エキパージュ
原名:Equipage
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ギ・ロベール、ジャン・ルイ・シュザック
発表年:1970年
対象性別:男性
価格:100ml/19,580円
公式ホームページ:エルメス
「私たちの最初のカスタマーは馬でした」

©Hermès

ボトルのラベルを裏から見ると…©Hermès
エキパージュとは、心の通い合ったもののみが知る愛される香りといってもよいだろう。ジャスミン、ローズのエッセンスに、樹木の根、バニラ、モッシー、レザー、スパイスのシプレータイプの香調は、その甘すぎず、きつくなく、ちょっぴりとスパイシーで、刈りたての新鮮な葉を想い出させ、香りにうつる男のひそかな想いが秘められているようである。
『世界の香水と化粧品物語』平田満男(1982年)
1970年にエルメス初の男性用香水として「エキパージュ」は発売されました。「エキパージュ」とは「馬車、従者、乗務員」を意味するのですが、エルメスは、このフレグランスに、男性の助け合いの精神を投影しました。
スパイシーなフゼアの香りは、ギ・ロベールとジャン・ルイ・シュザックにより調香されました。1969年にギ・ロベールが生み出した「ムッシュ ロシャス」の成功事例をもとに生み出された香りです。
円熟期を迎えたうつくしい男性の香り

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偉大なる歴史を生み出していく男たちの〝誇りと義侠の精神〟を体現したこの香りは、マジョラムとタラゴンといった生命力のみなぎるハーブ石鹸の『爽快』と、ベルガモットとオレンジが生み出すシトラスの『軽快』が、アルデハイドにより掻き混ぜられブレンドされていくようにしてはじまります。
すぐに注ぎ込まれる(ミンティな)クラリセージ、ナツメグ、シナモンといった甘いスパイスが、ローズウッドとカーネーションと溶け合い、スモーキーなタバコに酔わせるリキュールが注ぎ込まれたようなふくよかさが加えられてゆきます。
そこに、この香りの陰の主役とも言えるリアトリスが到来します。そのたゆたうような新緑と干し草のスモーキーなタバコの香りのアンバランスなバランスがこの香りに神秘性を与えてゆきます。
やがてオークモスと共にジャスミン、スズランといった花々とパインツリー(松葉)が、全体に柔らかなフローラルシプレの渋い甘みで包み込んでくれます。
そして、サンダルウッドを中心としたトンカビーン、パチョリ、ムスク、ベチバーが、始まりから存在するハーブ&スパイスと結びつき、ビターなダークレザーへと導いてゆき、翳のある男性の超然とした佇まいを与えるように消え行きます。
まるでシプレとフゼアの境界線を飛ぶように、涼しさと温かさを絶妙なバランスで感じさせてくれます。つまりは、エルメスのポリシーを体現したスローガン「私たちの最初のカスタマーは馬でした」を、考えるよりも先に肌に伝えてくれる香りです。
『サムライ』のアラン・ドロンの香り

『サムライ』のアラン・ドロン
それはどこか『サムライ』のアラン・ドロンを強く想わせる、抑制された男のエレガンスを感じさせます。ただし、このサムライの胸元には赤いカーネーションが飾られているのです。ちなみに現在のものは1992年に再調香されたものです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「「冷たいパイプ」の匂いがする香水を作るように依頼されたのは明らかであり、実際彼も煙臭いウッドとバルサムを使った。エキパージュはピート香のシングルモルトウイスキーの製法に似ているが、こちらのほうが温かく、豊かで落ち着いている」
「静かで、ややもつれ、道楽に農業をする上流人の優雅さが漂っている。しかも無精ひげが触れるくらい近寄ったときにのみほのかに香る。この驚きを台無しにしなかったことでエルメスに満点だ」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:エキパージュ
原名:Equipage
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ギ・ロベール、ジャン・ルイ・シュザック
発表年:1970年
対象性別:男性
価格:100ml/19,580円
公式ホームページ:エルメス
トップノート:アルデハイド、オレンジ、クラリセージ、ナツメグ・フラワー、ベルガモット、ブラジリアン・ローズウッド、タラゴン、マジョラム
ミドルノート:カーネーション、シナモン、ジャスミン、スズラン、パインツリー、ヒソップ、リアトリス
ラストノート:サンダルウッド、トンカビーン、パチョリ、ムスク、オークモス、バニラ、ベチバー、アンバー