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【ルイ ヴィトン】カクタス ガーデン(ジャック・キャヴァリエ)

ルイ・ヴィトン
©LOUIS VUITTON
ルイ・ヴィトン
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カクタス ガーデン

【特別監修】カイエデモードが崇拝するフレグランス・スペシャリスト様

原名:Cactus Garden
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/38,500円、200ml/53,900円

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砂漠の真ん中を疾走する、「開放感と破滅」に満ちた香り。

©LOUIS VUITTON

『ロサンゼルス』がこのプロジェクトに影響を与えています。なぜなら、フランスの『グラース』と同じように、世界でも有数の魔法に包まれた場所だからです。

私の創造の神は、〝コントラスト〟です。ここLAでも、グラースと同じように海と山があります。そして、ここには、グラースにはない砂漠があります。この〝コントラスト〟が新たなる創造を生み出すためにも好ましいのです。

ジャック・キャヴァリエ

「ふと会いたくなるある景色を思い出させる」「ふと遠くへ行きたくなる」そんな〝香りの一人旅〟シリーズとも言えるルイ・ヴィトンのコローニュ・コレクション。それが2019年4月11日に発売された「パルファン ド コローニュ」です。

アメリカ・西海岸のカリフォルニアに漂う、自由で情熱的なムードをテーマに、1つの花、 1つの植物、 1つの果物のエッセンスを引き出すことに重きを置いたのが、それぞれ3種類のコロンです。

「パルファン ド コローニュ」と呼ばれるこのオーデコロンは、ルイ・ヴィトンの造語であり、希少な天然原料を贅沢に使用したコロンのフレッシュさと、パルファンの香りの持続性を兼ね備えたオード・パルファンを意味しています。通常のコロン濃度1.5~8%を遥かに超越した12%の濃度で作られています。

その3種類のうちのひとつである「カクタス ガーデン」は、ルイ・ヴィトンの専属調香師ジャック・キャヴァリエにより調香されました。カクタス=サボテンのドライな外見とウェットな内面のコントラストからインスパイアされた香りです。

ちなみに、この香りの世界観は、リドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」(1991)です。それはつまり、ロサンゼルスからラスベガスの砂漠を疾走するドライブをイメージした香りでもあり、「開放感と破滅」に満ちた香りとも言えます。

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エルメスの『庭シリーズ』に捧げられた香り

©LOUIS VUITTON

ファッションとアートの中心であり、ビバリーヒルズに近いウエストハリウッドではなく、同じロサンゼルスでも、撮影スタジオが集まる郊外の街バーバンクにある、エキゾチックなメキシコ料理店でお昼からアルコールを飲みながらタコス片手にまどろんでいるような、至福のひと時を感じさせてくれる香りそれが「カクタス ガーデン」です。

洗練されたモダンジャズでも、情熱的なカンツォーネでもなく、バックミュージックは、ブコウスキーの世界観を歌にしたような、「カリフォルニアには、絶対雨が降らないんだぜ」という歌詞が印象的な、1972年に全米で大ヒットしたIt Never Rains In Southern California(カリフォルニアの青い空)こそ相応しい香り。

それは古き良き、そして、悪しきアメリカの空気が漂う、どこかラスベガスという享楽の都への旅を決断させる、肉体に注ぎ込む「気付け薬」のような香りとも言えます。まさに映画『パルプ・フィクション』でユマ・サーマンがクールに歌うこの曲のようなとんでもなくカッコいい香りなのです。

「カクタス・ガーデン」。その名の持つ意味は、明らかにエルメスの「庭シリーズ」を意識したものであり、当時引退していたジャン=クロード・エレナに対するオマージュとして捧げられた〝(ロサンゼルスの)砂漠の庭〟なのです。

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LVスペシャリストによる「カクタス ガーデン」の世界観

©VISIT CALIFORNIA

ジャックが〝私の第二の故郷〟と公言するほど愛しているカリフォルニア。その広大な地がもつ、様々な情景に対する彼の愛が結ぶところから「パルファン ド コローニュ」は生み出されました。

24時間のそれぞれの時間の中で、〝カリフォルニアのどこの景色や空気がもっとも魅力的か?〟を表現したのが「パルファン ド コローニュ」それぞれの香りだと思います。

ちなみにカリフォルニア州は、日本よりも遥かに大きい。日本の面積が377,914 km²に対し、カリフォルニア州の面積は423,971 km²。

カリフォルニアの一日の幕開けを教えてくれる「サン ソング」は、燦々と輝くカリフォルニアの太陽を描いた香りです。そのまま太陽は私たちを見守りながらどんどん高く昇ってゆきます。

