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『女囚さそりシリーズ』1|梶芽衣子とさそりルック

梶芽衣子
梶芽衣子
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作品データ

作品名:女囚さそりシリーズ Female Prisoner 701: Scorpion (1972-1973)
「女囚701号/さそり」「女囚さそり 第41雑居房」「女囚さそり けもの部屋」「女囚さそり 701号怨み節」の4部作。
監督:伊藤俊也(最終作のみ長谷部安春)
衣装:内山三七子
出演者:梶芽衣子/渡辺やよい/夏八木勲/成田三樹夫/田村正和

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決して女性ファッション誌では取り上げられないファッション・アイコン

主人公・松島ナミ。またの名を〝さそり〟と呼ぶ。

さそりルック。女優帽とロングコートをオールブラックでまとめる。

ファッションにそのまま引用するとかなりの不審者。しかし、テイストを上手く引用するとかなりモード。

日本におけるファッション・アイコンとして、恐らく永らくファッション雑誌において取り上げられることのない女優の一人に梶芽衣子様(1947-)がいます。『キル・ビル』(2003)において、クエンティン・タランティーノにオマージュされ、世界的な日本のB級映画オタクにとって聖母のような存在になっている彼女が、ファッション感度の高い女性が読むファッション誌には取り上げられない明確な理由があります。それは彼女の出演してきた作品群の「刺激の強さ」にあります。

彼女のキャリアのピークは、70年代の東映映画と『修羅雪姫』二作(1973,74)『曽根崎心中』(1978)にあります。特に、この時代の東映映画は、特異なカオス感溢れる映画を作っていました。その基本姿勢は、たがの外れた狂犬であり、そんな中からとんでもないクズのような代物が生み出されることも多いが、映画史上に残る『仁義なき戦い』『仁義の墓場』級の恐らくこれからの全ての日本女子が必見すべき世界観が生み出されたりもしているのです。

梶芽衣子様。彼女の東映における戦歴は、ダントツに輝いています。まさに70年代東映のクイーンといっても差し支えありません(60年代の東映のクイーンは、藤純子様)。その出演作品群は、『仁義なき戦い・広島死闘篇』(1973)における狂犬ヤクザ・北大路欣也の愛する女性役をはじめ、『新仁義なき戦い・組長の首』(1975)のシャブ中でキチガイの山崎努の愛妻役(この数年後に山崎努が『八つ墓村』で演じた多治見要蔵を思い出してみよう)、『やくざの墓場・くちなしの花』(1976)の渡哲也の恋人役であり、全てにおいてただの脇役の域を超えた存在感を示しています。そして、本作における女囚さそり四部作の松島ナミ役です。

この作品によって生み出された名曲「怨み節」。梶様は、10代より女優業に従事しており、この本作の一作品の後、結婚し引退を考えていました。しかし、この作品のシリーズ化が、彼女の結婚を奪ってしまいました。しかし、そんな彼女の魅力が昇華するきっかけになったのも、シリーズ化されたからであることは疑いようもありません。この作品があったからこそ、後の彼女の作品が生み出され、そして、『修羅雪姫』も生み出されたのです。

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昔の東映映画のポスターのアナログ感が素晴らしい。

三原葉子の変身シーンと、和製バルドー・片山由美子とのレズシーン、室田日出男の中国人風ヘンテコな話し口調が見所。

何よりも白石加代子の怪演と、前衛的な琵琶を効果的に使った白装束シーン、そして、冒頭に登場する戸浦六宏無双(とにかく胡散臭い)が見所。室田日出男+小松方正+小林稔侍の有り難味が分かる瞬間がとても多い。

マッチ売りの少女ユキ=渡辺やよいの堕ち感のハンパなさ。そんなユキがモリ・ハナエのショーウィンドウを悲しげな目で見る刹那感。

貞子のような白装束姿での首吊り台の死闘。同時上映『人斬り与太・狂犬三兄弟』(菅原文太)!全く魅力のない田村正和。

「さそり」4部作は、『ティファニーで朝食を』のようなハイセンスな作品ではありません、現在においては眉をひそめるような描写の連続です。しかし、ここであえて言わせていただくならば、ファッション感度には、「ジキルとハイド」要素が重要なのです。それは、昼は淑女、夜は娼婦の感覚です。その娼婦スイッチを押してこの作品を見てみましょう。すると、私たちの中の新たな感覚が覚醒されていくはずです。もし、『ティファニーで朝食を』のハイセンスと『女囚さそり』の70年代エログロセンスの両方が理解できるオンナであったならば、群を抜く魅力的かつ個性的な女性になれる予感がします。

結論を言うと、この作品の重要性は、以下の文章に集約されます。1970年代の日本人女性の格好良さを再認識するにあたり、山口百恵の「赤い疑惑」の岸恵子様のピエール・カルダン・ファッションと、「女囚さそり」シリーズのブラックコート・ルックは、忘れてはならないファッションなのです。