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【シャネル】ガーデニア(エルネスト・ボー/ジャック・ポルジュ)

シャネル
©CHANEL
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ガーデニア

原名:Gardenia
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:エルネスト・ボー、ジャック・ポルジュ
発表年:1925年、2007年
対象性別:女性
価格:75ml/33,000円、200ml/57,200円
公式ホームページ:シャネル

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オリジナルは1925年に誕生し、100周年を迎える「ガーデニア」

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「アルデヒドC18 プルノリド」「スチラリル酢酸」「アントラニル酸メチル」ガーデニアの香りは、花の香りではなく、幸せの香りがするので、私はシャネルの香りが好きです。ガーデニアの香りはジャスミンとチューベローズの間のドラマです。

ジャン=クロード・エレナ

2007年にシャネルのプレステージ・コレクションとして「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル」がスタートしました。そして最初の10種類の香りのひとつとして、シャネルの3代目専属調香師ジャック・ポルジュによって調香されたのが「ガーデニア」(オード・トワレ)でした。それは1920年代に発売されたシャネルの4種類の人気フレグランスを現代風に復刻させた香りのひとつでした。


オリジナル・ヴァージョンは1925年にシャネルの初代専属調香師エルネスト・ボーにより調香されました。ココ・シャネル自身がとても愛していたシャネルというブランドを象徴する花であるカメリア(椿)には香りがないので、よく似た白いガーデニアの香り(ガーデニア=クチナシの花からは香料を抽出できない)をイメージして生み出されました。

オレンジ・ブロッサムとジャスミンとチューベローズに、泡立つアルデハイドと、酢酸スチラリルのフルーティグリーンなアクセントを加えた、クリーミーとグリーンの間で振動するように再現されたガーデニアの香りでした。

それはまさに、振りかけると言うよりも、白い花束を手渡しされるような香りでした。


その後、1983年に、ジャック・ポルジュにより再調香され、「7年に1度しか生産できない」という謳い文句で、発売され、特に2000年に発売された白キャップのオード・トワレ版は、人気を誇りました。

そして2007年に「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル」の中の最初のひとつとして発売され、2016年9月以降は、オード・パルファムとして発売されるようになりました。同コレクションの中で、日本でとても愛されている香りです。

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1925年のオリジナル版に最も近い「ガーデニア」

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1925年にエルメスト・ボーが生み出した「ガーデニア」と1980年代にジャック・ポルジュが生み出した「ガーデニア」をひとまとめにしたような香りが、2017年に四代目調香師オリヴィエ・ポルジュにより蘇った「ガーデニア パルファム」です。現在15ml/40,700円で発売されています。

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あなたがもっともっと美しくなる「シャネルの白」で包み込む。

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ガーデニアの香りを通してシャネルが女性の素肌に伝えたかったメッセージ、それはココ・シャネルが愛したカメリア(椿)は冬の花。寒風の中で艶やかに咲き、花びらがバラバラにならず一瞬にして散る姿がココの女性の理想像であるということ。

この香りの醍醐味は、シャネルらしからぬ「爽やかさ」と「軽やかさ」に満ちながらも、しっかりと日本女性の肌に理想の白を生み出します。そして、さらに美しい「シャネルの白」を完成させるところにあります。

そんな〝ココからの白い香りのメッセージ〟は、爽やかな新緑=青葉の輝きからはじまります。きらめくグリーンシャワー、青葉があるからこそ、あらゆる植物は花を咲かせることが出来るのです。

すぐに新緑の輝きに祝福を受けて、白い花々のつぼみがふくらみはじめます。生き生きと明るく広がる花の甘やかさを広がらせるジャスミンと、キリっと闊達なオレンジ・ブロッサムが織り成す、凛としたグリーン・フローラルの香りが広がってゆきます。

そしてチューベローズのクリーミーさが加わることにより、さわやかな気品と、深い思いやりの心、そんな日本女性がつちかってきた美しさを感じさせる、やさしさで包み込むようなガーデニアの香りへと昇華していくのです。

やがて、身も心も軽くしてくれるバニラとムスクが、新緑と白い花々のきらめきをひとまとめにし、魔法のブーケを生み出してくれます。最初から最後まで、透き通るようではなく、あくまで白さを感じさせる所が、この香りが「シャネルの刻印を押されたガーデニア」である所以です。

フレグランスにとって、持続性はとても重要な要素なのですが、持続しない香りにしか生み出せない〝晴れやかさ〟〝後を引かない美〟というものもあるということを、素肌と心に教えてくれます。

ココの二つの名言「下品な服装は服だけが目につき、上品な服装は女を引き立たせる」「家を出る前に鏡を見て、身につけているアクセサリーを1つ外して」をボトルの中につめこんだ香りとも言えます。シンプルこそ究極のエレガンスであることをつきつめた、さらに美しい「シャネルの白」のやさしさで包み込んでくれる香りです。

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『魔女の宅急便』のキキの香り

© 1989 Eiko Kadono/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, N

1989年に公開されたジブリ映画『魔女の宅急便』のエンディングで流れていた荒井由実(松任谷由実)さんの名曲「やさしさに包まれたなら」。この素敵なエンディングが、くちなしの花の魅力を伝えてくれています。

「小さい頃は神さまがいて 不思議に夢をかなえてくれた やさしい気持で目覚めた朝は おとなになっても 奇蹟はおこるよ(中略)雨上がりの庭で くちなしの香りの やさしさに包まれたなら きっと 目にうつる全てのことは メッセージ」

そしてもう一つガーデニアと言えばこの曲。ビリー・ホリデイやエラ・フィッツジェラルドが歌っていたジャズソングのスタンダードであり、1973年にロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーがカバーした「These Foolish Things」(1936)。

全盛期のゲイリー・オールドマンを髣髴とさせるその雰囲気で、2分くらい過ぎたあたりに「枕に残るガーデニアの香水の香り」なんて歌っています。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ガーデニアにあらず」と宣言し、「シャネル・ブティックのフレグランスは、全体的に好ましい香りばかりなので、神々の嫉妬をかう恐れがあった。しかし、このガーデニアが災難を防いでくれるはずだ。なぜなら、まったくもって不愉快な香りで、騒々しい空港のトイレの花のような匂いだからだ。もしこれがクリードやラ・プレリーの部類だったなら、かろうじて褒められただろうけれど」と1つ星(5段階評価)の評価をつけています。

ルカ様の評価は〝1〟なのですが、彼の〝1〟評価は、〝5〟評価と同じ価値を持つように感じます。まさに、誰もが愛してしまう魅惑の香りであるために、神の嫉妬をかう香りであるということです。

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香水データ

香水名:ガーデニア
原名:Gardenia
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:エルネスト・ボー、ジャック・ポルジュ
発表年:1925年、2007年
対象性別:女性
価格:75ml/33,000円、200ml/57,200円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:オレンジ・ブロッサム、グリーン・リーフ
ミドルノート:ガーデニア、ジャスミン、チューベローズ、フルーツノート
ラストノート:ココナッツ、ムスク、バニラ、サンダルウッド、ベチバー、パチョリ