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『修羅雪姫』1 日本の美19(2ページ)

    作品名:修羅雪姫 (1973)
    監督:藤田敏八
    衣装:記載なし
    出演者:梶芽衣子/黒沢年雄/赤座美代子/仲谷昇



    70年代は、ブルース・リーと梶芽衣子様の時代だった。

    女性が見ても惚れる梶芽衣子様のタイムレスな魅力。

    クエンティン・タランティーノが、彼女にだったら殺されてもいいと夢に見ていた女性。

    上村一夫の作画よる「修羅雪姫」。その目の力。

    上村一夫の描く、修羅雪のキャラクターとしての凄みは、なによりもその「目」にあった。宿命によって怨念と修羅の道を歩まねばならぬ哀しみをたたえながら、一方で、強い意思と自我を感じさせる目・・・だから、この『修羅雪姫』に映画化の話が持ち上がったときには、生身の女優であの「目」を表現できるか・・・と一抹の危惧も、実は抱いたのだが、修羅雪を演じるのが梶芽衣子さんであると聞かされたとき、その危惧は消し飛んだ。・・・梶さんは、修羅雪以上に修羅雪であった。

    小池一夫(「修羅雪姫」の原作者)

    子連れ狼』の原作者でもある小池一夫と、『同棲時代』の上村一夫による作画の劇画『修羅雪姫』を原作とした本作。この作品が、21世紀に入り、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル Vol.1』(2003)として、不死鳥の如く蘇ったのでした。そして、それまでは、日本国内において、全く顧みられる事のなかったこの作品が、掌を返したように賞賛され、同時に梶芽衣子(1947-)という女優が再評価されることになったのでした。

    つまりは21世紀において、最も世界的に有名な1970年代のアジア人映画スターは、ブルース・リーと梶芽衣子様となった瞬間です。この二人に共通しているのは、東洋人独特の哀愁を帯びた眼差しです。その存在感は唯一無二のものです。梶様に関して言うならば、彼女の存在自体が、日本人女性の持ちうる最高峰の美を体現しており、日本人女性には着物が一番似合うということを教えてくれます。

    実に不思議なことなのですが、梶様は、白無垢の着物に、リアル・ブラッドには見えない美しい赤色を飛び散らせることによって、着物のみが生み出しうる、世界中の女性が、身震いして憧れる、様式美を体現したのでした。



    はじまりと終わりに登場する黄色い蝶が舞う着物。

    レディ・バタフライ。オープニングで登場する黄色い蝶が舞う着物。

    身震いするほどに美しい、同性でもどきっとしてしまう梶様のアップショット。

    一分の隙もない着物の着こなし。圧倒的なスタイル。

    小松方正の死に様の素晴らしさ!白い雪の中黄色い蝶が舞う!

    そして、ラストの着物も同じ黄色い蝶が舞う着物で現れ、鮮血で着物を染めていきます。

    クールだった雪姫が、慟哭しながら死に絶える瞬間。

    原作においても登場する黄色い蝶が舞う着物。

    修羅雪姫ルック1 黄色い蝶が舞う着物
    • 白地に黄色い蝶が舞う着物、裏地が黒!、半衿
    • 漆黒の帯と、金の帯締め
    • 緋色の裾よけ
    • 素足に黒塗りの二枚歯の下駄
    • 珊瑚の玉簪
    • 仕込み刀の蛇の目傘

    修羅雪姫の第一声は「怨み」です。そして、日本映画史上、梶芽衣子様以上に「怨み」という台詞が似合う女優は存在しません。

    雪の中、夜道を歩く着物姿の雪姫。その所作の美しさ。そういった着物のこなれ感や所作は、梶様に元々身についていたものではなく、1969年に『日本残侠伝』に出演した時に、はじめて着物を着た彼女に、『昭和残侠伝 死んで貰います』(1970)で有名なマキノ雅弘監督が、〝キモノの極意〟のすべてを懇切丁寧に教えてくれたのだそうです(この時、マキノによって、梶芽衣子に改名し、不遇時代から抜け出すことになる)。

    マキノ雅弘という稀代の演出家に改名してもらうほどに愛されたこと自体が、梶様には、着物が似合う只ならぬ天性のものが備わっていたと言うことでしょう。それは、どこか、時代劇でありながら、クリント・イーストウッドの『荒野の用心棒』を連想させるニヒルさとアンニュイさを感じさせるところにもあります。梶芽衣子様は、藤純子様と同じく着物を斬れる稀有な女優なのでした。



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