ココ・シャネルがデザインしなかった二着のフェザードレス
ホワイトフェザードレスとブラックフェザードレスの二着のみは、セイリグ以外の衣裳デザインを担当したベルナール・エヴァン(1929-2006)により手がけられました。
彼はヌーヴェルバーグの美術監督とも言われた人であり、ルイ・マル監督、ジャンヌ・モロー主演の『恋人たち』(1958)、ジャン=リュック・ゴダール監督の『女は女である』(1961)、ジャック・ドゥミ監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の『シェルブールの雨傘』(1963)などの衣裳デザインを手がけました。
女Aのファッション9
ホワイトフェザードレス
- デザイナー:ベルナール・エヴァン
- ホワイトフェザードレス
- シルバー・サンダル
なぜ白と黒のフェザードレスを登場させたのだろうか?
私がアラン・レネから台本を渡された時、Aという役は、グレース・ケリーのためにあって、私のためではないと感じました。
デルフィーヌ・セイリグ(1973年の回想)
現実的かつ幻想的なシャネル・ドレスから一転して、天使と悪魔のような非現実的なフェザードレスが登場します。そうなのだ!すべてはこのためにあったのだ!
なぜアラン・レネとデルフィーヌ・セイリグは、パリのメゾンを渡り歩いた末に、シャネルの衣装を着ることに決めたのだろうか?それは、シャネルこそが、ファッション・デザイナーによるリアルクローズの中でも最も突飛ではないデザインでエレガンスを体現しており、普遍性を持っていたからです。
このシンプルなエレガンスがあればこそ、シャネルがデザインしなかった白と黒の2着のフェザードレスは、『去年マリエンバートで』に浮遊感を与える両翼(=善悪の彼岸を生み出すドレス)になり得たのでしょう。
女Aのファッション10
ブラックフェザードレス
- デザイナー:ベルナール・エヴァン
- ブラックフェザードレス
- 豪華なネックレス
- シャネルのバイカラーハイヒールパンプス
作品データ
作品名:去年マリエンバートで Last Year in Marienbad / L’Année dernière à Marienbad (1961)
監督:アラン・レネ
衣装:ココ・シャネル
出演者:デルフィーヌ・セイリグ/ジョルジュ・アルベルタッツィ/サッシャ・ピトエフ