影響力のあるファッション・アイコンとなりました(もちろんマリリン・マンソンの役割も過小評価すべきではない)。そして、2000年代のDVD文化の定着が、高画質で古びていない彼女を映し出すことによって、違和感なく、若い女性にとってもヒップな存在として、マリリン・モンローは、永遠のシンボルとなったのです。


    ニューヨークのタイムズスクエアの劇場に高さ16メートルものモンローの看板をかけたど派手な宣伝。当初ビリー・ワイルダーは白黒撮影を希望していたが、マリリンはカラー映画にのみ出演するという契約だった。それは彼女のチャームポイントである、プラチナブランドと真紅のリップラインの魅力をフルに発揮できる環境は、総天然色であり、ブラック・アンド・ホワイトにより生み出され、神格化されていたハリウッド女優の域を超えることのできるグレース・ケリーに並びうる存在感を持ち合わせていたからです。



    マリリン・モンローの全てが詰まった作品

    マリリンの魅力が最も伝わる作品は?と問われたならば、間違いなくこの作品でしょう。

    マリリン・モンロー自身が最もこだわったラインがこのラインの見せ方です。

    常に自信がなくおどおどしていたというマリリン。

    マリリン・モンロー・ルック1 サマードレス
    • フロントクロスネックラインポルカドットドレス。サマードレス
    • 白のショートグローブ
    • 白のハイヒールサンダル
    • 真珠のイヤリング
    • 右手に扇風機

    マリリン・モンローは『ナイアガラ』(1953)により生み出されたモンロー・ウォークのイメージを大切にしました。彼女の最高の武器は、不器用さが生み出す愚直さでした。それは、売れるためには、身体をつかってどんなことでもするという姿勢にも見られるのですが、それ以上に、一つのイメージを一貫して演じ続け、やがてそれが、本当の自分を乗っ取ったかのように同化したところに彼女の神格性の本質が見えてきます。

    そして、デビュー当時は、ファッションに無頓着だったマリリンが、スターになってからは、自己のスタイル確立に努め、衣装に対しては常にヒップからレッグにかけての線を強調できるタイトなドレスやスカートにこだわるようになりました。彼女ほどフル・スカートやプリンセス・ラインのドレスを嫌ったスターはいませんでした。そんなマリリンがスターになって唯一回のみフルスカートをはいたのが、本作のホワイトドレス(後出)でした。

    マリリンのオープニングシーンを見てみましょう。この作品のマリリンの登場シーンの素晴らしさは、圧倒的です。ポルカドットのサマードレスに、片手に扇風機と、もう片手にポテトチップスとパンの見える紙袋を持ち、現れます。この瞬間、絶世の美女の一つのイメージが作り上げられました。美女の法則。それは男と会話する機会を作る天才であること。つまりこういうことです。両手いっぱいに何かを持ち、ぽとりとオレンジを落としてしまい、それを取ろうとする必死な姿の美女。そのボディラインにうっとりとする男性。急いで駆けつけオレンジを取ってやり、交わす一言。扇風機のコードがオレンジなのです。マリリンの魅力は、男性に付け入る隙を与えるところにあります。

    もてる女の法則があるとするならば、それは、付け入る隙を与える女かどうかということです。そして、マリリンはそんな雰囲気を生み出す天分を持つ人でした。



    ラフマニノフのピアノ・コンチェルト。

    トム・イーウェルのスーツにペニーローファーのアンサンブルも素敵です。

    カラーで見ると実に個性的なタイガードレス。

    典型的なハリウッド・ビューティー・スタイルで登場するマリリン。

    男性の妄想シーンで登場するこのドレス。バックミュージックはラフマニノフのピアノ・コンチェルトです。

    モンローが人の目をとらえて離さない美しさを発揮するのは、スクリーンの上でのことである。スクリーン上の彼女は比類なき存在となる。しかし、あらためて考えてみて、彼女ほど醜く見えることのある女性に会ったことがない。

    ビリー・ワイルダー

    マリリン・モンロー・ルック2 タイガードレス
    • マーメイドドレス。豹柄とオーガンジー
    • 黒のロンググローブ、ビジュー付き
    • ブラックのハイヒールサンダル

    セルゲイ・ラフマニノフのピアノ・コンチェルト第二番が流れる中、男性の浮気心を駆り立てる妄想に登場するモンロー。まさにファム・ファタールそのもののデコルテ全開のロングドレスで登場します。昔のハリウッドムービーの魅力。それは女性が違和感なくドレスを着ることが映画の中で認められていた時代でした。

    昔のファッションの概念はメリハリにありました。それはミリタリーにおいてもフォーマルにおいても伝統衣装においてもでした。一方、現在においては、カジュアル一辺倒で、フォーマルとされるものであっても、ただの安っぽい生地感で外観を取り繕ったようなファスト・フォーマルが氾濫しています。大人の魅力が街から失われた時、ファスト・ファッションの興隆は始まりました。無個性の時代の始まりです。なぜマリリン・モンローは永遠なのでしょうか?それは私たちの心の奥底にある大人の魅力を知りたいという気持ちを彼女は満たしてくれるからなのです。



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