そして、一日の中でもっとも高いところに太陽が昇りつめた時、その光を贅沢に受け止めることが出来る場所はどこなのか?それを探しにLAから東に進路を取り、オープンカーを走らせるのです。

かくしてたどり着いたのが、広大なジョシュア・ツリー国立公園。その中にある「カクタス ガーデン」でサボテン達が腕を広げて待っています。

乾いた大地に吹く乾いた風。そんな心地よい風がサボテンの間を吹き抜けてこちらにやって来ます。太陽がもっとも高い場所で私たちを見下ろしていても、爽やかに感じるこの風は、カリフォルニアのかの地だからこそ得られる〝自然の恵み〟なのです。

「サン ソング」で見た情景が移り変わる中、乾いた大地を照らす太陽とサボテンの間をすり抜ける風にほのかに感じる土の香り。ジャックが愛するカリフォルニアの正午の景色、それが「カクタス ガーデン」で表現されています。

さて、頭の真上で微笑む太陽が傾き始めています。次はどんな景色を見せてくれるのでしょう。午後の海辺「アフタヌーン スイム」の景色へと向かいましょう。

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アールグレイ×マテ茶×レモングラス=砂漠のハーブティー


ここで、カイエデモードによる「カクタス ガーデン」の香りの世界観をお伝えさせてください。

カラブリア産のベルガモットが使用されているのですが、ベルガモットの苦味だけでなく、同時に真逆とも言えるフルーティな側面を強調したい場合は、2つまたは3つの異なったベルガモットをブレンドしています。

ジャック・キャヴァリエ

怪奇なるサグアロサボテンの姿が、甘美なる果汁と燻された茶の水分を吸いどんどんと膨らんでゆく中、どこからともなく乾いた風が吹いてきます。この香りのはじまりは、スモーキーなマテ茶(干草のようなマテ・アブソリュート)にベルガモットが注ぎ込まれ生み出されるアールグレイです。

すぐに(ミントのようにハーバルな)ピリっと活気のあるレモングラスがアールグレイ×マテに溶け込んでゆき、肌を焼く暑さをやわらげるフレッシュグリーンなハーブティーとなります。

それはまるでアロマティックでありながら、静かに感情を揺さぶる魅惑の庭園への導きのようです。やがて知らぬ間に、この庭園のサボテンを取り囲むようにゼラニウムが咲き誇っているようです。

そんな少し甘やかでフレッシュな芳香がアクセントとなり、柔らかく円やかなマテ茶の中に、ベルガモットとレモングラスが流れるように入れ替わり立ち代り香り立つのです。

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コロンのフレッシュ感の新たなる可能性を追求した香り

「カクタス ガーデン」は、コロンのフレッシュ感の新たなる可能性を追求した香りです。そこには、強さがありながらも、ソフトでナチュラルなフレッシュ感が存在するのです。

ジャック・キャヴァリエ

「カクタス ガーデン」の面白いところは、砂漠といっても中東の砂漠ではなく、カリフォルニアの〝乾いた大地〟からインスパイアされているところにあります。つまりこの作品のほんの少し前に発売された、「オンブレ ノマド」とは全く違う砂漠へのアプローチで生み出された香りと言えます。

乾いた熱く燃えるような灼熱の砂漠。しかし、そこに吹く乾いた風の心地よさのコントラストこそが、〝カリフォルニアの砂漠〟の最大の魅力です。それは、砂漠の中のリゾートと呼ばれるパームスプリングスも連想させますよね。

その世界観を人々の肌に届けるために、ジャックは、明るい太陽がどんどん昇ってゆき、天高く昇りつめたその時に、乾いた風が砂をさらうようなスモーキーさをマテ茶で演出しているのです。

暑い(または熱い)けれど、たちまち木陰に入ると爽やかな心地良さを得られるのがカリフォルニアの魅力だと、ジャックが香りで教えてくれているのではないかと私は思います。そんな心地よい空気や風を感じさせるのがベルガモットやレモングラスなのです。

ちなみに、私はこの香りの名前に「カクタス」がついているのですが、カクタス(=サボテン)そのものではなく、カリフォルニアの乾いた大地、乾いた砂、乾いた風、照りつける太陽など、そこに流れる空気や風景を感じさせる香りなんだと思います。

カクタスの周りにある空気=〝カクタスのある砂漠の庭〟だからこそ、無理やりカクタスノートなどの人工的なエッセンスを一切使う必要がなかったのだと推察します。

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グタールの「イル オ テ」との比較

©Goutal Paris

マテの香りとの比較でしたら、グタールでいうと「デュエル」でしょう。ですが「イル オ テ」の心地よさやフレッシュ感と「デュエル」のスモーキーさの間にあるのが「カクタス ガーデン」のように思えます。さらに「カクタス ガーデン」にはアロマティックな表情も垣間見えます。

実は、昨今の「ティーフレグランス」という言葉のくくりがとても曖昧だなと個人的に感じています。それは香調ではないので「お茶の葉(を連想させるノート)を使っていれば全てティーフレグランス」という風潮に対して些か疑問を抱いています。

しかし、ティーフレグランスとは、お茶を飲む瞬間のリラックスできる気分を香りで味わえることと定義すれば、そのくくりがはっきりしていくように思えます。

つまり、あくまで「カクタス ガーデン」には、〝お茶〟の要素よりも、そこから得られる〝心地よさ(リラックス感)〟の要素が多分にあるように私は思います。

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「カクタス ガーデン」を男性/女性が身にまとうと・・・



「カクタス ガーデン」を男性がまとうと、〝荒野の大地に吹く心地よい風〟つまり無骨なかっこよさの中にも我が道を行きすぎない、リラックス感も持ち合わせた男性の雰囲気を生み出してくれます。

私は、女性よりも圧倒的に男性の支持が高い香りだと感じています。


一方、女性がまとうと、〝広大な大地からエネルギーを感じ、自然と対話する飾らなくても魅力的な女性〟つまり女性から見てもかっこいいなと思える女性。それでいて、マニッシュなかっこよさではなく、ありのままの飾らない魅力を持つ女性像を生み出してくれる感じがします。

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「カクタス ガーデン」のおすすめのレイヤリング

©LOUIS VUITTON

私の個人的な感覚では、〝空と大地の香り〟という、超越する感覚に満たされる「サン ソング」とのレイヤリングが抜群だと思います。

一方で、「イマジナシオン」との相性の良さも格別だと思います。それは「カクタス ガーデン」のスモーキーさの中に、「イマジナシオン」のアンブロックスから得られる〝海水の泡の中にいるような〟心地よさがさらにプラスされる〝至福の感覚〟が得られると思います。

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『テルマ&ルイーズ』のエンディングへと進む

「Desperado」アレックス・イスラエル、2015年。

「パルファン ド コローニュ」の三作品のボックスは、アレックス・イスラエルのポップアートが採用されています。そして、「カクタス ガーデン」には、アレックスが2015年に発表したポップアート「Desperado」のサグアロサボテンが描かれています。

この「Desperado」は、ブロンズ彫刻であり、サボテンの隣に駐車された水色のコンバーチブルの車内には、ドライバーもハンドルも存在しません。

それはエンディングを連想させる作品であり1991年の『テルマ&ルイーズ』のエンディングを連想させます。それはこの香りの根底に流れるテーマでもあるのです。つまりは「開放感と破滅」に満ちた〝心の砂漠に水をあげる〟香りなのです。

まさに『テルマ&ルイーズ』の主人公である二人の女性の偶然の出会いのように、アレックスのアートとジャックの香りの偶然の出会いにより生み出された香り、それが「カクタス ガーデン」なのです(双方共にお互いを意識してクリエイションした訳ではありませんでした)。

そこにはオープンカーでカリフォルニアの大地をカーチェイスしている時のまるで舞い上がる砂埃や、サボテンの光景など、そのシーンの真っ只中にまるでいるような臨場感さえも生み出してくれるのです。

でありながら、エンジンをかけっぱなしで疲れている現代人にとって、カーチェイスの後、木陰でゆっくり寛いでいる時のそよ風のような安らぎを与えてくれる香りでもあるのです。

最終的には「最近深呼吸してなかったな〜と思わせてくれる」ところがこの香りの最大の魅力なのではないでしょうか。

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香水データ

香水名:カクタス ガーデン
原名:Cactus Garden
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2019年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/38,500円、200ml/53,900円


シングルノート:レモングラス、マテ、カラブリア産ベルガモット、ゼラニウム、インセンス